今回頂いた質問
112回の国試で、Tourette〈トゥレット〉障害に関する出題がありました。過去問でもあまり見たことがないと思います。
チックとは違うのでしょうか?
詳しく教えてください。
ご質問ありがとうございます。
チックは意識せずに突発的に起こる反復性、急速、非律動性の運動または発生をさします。そのチックの症状が1年以内に消失するのを一過性チック、運動チックか音声チックが1年以上続くのを慢性チックといいます。
そして、運動チックと音声チックの両方が1年以上続く状態をトゥレット障害といいます。
チックについて、もう少し詳しく説明します。
1.チックの分類
チックは、手足の運動や表情筋が収縮を繰り返す運動チックと、発語や発声を伴う音声チックに分類されます。
また、瞬間的に単純な運動または単純な発語や発声のみの単純チックと、一見意味をもった体の動きや単語または文を話すような複雑チックに分類されます。
2.併発症
チックは、不安障害や発達障害などの併発症がみられますが、特に注意欠如・多動性障害〈ADHD〉と強迫性障害〈OCD〉の併発割合が高いです。
3.トゥレット障害の診断基準
アメリカ精神医学会の精神障害の診断・統計マニュアルであるDSM-5では、トゥレット障害の診断基準を以下に定めています。
2)チックの頻度は増減することがあるが、最初にチックが始まってから1年以上は持続している。
3)発症は18歳以前である。
4)この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない。
4.トゥレット障害の経過
トゥレット障害の経過の多くは、幼児期にまばたき、首振りなどの単純運動チックから始まります。
その後はチックの症状が顔面→上肢→下肢と移動し、学童期前半に咳払い、舌打ちなどの単純音声チックが加わります。
10歳頃から、複雑運動チック(汚言症の出現が1/3に認められる)と複雑音声チックが出現し、単純チックは思春期以降に軽減することが多いです。
なお、複雑チックは個人差がありますが、10歳以降にチックの併発症を伴い、持続したり悪化したりする傾向にあります。
以上が質問の回答です。
では、「トゥレット障害」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。
問題
第112回看護師国家試験 午前問題65
小児期から青年期に発症し、運動性チック、音声チック及び汚言の乱用を伴うのはどれか。
1. Down<ダウン>症候群
2. Tourette<トゥレット>障害
3. 注意欠如・多動性障害
4. Lennox-Gastaut<レノックス・ガストー>症候群
2.○ 運動チックと音声チックの両方が1年以上続くのをトゥレット障害といい、汚言症の出現は1/3に認められる。
3.× ADHDは、不注意や多動性、衝動性を伴い対人関係や学習において問題が生じる障害だが、チックの症状はみられない。
4.× レノックス・ガストー症候群は小児期に発症し、難治性てんかんを主症状とするてんかん症候群である。強直発作や非定型欠神発作(発作の始まりと終わりが不明瞭)、脱力発作などがみられるが、チックの症状はみられない。
正解…2
●「精神看護学」について理解を深めるには、科目別強化トレーニング
編集部より
過去の国家試験では、自閉症スペクトラム障害と注意欠如・多動性障害(ADHD)の主症状を問う問題に、運動チック・音声チックを関連させて出題されています。チックの併発症の割合が高い疾患と、間違わないように学習をすることが重要です。