今回頂いた質問

廃用症候群は高齢者特有の病気ですか。

廃用症候群は、傷病による長期入院をはじめ、過度の安静や不活発な日常生活などに起因する身体的・精神的諸症状の総称で、高齢者に限らず、どんな年代でも起こり得ます。たとえば、脳卒中患者、神経筋疾患患者、造血幹細胞移植患者(白血病、再生不良性貧血など)といった、身体に麻痺が残るため歩行困難であったり、長期にわたって無菌室で臥床が強いられたりする患者には、年代に関わらず廃用症候群がみられます。

ただ、高齢者は、若年層に比べると短期間の安静臥床でもADL(日常生活動作)が低下し、廃用症候群が生じやすいため、とりわけ早期離床の重要性が高いと言えます。廃用症候群では、筋委縮、関節の拘縮・変形、骨萎縮(骨粗鬆症)といった局所的な身体症状だけではなく、心肺機能や消化機能、運動機能の低下といった全身症状、さらには鬱傾向や認知症の進行など精神・神経の症状が出ることもあります。

廃用症候群の症状と予防

系統廃用症候群予防
循環器起立性低血圧上半身の挙上・座位時間の延長
呼吸器肺炎体位変換・深呼吸
運動器筋萎縮・筋力低下・関節拘縮離床・下肢の等尺運動・関節可動域訓練
消化器便秘離床・食事の工夫・下肢の運動・腹部温罨法・腹部マッサージ
泌尿器尿路感染症水分摂取量の増加・残尿を減らす・陰部の清潔保持
感覚器褥瘡体位変換・栄養管理・摩擦とずれの防止・除圧
神経系認知症適度な刺激、離床

早期離床をすすめ、寝たきりにならないようにするのはもちろんのこと、寝たきり予防で「座らせきり」にならないように注意しなくてはなりません。また、廃用症候群の諸症状によって臥床期間がさらに長期化するという悪循環から脱することがもっとも重要と言えます。

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第101回 看護師国家試験 午前問題20

廃用症候群の予防で正しいのはどれか。
1. 温罨法
2. 安静臥床
3. 減塩食の提供
4. 関節可動域訓練

1. × 運動時の痛みの軽減につながることはあるが、廃用症候群の直接的な予防策とはならない。
2. × 安静臥床は廃用症候群を助長する。
3. × 減塩食と廃用症候群は直接的な関係はない。
4. ○ 関節可動域訓練は廃用症候群のひとつの症状である関節拘縮の予防に役立つ。

答え…4

編集部より

1940年代、病院施設が不足した第2次世界大戦中のアメリカで、傷病兵が早期離床・早期歩行によって早期回復することが確認され、そのことが現在の廃用症候群という考え方につながったそうです。また、無重力状態での筋萎縮など宇宙飛行士の身体変化の研究も、安静臥床の弊害を実証することとなりました。さまざまな歴史上のできごとが医学の発展に寄与しているんですね。
 なお、廃用症候群という用語は1964年にヒルシュバーグ(Hirschberg)が初めて「Disuse syndrome」という言葉を使い、その訳語として国内でも広まりました。