今回は、苦手科目の筆頭「人体の構造と機能」についてです。
問題そのものは基本事項を問うものが多いですが、ほとんどの学生さんが苦手意識を持っているため、正答率は低くなります。とはいえ、この科目は全ての科目のベースとなる分野ですから、まずは最初に手をつけたい科目ですね。

人体の構造と機能の攻略ポイントは?

人体の構造と機能の攻略ポイントは、これだ!

1)過去問を利用して理解していく学習を。
2)神経系、内分泌は絶対チェック!!

 

1)過去問を利用して理解していく学習を。について

過去問を使う意義は、2つあります。
1つ目は、頻出テーマを理解すること。もう1つは、それらの頻出テーマについて、掘り下げて理解しすること
です。
では、実際に過去問を使って、具体的に見ていきましょう。

第111回PM26 
生体内でタンパク質が分解され、アミノ酸の代謝が進んで生じたアンモニアは肝臓で(   )に変換される。
(   )に入るのはどれか。
1.尿 酸
2.尿 素
3.亜硝酸
4.一酸化窒素

肝臓の働きについて( )抜きの形式で問う内容です。基本事項なので、確実に正答したい問題です。とはいえ、問われ方が異なると、「ん?」と混乱してしまいますよね。

この問題のテーマは「アミノ酸の代謝」、そして「肝臓の作用」です。
タンパク質は分解されるとアミノ酸になります。このアミノ酸から派生するがアンモニアです。アンモニアは体内では有毒な作用をもたらすため、無毒化する必要があります。これが肝臓にある尿素回路〈オルニチン回路〉の働きです。肝機能が低下し、アンモニアがそのまま血中に放出されると、脳にダメージを与えます。これを肝性脳症といいます。

選択肢をみていきましょう。
1.× 尿酸は核酸、プリン体(アデニン、グアニンのプリン塩基)から生成されます。
2.○ 代謝の流れは、「アミノ酸→アンモニア→肝臓で尿素」と覚えておきましょう。
3.× 亜硝酸には変換されません。
4.× 血管内皮細胞内のNO合成酵素〈NOsynthase〔NOS〕〉は、アミノ酸のアルギニンを基質として一酸化窒素〈NO〉を産生します。この一酸化窒素が、血管平滑筋を弛緩し血管を拡張させる作用を持ちます。

選択肢の中には明らかな誤りもみられますが、丁寧に1つひとつ確認して知識を増やしていきましょう。

 

2)神経系、内分泌は絶対チェック!! について

神経系と内分泌に関する問題は、「人体の構造と機能」の中でも特に頻出テーマです。
看護学における人体の構造と機能は、「ホメオスタシスの維持」の理解が重要なポイントです。そのホメオスタシスの維持の核となるのが、神経系と内分泌です。ただ、どちらも学生さんにとっては、「カタカナ」が並ぶ、イメージがつきにくい、独特な用語などがネックとなって苦手意識が先行しがちです。国試前の冬休み前後に取り組むのは激ハードモードになってしまいます。夏休みなどを利用して、じっくりと取り組みたいテーマです。

過去問を見てみましょう。

第110回PM82 
副交感神経を含む脳神経はどれか。2つ選べ。 
1. 動眼神経
2. 三叉神経
3. 内耳神経
4. 迷走神経
5. 舌下神経 
答え:1・4

脳神経の勉強で押さえておきたいのは、次の3点です。
(1)脳神経の番号と名称を一致させる。
(2)脳神経の働きを大きく「運動神経性」「感覚神経性」「副交感神経性」で分類する。
(3)細かい働きを覚える。

(2)について説明します。
神経系の働きに関する理解が進んでいないと「?」となるところですね。
運動神経性とは「骨格筋を動かすための働き」をさします。
感覚神経性とは、味覚・聴覚・視覚・嗅覚・平衡覚の「特殊感覚」と、皮膚や骨・筋の感覚を伝える「体性感覚」を運ぶ働きをさします。
副交感神経性とは、「自律神経の副交感神経の働き」を行う働きをさします。
12対の脳神経は、それぞれこの働き全てまたは2つ、1つ持つことになります。

副交感神経の働きを持つ脳神経は4つ存在します。「みなとくふくこうかん」と覚えておきましょう。「み→三:第3脳神経・動眼神経、な→七:第7脳神経・顔面神経、と→十:第10脳神経・迷走神経、く→第9脳神経・舌咽神経」というわけです。だから問題の答えは1と4。

それぞれの選択肢の解説をしておきます。
1.○ 動眼神経は瞳孔を縮小させる働きを持ちます。そのほか眼球運動、瞼の開眼などの運動神経性の作用をを持ちます。
2.× 三叉神経は第5脳神経です。頭部の体性感覚を司る「感覚神経性の働き」や、顔面の深層筋である咀嚼筋を動かす「運動神経性の働き」を持つ神経です。
3.× 内耳神経は第8脳神経です。聴覚・平衡覚を司る「感覚神経性の働き」のみの神経です。
4.○ 迷走神経は、胸部・腹部の臓器の「副交感神経性の働き」に関与します。そのほか、咽頭・喉頭の運動や感覚を支配する「運動神経性」「感覚神経性」の働きも持ちます。
5.× 舌下神経は第12脳神経です。舌の運動を司る「運動神経性の働き」を持ちます。

地道な勉強ですね……だからこそ、国試前の冬休みなどではなく、夏休みのうちにやっておきたいテーマなのです。
 

今回の2ポイントふまえた過去問を、コチラにまとめています。ぜひご利用ください。

次回は、疾病の成り立ちと回復の促進について説明します!