今回頂いた質問

109回の国試にメトトレキサートの副作用に関する問題がありました。そのなかで、「長期にわたり」と限定されているのはなぜですか? 
短期間では副作用は現れないのでしょうか。

ご質問ありがとうございます。

みなさんに2つ知っておいてほしいことがあります。
1つ目はメトトレキサートの特徴、2つ目は有害事象(副作用)の把握と現れ方です。
 

1.メトトレキサートの特徴

メトトレキサートは、医療現場で取り扱う際に注意すべき薬剤(ハイリスク薬)の1つです。
関節リウマチに使用する薬剤ですが、与薬の間隔に特徴があります。薬の添付文書には以下の記載があります。

1週間単位の投与量を1回又は2〜3回に分割して経口投与する。
分割して投与する場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で投与する。
1回又は2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬する。これを1週間ごとに繰り返す。

1回で服用する場合は、翌週も同じ曜日に与薬することを忘れてしまうことがあります。また3回に分割する場合は12時間間隔なので、例えば1日目の8時、20時、2日目の8時など、取り扱いが複雑な薬剤になります。

なお、第109回では関節リウマチの薬として出題されましたが、実はメトトレキサートは抗悪性腫瘍薬として与薬することがあり、その際は与薬方法が異なります。医療従事者の思い込みにより、与薬方法を誤る医療事故も発生しています。薬剤を与薬する際は、患者さんから必要な情報の収集をすること、他の医療機関等からの転院された場合は診療情報提供書やサマリーを充分に確認した上で、正確な情報をもって看護を行う必要があります

 

2.有害事象(副作用)の把握と現れ方

有害事象(副作用)の把握

薬剤の有害事象(副作用)は、与薬している患者さんに発生するかもしれないという観察ポイントをあらかじめ把握しておかなければ、早期に対処できません。「病状の進行かな」と放置すると非常に危険です。小児や高齢者の場合は、病状が急激に進行することが多いので特に注意が必要です。ハイリスク薬の与薬を開始した場合は、薬の情報把握を適切に行いましょう。
 

有害事象(副作用)の現れ方

副作用の現れ方は、服用を開始し比較的早期に出現する場合と、継続的に与薬後すぐに現れるものがあります。例えば、抗癌剤の場合、投与開始時にアナフィラキシーショックや嘔気などが現れるものがある一方、薬剤が体内を循環し、体内の器官に徐々に悪影響が表れてくる骨髄抑制などがあります。
 

3.与薬のリスクマネジメント

薬を取り扱う際は、有害事象(副作用)が現れるかもしれないという視点を持ち、看る(観る)ことが大切です。薬が体内にどのように作用するのかを理解した上で、どのタイミングで現れるかまで予測することがリスクマネジメントにもつながります。看護師だけでの観察はなかなか難しいと思います。薬剤師や他の医療従事者を巻き込んで、観察すべき優先順位を定めたうえで、医療チームとして適切な医療を提供できる体制を作ることが大切です。
 
 
以上が質問の回答です。
では、「メトトレキサートの副作用」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第109回看護師国家試験 午後問題53

関節リウマチで長期にわたりメトトレキサートを服用している患者の副作用<有害事象>で適切なのはどれか。

1. 便 秘
2. 不整脈
3. 聴力障害
4. 間質性肺炎

1.× モルヒネ、コデインの副作用である。
2.× ジゴキシンの副作用である。
3.× アミノグリコシド系抗菌薬の副作用である。
4.○ メトトレキサートは免疫抑制作用を主として関節リウマチに与薬するが、その作用が全身に及ぶため、間質性肺炎だけでなく、感染症を発症しやすくなるなどの注意が必要である。
正解…4

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編集部より

看護師国家試験においては、過去に出題された問題の選択肢の流用がみられます。特に薬剤関連の問題や内分泌(ホルモン)などはその傾向が顕著です。○選択肢だけでなく、×選択肢も復習することで、効率良く学習できます。
 また、薬剤の副作用を学習する際は単に覚えるのではなく、薬剤がどのように作用し、その影響でどのような副作用が発生するのかを理解すると応用力が身につきます。薬の働きを体全体で捉えることが大切です。