今回頂いた質問

褥瘡の予防と評価方法について教えてください。

褥瘡は、一般には「床ずれ」といわれており、生体局所の長時間の圧迫による循環障害のために起こる組織の壊死をさします。寝たきり状態の人や麻痺のある人に起こりやすく、好発部位は体位により異なりますが、主に骨の突出部です。知覚の障害、湿潤、活動性の低下、低栄養、摩擦、ズレ等が発生要因として考えられており、在宅で生活する療養者が増えるにつれて、褥瘡も在宅で看護師が対応する重要な問題となっています。

褥瘡の予防管理としては以下の項目が挙げられます。

除圧

・原則2時間ごとの体位変換
・坐位の場合は90度ルール(股関節90度・膝関節90度・足関節90度)、15分ごとに臀部の除圧
・体圧分散寝具の使用(円座のクッションは皮膚の伸展や接触部分の虚血が起こるので用いない)
・ギャッヂアップは30度まで

栄養管理

・栄養状態のアセスメント
・口腔ケア
・食事の援助

摩擦とずれの防止

・シーツや寝衣にしわをよせない

皮膚の清潔

・清潔、保湿、失禁対策
・吸水性のあるシーツ、寝衣

褥瘡の発生リスクをアセスメントするツールには、ブレーデンスケールがあります。(1)知覚の認知 (2)湿潤 (3)活動性 (4)可動性 (5)栄養状態 (6)摩擦とずれ の6項目の合計点数によって評価するもので、合計点数が低いほど褥瘡発生の危険性が高くなります。病院では14点以下、在宅では17点以下が褥瘡発生危険点の目安とされています。

ブレーデンスケール

ブレーデンスケール

褥瘡の初期症状は、まず発赤です。発赤の後に水泡やびらんがみられるようになります。NPUAPの分類では、グレードIIが表皮あるいは真皮までの水泡・びらん・潰瘍、グレードIIIが壊死組織やポケット状の褥瘡です。
最近では、日本褥瘡学会が開発したDESIGN-PやDESIGN-Rが、各専門職の共通言語として使われるようになってきています。

最後に褥瘡の好発部位を復習しておきましょう。

仰臥位・側臥位・腹臥位

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第102回看護師国家試験 午後問題57

Aさんは、要介護2で在宅療養をしている。仙骨部に2cm×3cmの水疱を形成した。この1週間、臥床していることが多くなり、食事摂取量も減ってきている。
訪問看護師がAさんの家族に行う提案として適切なのはどれか。

1. 体圧分散マットの使用
2. 膀胱留置カテーテルの留置
3. 夜間の2時間ごとの体位変換
4. 訪問介護への褥瘡処置の依頼

1.○ 臥床していることが増えているため、除圧効果の高いマットの使用を提案する。
2.× Aさんに膀胱留置カテーテルが必要という情報はない。褥瘡が悪化しないよう仙骨部の保清を提案する。
3.× 要介護2のAさんは自力で寝返りをうつことが可能と思われるため、夜間の2時間ごとの体位変換は必要ない。
4.× 褥瘡処置は主治医の指示を受けて訪問看護師が行う。

正解…1

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編集部より

褥瘡の予防において、栄養管理も重要な問題です。近年問題となっているPEM(protein energy malnutrition=蛋白質・エネルギー低栄養状態)は、褥瘡の大きな誘因となります。栄養の改善は、褥瘡の予防や治療において重要な役割をもっています。必要に応じて補助食品なども利用して、十分に配慮しましょう。