今回頂いた質問

シックハウス症候群って結局、具体的に何が原因なんでしょうか?

ご質問ありがとうございます。
まず、シックハウス症候群とは、医学的に確立した単一の疾患ではありません。住宅に由来する様々な健康障害の総称であり、主に住宅室内の空気質に関する問題が原因として発生する体調不良(めまい、頭痛、嘔気、湿疹、のどの痛み、鼻汁など)のことを指します。

元々、「シックハウス症候群」は「シックビル症候群」という言葉から転じた和製造語です。
シックビル症候群とは、欧米諸国で1970年代前におけるオイルショックを契機として、省エネルギーのために空調設備の開発と建物の気密化を進めた結果、オフィスでの室内環境が悪化し、ビルで働く人々の間に不定愁訴を自覚する者が増加し、このような健康問題を「シックビル症候群(sick building syndrome)」と名付けられました。しかし、はっきりとした原因は完全には解明されておらず、化学物質、ダニなどの生物学的要因、働く人々の心理的要因などの複合要因とされました。日本では、このシックビル症候群については社会問題になりませんでした。なぜなら、日本は建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル衛生管理法)により、欧米諸国に比べ、建築物の室内空気の衛生が保たれているからと考えられます。
しかし、日本でも前述した住宅での健康障害「シックハウス症候群」の被害発生相談件数が1994年ごろから急増し、社会問題として注目され始めました。本来、日本の家屋は、木造で、ふすまや障子、土壁で部屋が仕切られ、床には畳が敷かれており床下や天井も通気が良く、高温多湿な日本の気候に適していました。しかし、近年では、壁にコンクリートや合板を使用し、床はフローリングや断熱材、窓枠にはアルミサッシをはめた構造になっており、そのため断熱性が高く、省エネルギーの観点からは好都合ですが、通気性が悪く、湿気や建材から放出した化学物質が屋内にたまりやすく、真菌やダニも増殖しやすい環境を作っています。また、新築の住宅はホルムアルデヒドなど、有害な化学物質を使って建てられています。これは合板、塗料、接着剤、カーテンやカーペットの防虫加工、ビニールクロス、木材、家具など家を造るために必要とされる材料にはほとんど含まれていました。
さらにその他の原因物質として、シロアリ駆除剤、殺虫スプレー、ダニ駆除剤、電気蚊取り器、芳香剤、タバコの煙、カビ、室内に排気を出すファンヒーターからでる二酸化窒素などもあげられています。このような要因により、シックハウス症候群の被害発症が増えたとされています。

1997年には厚生省(現・厚生労働省)がホルムアルデヒドの室内濃度指針値を示し、1998年には健康住宅研究会による設計・施工ガイドラインが示され、2003年に改正建築基準法でシックハウスの原因となる化学物質の室内濃度を下げるため、ホルムアルデヒドを含む13種類の化学物質の指針値を規制しました。対象は住宅、学校、オフィス、病院など全ての建築物の室内です。

 

日常生活でできるシックハウス症候群防止策

カビやダニを発生させないように気をつけます。そのためには湿度に気をつけます。湿度が高くなると、カビが繁殖しやすくなります。カビはダニの大好物ですし、カビそのものが真菌症やアレルギーなどの原因になります。
●しっかり換気する
キッチンや浴室、トイレなど、汚れた空気を排出するとともに、ときどき窓を開けて新しい空気をいれましょう。
●日光を利用する
太陽光には乾燥と殺菌の効果があります。畳・カーペット・寝具などの日干しを行って、常に乾燥した状態にしておうよう心がけると、それだけでかなりの防カビ効果が期待できます。
●通風を確保
壁や窓ガラスなど結露の起こしやすい場所の通風を良くし、壁や窓付近の温度を部屋中央の温度とおなじくらいにするとともに、結露してしまった水分を再び蒸発させるようにすることは防カビ対策として有効です。
●部屋干しを控える
室内にぬれたものを干したりすると、部屋の湿度が高くなり、カビが発生しやすくなるので、できるだけ洗濯物は外に干すようにしましょう。
●換気システムを活用する
高気密住宅の場合には強制換気システムを活用すると、室内空気と外気が入れ替わり、結露、カビの増殖をおさえることができます。
●こまめに掃除する
ダニやダニの死骸、ふんなどがアレルギー、喘息、皮膚炎、結膜炎などを起こしたり、これらの症状を悪化させることがあります。また、食べかすやフケなどはダニのエサにもなるので、こまめな掃除や洗濯を心がけることで、ダニによる室内環境汚染を防止することができます。
●素材に配慮する
じゅうたんや畳よりフローリングの方がカビやダニによる汚染が少なく、掃除もしやすいです。しかし、床材や床塗料には化学物質を放散するものもあるので、その点も留意して素材を選びましょう。

以上が質問の回答です。
では、「シックハウス症候群」に関する国試の過去問を実際に解いてみましょう。

問題

第107回看護師国家試験 午前問題3

シックハウス症候群に関係する物質はどれか。

1. アスベスト
2. ダイオキシン類
3. 放射性セシウム
4. ホルムアルデヒド

1. × 建材、摩擦材、シール断熱材といった様々な工業製品に使用されてきたが、肺がんや中皮腫を発症する発がん性が問題となり、現在では、原則として製造・使用等が禁止されている。
2. × 大気汚染物質のひとつであるが、シックハウス症候群に関連する物質ではない。
3. × シックハウス症候群の発症に関連する物質ではない。
4. ○ ホルムアルデヒドなどの室内建造物や塗装に用いられる溶剤が、シックハウス症候群を引き起こす原因だとされている。

正解…4

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編集部より

シックハウス症候群の原因として、近年の日本の住居の価値観などの変化や、家の作りや素材の変化が関係していたのですね。現在発表されている13種類の室内濃度指針値も、項目の追加と基準値の変更案が検討されているので、こちらも厚生労働省HPで小まめにチェックしておきましょう!