今回頂いた質問
産科実習で、「妊婦さんには、左側臥位で寝ることを勧めなさい」と教わりました。
なぜ、左側臥位なのですか。
ご質問ありがとうございます。
妊婦が妊娠後期に仰向けに寝ると体調がすぐれなくなることがあります。これを「仰臥位低血圧症候群」と言い、左側臥位(左側を下にする)で寝るように勧めます。
まず、「仰臥位低血圧症候群」になる理由を説明します。
母体の下腹部付近に存在する腹腔動脈と下大静脈の上に胎児が乗っかり、血管を圧迫します。するともともと血流の勢いが弱い静脈は、血流が低下してしまうのです。つまり、母体の心臓に血液が戻らなくなってしまうのです。そうなると、心臓から血液を出せなくなるので、全身に送る血液も少なり、血圧が低下し、体は酸素不足に陥ります。その結果、悪心・嘔吐、生あくびなどの「仰臥位低血圧症候群」になるのです。
では、「仰臥位低血圧症候群」の妊婦を左側臥位にすると、どうなるのでしょうか。
動脈と静脈は重なっているのではなく、動脈が左、静脈が右にあります。左側臥位にすると、胎児の体重が左にある動脈の方に乗っかりますね。その結果、静脈の方にかかる比重が少なくなり、血流が再開するようになります。動脈は血液の流れが強いのでどうにか流れるのです。
これが妊婦に左側臥位で寝るように勧める理由なのです。
回答は以上になります。
では、第100回の国家試験で出題された問題を解いてみましょう。
問題
第100回 看護師国家試験 午後問題10
全身に動脈血を送り出すのはどれか。
1. 右心房
2. 右心室
3. 左心房
4. 左心室
心臓と血液の関係や特徴を理解していると、妊娠後期の左側臥位の理由も推測できますね。
答え…4
編集部より
実習や日ごろの生活で疑問に思ったことやニュースで話題になっていることを、自分で調べたり勉強につなげたりすることが、意外と国試に役立つこともあります。例えば、第100回国試ではイクメンブームを反映してか、男性の育児休業取得率に関する問題が出ました。日々の生活でいろいろなことにアンテナを張っておくことをオススメします!