今回頂いた質問

112回の国試で、新生児の呼吸窮迫症候群に関する出題がありました。
過去問でもあまり見たことがないと思います。でも、新出題基準には載っていたので、詳しく知りたいです、教えてください。

ご質問ありがとうございます。
呼吸窮迫症候群は、新生児の呼吸の異常の中でもメジャーなもののひとつです。新生児の呼吸の確立に関する知識を軸に、呼吸窮迫症候群について理解を深めていきましょう。

1.新生児の呼吸の確立について

胎児は子宮の中で、胎盤と臍帯を介して酸素を得ています。しかし、出生と同時に自分の肺での呼吸をしなくてはいけません。それに向けて、胎児は妊娠の後期に肺サーファクタントを生産しはじめ、妊娠34週以降には、胎児の肺は十分な肺サーファクタントが分泌されるようになります。

出生すると、胎盤からの酸素供給が終了し、代わりに肺が空気を取り入れるようになります。初めての呼吸では、新生児の肺が空気で満たされ、肺胞が十分に拡張されていることが必要です。しかし、肺胞の中の水の表面張力(1か所に集まろうとする力)が、肺胞をしぼませようとします。

肺サーファクタントは、せっけんや洗剤と同じような、界面活性剤です。界面活性剤には、表面張力を弱めるという性質があります。肺サーファクタントが肺胞の内側の表面を覆うことで、表面張力を弱めて、肺胞がしぼまないようにすることができるのです。表面張力が弱まると、肺胞が拡張した状態のままとなり、新生児の呼吸の確立がスムーズに進みます。

 

2.呼吸窮迫症候群とは?

しかし、肺サーファクタントの分泌が不十分だと、肺胞がしぼんでしまいます。しぼんでしまう肺胞を膨らますため、新生児自身が自分の呼吸で膨らます必要があり、そのための苦しい呼吸をしている状態、もしくは肺胞がしぼんでしまってうまく呼吸できない状態を呼吸窮迫症候群といいます

肺サーファクタントの分泌が追いついていない早産児、特に34週未満での出生の場合、呼吸窮迫症候群のリスクが非常に高くなります。また、母体が糖尿病の場合も、肺サーファクタントの分泌がうまくいかずに呼吸窮迫症候群となるリスクがあります。

 

3.呼吸窮迫症候群の治療

治療としては、酸素投与や人工呼吸によって呼吸を補助し、肺サーファクタントが十分に生成されるようになるまで3~4日ほど待ちます。また、人工の肺サーファクタントを投与する方法もあります。
妊娠34週以前に早産となりそうな場合には、分娩前に母体に副腎皮質ステロイド薬を投与することで、胎児の肺サーファクタント産生を促すことができます。
 

以上が質問の回答です。
では、「呼吸窮迫症候群」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第112回看護師国家試験 午前問題64

新生児期の呼吸窮迫症候群で正しいのはどれか。

1. 呼吸数が減少する。
2. 過期産児に発症しやすい。
3. 生後24時間ころから発症する。
4. 肺サーファクタントの欠乏が原因である。

1.× 呼吸窮迫症候群では、肺胞を自分で拡張させるために、呼吸は苦しくなります。呼吸は速くなり、陥没呼吸や尾翼呼吸がみられます。
2.× 肺サーファクタントが不十分な場合に起きるので、より未熟な早産児において発症しやすいです。
3.× 出生直後の呼吸の確立の時点から始まります。24~48時間で症状が重症化します。
4.○ 肺サーファクタントが足りないことで発症します。
正解…4

●「母性看護学」について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

早産児の特徴や起こりやすい症状をまとめて覚えておきましょう。早産児とは、妊娠22週0日から36週6日までに出生した児です。体が小さく、皮下脂肪が少なく、臓器の機能が未成熟です。呼吸窮迫症候群の他にも、動脈管開存症、脳質周囲白質軟化症、黄疸のリスクが高くなります。NICUに入院し、集中的なケアを行います。