今回頂いた質問

1型糖尿病の治療について教えてください。

1型糖尿病は小児期に発症することが多く、膵臓のβ細胞が破壊されインスリンの絶対的欠乏によって引き起こされる糖尿病です。発症時の主な症状としては、高血糖に伴う多飲・多尿・体重減少があります。

1型糖尿病の治療目標としては、
1)多飲・多尿・体重減少などの症状がない
2)健常児と同等の生活(学校生活を含めて)を送れる
3)正常な成長・発達を得る
4)慢性合併症の出現の防止、進展の抑制
5)患児が疾患を受け入れる
が挙げられます。糖尿病があっても発病前と同じように生活が送れるようにすることが大切になります。

治療は、インスリン補充療法が必須です。また、患児にはインスリン注射に伴う低血糖への対応と、他の病気になった時のシックデイ対策について、しっかりと指導する必要があります。

では、治療について具体的にみていきましょう。

インスリン補充療法

原則として小学校高学年以上であれば自己注射ができるように指導します。通常、皮下投与で行い、患児が自己注射できるようなカートリッジ交換式のものや、インスリン製剤・注射器が一体となったペン型使い捨てのものなどが工夫されています。インスリン製剤の作用時間には下記の種類があり、これらを組み合わせて治療します。
・超速効型:短時間で吸収され、すぐに作用する。血中濃度は1時間でピークとなり、作用は3~5時間持続する。
・速効型:30分以内に作用発現して2時間でピークとなり、8時間持続する。
・中間型:1~2時間で作用発現して6~8時間でピークとなり、24時間持続する。
・持効型:ピークはなく、24時間以上、一定の血中濃度が持続する。

低血糖時の対処法

小児では低血糖の影響は成人よりも強いため、早めの対処が必要となります。空腹感、冷や汗、振戦、動悸などが低血糖の症状であることを理解してもらい、患児には常にブドウ糖錠やビスケット類を携帯させます。

血糖測定

現在の状態(低血糖・高血糖)を知り、適切な対処をするために必要になります。日々の血糖値でも血糖コントロール状態は把握できますが、HbA1c値(NGSP値)は、過去1~2か月の値を反映しているので、血糖コントロール状態の指標として用いられています。

シックデイ対策

他の病気(感冒や嘔吐・食欲不振などから手術を要するものまで)にかかったとき(=シックデイ)でもインスリンを中断しないようにします。食事の経口摂取が無理であれば医師に連絡するように事前に指導します。

食事療法

肥満を認めなければ健常児と同様でよく制限食ではありません。各栄養素をバランスよく摂取することが望まれます。

運動療法

病気のために制限される運動はなく、どのような競技でも参加できます。しかし、運動は血糖値を下げるので、低血糖予防のため補食したうえで参加することが大切であることを理解してもらいましょう。

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第103回看護師国家試験追加試験 午前問題61

小児の1型糖尿病の説明で正しいのはどれか。

1. 三大症状には体重増加が含まれる。
2. インスリン療法が必須である。
3. 空腹時血糖80mg/dl以下で低血糖と判定する。
4. 運動を制限する必要がある。

1.× 1型糖尿病の三大症状は、多飲・多尿・体重減少である。
2.○ 1型糖尿病は、絶対的にインスリン分泌が欠乏する疾患であるため、インスリンの補充療法が必須である。
3.× 低血糖の数値の定義はないが、糖尿病患者では70mg/dl以下で低血糖症状が出現することもある。
4.× 1型糖尿病では運動制限をする必要はない。

正解…2

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編集部より

糖尿病治療は、親子での管理が必要な部分が大きく、病院のスタッフと2人3脚で治療をすすめていく必要があります。疾患管理だけに重きをおかずに、健康な子どもと同じような日常生活を送れるように支援していきましょう。