今回頂いた質問
リカバリとストレングスってイメージしにくいのですが、具体的にどういう相互関係なんですか?
ご質問ありがとうございます。
まずは先に「リカバリ」についてご説明していきます。
リカバリとは……
直訳すると「回復」という意味になります。医療の現場で「回復」と聞くと、怪我や病気をし、それが治癒して回復(=リカバリ)につながる……と、いうイメージになるかと思います。しかし実際に、医療・福祉の分野で使われている「リカバリ」は少し違っています。高齢者や、病気や障害によって生活する中で様々な規制を抱える人が、それらを自ら受け入れ、乗り越え、希望や目標を持って生活や人生を充実させることをリカバリとよびます。
例えば、精神障害を発症し、症状のせいで家から出られなくなってしまった人が、その後、社会とつながりたいという希望を持ち、外出ができるようになるためのトレーニングや、コミュニケーションの練習などをし、自身の生活の質を上げていく……というのがリカバリのひとつに挙げられます。
そして、このリカバリを実行するのに不可欠なのがストレングスです。
ストレングスとは……
こちらも直訳だけをいえば、「強さ」や「力」という意味になります。このストレングスは強化することとは少しニュアンスが違っており、元々自身が持つ強み(=ストレングス)のことを指します。そして、そのストレングスを活用し、上記のリカバリにつなげていきます。
例えば、上記の例にあったように精神障害の発症から外出が出来なくなったが、社会とつながりたいという希望を見つけ、その希望を実現できるよう自身が努力をする。そして、その努力の要素の中に必要なのが「ストレングス」です。
●リカバリとストレングスの関係イメージ図
上の図のストレングス(1)(2)のように、自身が持っている素質や要素を活かし目標へとつなげていきます。ストレングスには主に以下の4つの要素から成り立っています。
■個人の性質・性格
本人の人柄や個性
例)おだやか、真面目、聞き上手 など
■才能・技能
本人の才能や経験からの技能
例)計算が早い、絵がうまい など
■関心・願望
関心を示すもの、強く望むもの
例)旅行に行きたい、漫画家になりたい など
■環境
本人を取り巻く外的要因
例)家族との関係が良好、金銭的に困っていない など
この中で特に、「関心・願望」は最も重要であり、この関心・願望がリカバリにつながる希望や目標を見つけるための要素にもなります。
リカバリの希望や目標を実現するために支援する際は、まずは本人の症状や障害を自身で受容できるようにし、コントロール可能な範囲や条件を一緒に見つけ、本人が「リカバリできる」という自信を持てるようにし、何か希望や目標を見つけられるようにします。そして、そこから上記した要素を含む「ストレングス」を、傾聴・整理・尊重・指示しつつ一緒に探し、アセスメントしていきます。その後、そのストレングスを基に実現に向かって行動していきます。
以上が質問の回答です。
では、「リカバリとストレングス」に関する国試の過去問を実際に解いてみましょう。
問題
第104回看護師国家試験 午前問題90
精神障害者のリカバリ<回復>の考え方で正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 患者に役割をもたせない。
2. 薬物療法を主体に展開する。
3. 患者の主体的な選択を支援する。
4. 患者のストレングス<強み・力>に着目する。
5. リカバリ<回復>とは病気が治癒したことである。
2.× 薬物療法は主体ではない。
3.○ 患者の主体的な考え方を基に支援を行う。
4.○ 患者の持つ能力や強みに着目し、その要素を活用しリカバリにつなげる。
5.× リカバリとは治癒や完治の意味ではなく、症状や障害とうまく付き合いながらも、患者自身の希望や目標の実現を目指すことである。
正解…3・4
●「精神看護学」の理解を深めるには
科目別強化トレーニング「精神看護学」
編集部より
「リカバリ」や「ストレングス」は主に精神保健福祉や心理学の分野では以前から注目され、行われていました。しかし近年、看護技術の中でも注目され始め、慢性疾患がある患者さんの退院支援や地域ケア、訪問看護の中でも取り入れられています。看護技術の基本中の基本である、「患者さんの言葉に耳を傾ける」という姿勢を保ちつつ、患者さんのリカバリの支援ができたら良いですね!