今回頂いた質問

111回の国試で、二重拘束〈ダブルバインド〉についての出題がありました。教科書には少し載っていましたが、授業では習っていません。詳しく教えてください。

ご質問ありがとうございます。
二重拘束〈ダブルバインド〉とは、他者に伝える二つのメッセージが互いに矛盾するようなコミュニケーション様式をいいます。このメッセージは、言語的メッセージだけではなく非言語的メッセージ(視線、身振り、声のトーンなど)にも含まれます。

1.ダブルバインドの具体例

日常の様々な場面でダブルバインドを起こしていることがあります。具体例を見てみましょう。

親子

親:「毎日、しっかり勉強しなさい」

子:深夜にテスト前の勉強をしていると…
親:「朝、起きられなくなるから、早く寝なさい」

上司と部下

上司:「積極的にコミュニケーションをとって、報告・連絡・相談を心がけましょう」
後日…
部下:(忙しくしている上司に)「相談したいことがあるのですが・・・」
上司:(首を横に振り、断る)
 

2.ダブルバインドの弊害

ダブルバインドは家族関係や職場以外に、病院や学校などで生じることがあり、ダブルバインドを繰り返したり、習慣化したりすると相手に対して否定的なメッセージのみが印象に残り、大きなストレスを与える恐れがあります。

 
 
以上が質問の回答です。
では、「二重拘束〈ダブルバインド〉」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第111回看護師国家試験 午後問題67

母親がAさん(27歳、統合失調症)に対して「親に甘えてはいけない」と言いながら、過度にAさんの世話をすることで、Aさんが混乱していた。
この親子関係を示すのはどれか。

1. 共依存
2. 同一視
3. ネグレクト
4. 二重拘束〈ダブルバインド〉

1.× 共依存とは、自分と特定の他者が過剰に依存し合い、一定の距離が保てず離れられない関係をさす。Aさんは母親に依存を示していない。
2.× 同一視は、別々の存在である対象と同化している錯覚が生じている防衛機制のひとつであり、同一化ともいう。Aさんと母親は同一視している状況を示していない。
3.○ ネグレクトとは幼児や高齢者などに対して、著しい減食や長時間の放置行為、保護者としての保護や養育義務を放任する行為をさす。Aさんは成人であり、母親の保護が必要である状況ではないため、該当しない。
4.× Aさんの母親は、「自立」と「援助」の矛盾した二つのメッセージを出しているので、ダブルバインドが生じている。
正解…4

●精神看護学について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

精神看護学領域での家族関係には、共依存やダブルバインドの他に、「イネイブラー」という家族のなかの役割関係をさす言葉があります。イネイブラーとは、依存症者の依存や問題行動を助長する身近な人のことであり、教科書等にも事例が記載されていますので、あわせて学習しておきましょう。