今回頂いた質問

アドレナリンとノルアドレナリンの止血作用について知りたいです。受容体のα、βそれぞれの作用が教科書や参考書にはっきり書かれておらず混乱しています。
また、β2受容体との作用に消化器系の平滑筋弛緩とあるのですが、これが消化機能の抑制につながると考えていいのでしょうか?

アドレナリン、ノルアドレナリンに対する受容体はアドレナリン受容体と呼ばれ、αとβに分類され、さらにそれぞれα1、α2受容体、β1、β2受容体と分かれています (β3も存在しますが今回は割愛します) 。
理解を深めるためにはアドレナリン、ノルアドレナリンのα受容体・β受容体それぞれに対する「作用の強さ(親和性)」が異なることを理解しておく必要があります。

アドレナリン

アドレナリンはα受容体、β受容体に対してともに親和性が高いです。特にα受容体に対する作用が強いです。

●α作用●
アドレナリンが血管のα受容体に作用することで、全身の血管を収縮させます。この強いα作用があるため、止血剤として使用されたり、アナフィラキシーショックの際に用いられます。(α1受容体、α2受容体はアドレナリンの標的となる臓器によって異なって分布していますが、血管系についてはα1受容体、α2受容体の両方が存在しているため、今回はα受容体とひとくくりに表記することにします)

●β作用●
β1受容体に対する作用は、心臓を頑張らせることで、心拍数、収縮力を上げることです。β2受容体に対する作用は、血管を拡張させること、気管支を拡張させることが挙げられます(α作用によって収縮期血圧は上がりますが、β2作用によって拡張期血圧は下がります)。

ノルアドレナリン

α受容体に対して親和性は高いですが、β受容体に対する親和性は低いです(β2受容体に対しては作用なし)。ただし、α受容体に対する作用は十分にみられますが、アドレナリンほどは強くありません。
●α作用●
α作用による血管収縮が起こり、昇圧効果がみられます。しかし、アドレナリンほど血管収縮作用は強くないため、止血剤としては使われません。
●β作用●
β作用はほとんどないので、収縮期血圧・拡張期血圧はともに上がります。

消化管の平滑筋にはβ2受容体があります。これにアドレナリンが作用することで、平滑筋が弛緩し、消化に必要な蠕動運動などを妨げてしまいます。そのため、消化機能の抑制につながります。

では、国家試験で出題されたアドレナリンに関する問題を解いてみましょう。

問題

第99回 看護師国家試験 午前問題2

ストレス下で分泌されるホルモンはどれか。

1.カルシトニン
2.アドレナリン
3.バソプレシン
4.エリスロポエチン

1.×  カルシトニンは骨吸収を抑制し、血中ではCa2+濃度を低下させている。
2.○  ストレス下では副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンなどのカテコールアミンの放出が増え、血圧の上昇など生体に影響を及ぼしている。
3.×  バソプレシンの分泌が増加するのは、血漿浸透圧が上がった時や細胞外液の減少した時である。
4.×  エリスロポエチンは腎臓で産生されるホルモンで赤血球の産生を促進させる。腎臓が血中の酸素分圧の低下を感知すると産生される。

答え…2

編集部より

アドレナリンという呼び名は英国由来の名称であり、米名ではエピネフリンとも呼ばれています。現在の医療現場では両方使われていますが、両者は全く同じものですので覚えておきましょう(二通りの呼び名がある理由に、日本人研究者の高峰譲吉が関係しています。興味があれば調べてみてはいかがでしょうか)。