今回頂いた質問

110回の国試で、身体的フレイルに関する出題がありました。フレイルはなんとなーく知っていますが……もう少し詳しくフレイルについて教えていただけますか。

ご質問ありがとうございます。

1.フレイルとは?

フレイルとは、「加齢によって心身が老い衰えた(脆弱化した)状態ではあるが、適切な介入によって、生活機能の維持・向上を図ることができる段階」のことであり、自立と要介護状態の中間に位置する状態を指します。
フレイルは、2014年5月に日本老年学会が提唱した用語で、英語の「Frailty(フレイルティ:日本語訳で「虚弱」「脆弱」「老衰」という意味)」が語源となっています。

 

2.フレイルの関連性

フレイルには、身体的フレイル、精神・心理的フレイル、社会的フレイルがあり、それぞれが相互に影響し合っています。

(1)身体的フレイル

身体的フレイルの中心となる病態は、サルコペニア(筋肉量の低下)です。このほか、ロコモティブシンドローム(骨・関節・筋肉・神経など運動器全体の機能低下)や、オーラルフレイル(咀嚼や嚥下など口腔機能の低下)なども含まれます。

(2)精神・心理的フレイル

抑うつや軽度の認知機能低下、アパシー(意欲低下)などが含まれます。身体的フレイルに認知機能障害(明らかな認知症は除外)を伴う状態のことを「認知的(コグニティブ)フレイル」といいます。

(3)社会的フレイル

閉じこもりや独居など、他者との交流の機会が少なく、地域から孤立した状態を指します。


 

3.フレイルサイクル

加齢や疾患により食欲が低下すると、食事摂取量が減少し、慢性的な低栄養状態となります。栄養不足が続くと、筋肉量や筋力が低下します(サルコペニア)。筋肉量や筋力が低下すると、歩行速度が遅くなったり、疲労感が強くなったりするなど、活動量が減少します。活動量が減少すると、エネルギー消費量も減少するため、食欲が湧かず、食事摂取量はさらに減少します。このような悪循環のプロセスを「フレイルサイクル」といいます。フレイルを予防するためには、このフレイルサイクルを断ち切る介入が必要です。

 

4.身体的フレイルの診断基準

フレイルの診断基準としては、日本語版フレイル基準(J-CHS基準)が用いられます。
評価基準には、「体重減少」「筋力低下」「疲労感」「歩行速度」「身体活動」の5項目があります。このうち、3つ以上該当する場合を「フレイル」、1~2つ該当する場合を「プレフレイル(フレイルの前段階)」、いずれにも該当しない場合は「ロバスト(健常)」と判定します。

 

5.身体的フレイルへの介入

身体的フレイルへの介入のおもなポイントは、「栄養」と「運動」です。

(1) 栄養への介入

エネルギーやたんぱく質、ビタミンやミネラルなど栄養バランスを整えることは、低栄養状態や筋力低下を改善し、フレイルの予防に効果的といわれています。特に、ビタミンDが不足すると、カルシウムの吸収低下や筋力低下に影響するため、1日あたりの必要量を十分に摂取することが望ましいとされています。

(2) 運動への介入

筋力や身体運動機能を維持向上したり、日常生活活動度を改善したりすることが、フレイルの予防に効果的とされています。ウォーキングや筋力トレーニング、バランストレーニング、ストレッチなどを組み合わせながら継続しつつ、本人のペースに合わせて段階的に運動強度を高めるのが望ましいとされています。

 
 
以上が質問の回答です。
では、「フレイル」に関する国家試験の過去の問題を解いてみましょう。

問題

第110回看護師国家試験 午前問題90

身体的フレイルの評価基準はどれか。2つ選べ。

1. 視力低下
2. 体重減少
3. 聴力低下
4. 歩行速度の低下
5. 腸蠕動運動の低下

1.×
2.○
3.×
4.○
5.×
身体的フレイルの評価基準は「体重減少」「筋力低下」「疲労感」「歩行速度」「身体活動」の5項目である。
正解…2・4

●老年看護学について理解を深めるには、科目別強化トレーニング

編集部より

超高齢化のさらなる進展が予測されている現状において、後期高齢者の健康を守るための疾病予防や介護予防の必要性が高まっています。フレイルへの早期発見・早期介入を図ることは、高齢者の寝たきりや要介護状態を未然に防ぎ、より健康で長生きしながら自立した生活を過ごすための支援につながります。フレイルは、看護師国家試験の出題基準改定(2017年)で追加された項目であり、出題頻度の高いテーマでもありますので、この機会に正しい知識と理解を深めておきましょう。