今回は、「精神看護学」についてです。
精神は、精神保健福祉法の改正、障害者総合支援法の施行により、その出題傾向も大幅に変わってきています。近年では、一般問題では看護に関する問題はほとんど出題されず、精神疾患そのものを問う問題、精神医療に関する法律の問題が出題されます(看護に関する問題は状況設定で出題あり)。
では、具体的にはどのように攻略していけばよいでしょうか?


 

精神看護学の攻略ポイントは?

精神看護学の攻略ポイントは、これだ!

1)精神保健福祉法をチェックしよう!
2)DSM-5 に基づく疾患の症状を確認しよう!
3)社会資源を利用した社会復帰への援助を押さえよう

 

1)精神保健福祉法をチェックしよう! について

「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」は、2013(平成25)年に改正されました。改正されたポイントのうち、押さえておきたいのは3つ。
1)従来の保護者制度が廃止されたこと。
2)1)により、精神障害者に治療を受けさせるなどを保護者の責務としていた規定が削除されたこと。
3)医療保護入院における同意は、保護者以外の家族や後見人などでも可能になったこと。
くわしくはコチラをご覧ください。公益社団法人 日本精神病院協会

では、精神保健福祉法に関する問題をみてみましょう。

第111回PM68
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉において、精神科病院で隔離中の患者に対し、治療上で必要な場合に制限できるのはどれか。
1. 家族との面会
2. 患者からの信書の発信
3. 患者からの退院の請求
4. 人権擁護に関する行政機関の職員との電話
答え:1

精神保健福祉法第36条には以下の記載があります。
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精神科病院の管理者は、入院中の者につき、その医療又は保護に欠くことのできない限度において、その行動について必要な制限を行うことができる。
2 精神科病院の管理者は、前項の規定にかかわらず、信書の発受の制限、都道府県その他の行政機関の職員との面会の制限その他の行動の制限であって、厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて定める行動の制限については、これを行うことができない。
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よって、選択肢2、4は制限ができませんので、×となります。

また38条4項には以下の規定があります。
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精神科病院に入院中の者又はその家族等(その家族等がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合にあっては、その者の居住地を管轄する市町村長)は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、当該入院中の者を退院させ、又は精神科病院の管理者に対し、その者を退院させることを命じ、若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを求めることができる。
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具体的には、もし本人が「退院したい」、「入院させられているのは、意に沿わない」、「必要以上に行動が制限されている」などと感じたら、都道府県の知事や市長宛に書面を送り、退院請求や待遇改善請求をすることができます。退院が請求されると、各都道府県に設置されている「精神医療審査会」の委員が本人や担当医に面会し、入院の必要性を審査します。審査には約1か月程度かかりますが、本人の人権と健康の双方から適正な医療が行われているかどうかの行政判断が行われます。
したがって、選択肢3は制限できませので、×。
よって、この選択肢で制限が可能なのは、選択肢1の「家族との面会」になります。

 
 

2)DSM-5 に基づく疾患の症状を確認しよう!  について

DSM-5 はご存知でしょうか。アメリカ精神医学会による精神疾患の診断マニュアルと、その統計が掲載されています。診断基準といえばICD-10 が一般的ですが、精神領域においてはDSM-5 を用いるのが一般的であり、国試にもそれを基にした出題が見受けられます

過去問を見てみましょう。

第109回PM86 
成人期早期に、見捨てられることに対する激しい不安、物質乱用や過食などの衝動性、反復する自傷行為、慢性的な空虚感、不適切で激しい怒りがみられ、社会的、職業的に不適応を生じるのはどれか。
1. 回避性人格〈パーソナリティ〉障害
2. 境界性人格〈パーソナリティ〉障害
3. 妄想性人格〈パーソナリティ〉障害
4. 反社会性人格〈パーソナリティ〉障害 
答え:2

パーソナリティ障害とは、思考、知覚、反応、対人関係などが、一般的な人とは大きく異なることから生じる軋轢によって苦しんだり、生きづらさを感じている状態をさします。主に青年期に始まり、長期にわたる場合が多いです。上記を含む10種のパーソナリティ障害があります。

選択肢2の境界性パーソナリティ障害は、DMS-5では以下のように書かれています。
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対人関係、自己像、感情などの不安定性および著しい衝動性の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。
(1)現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力
(2)理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係の様式
(3)同一性の混乱:著明で持続的に不安定な自己像または自己意識
(4)自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域に渡るもの(例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、過食)
(5)自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し
(6)顕著な気分反応性による不安定性
(7)慢性的な空虚感
(8)不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難
(9)一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離症状
※一部省略
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上記のようにDMS-5は決して読みやすいものではありませんが、先ほどもお伝えした通り、DMS-5を基にした出題があります。過去問で出題されたことのある精神疾患については、DMS-5ではどのように書かれているか、目を通しておくといいのではないでしょうか

 

3)社会資源を利用した社会復帰への援助を押さえよう!  について

精神看護学では、社会復帰に関連した問題が頻出です。特に、障害者総合支援法に基づく「訓練等給付」の内容を確認しておきましょう。

第112回PM64 
一般の事業所や企業に就労を希望する精神障害者に対して行う支援で、24か月間を原則として就職に必要な訓練や求職活動を行うのはどれか。
1.就労移行支援
2.自立生活援助
3.ピアサポート
4.就労継続支援A型
答え:1

選択肢の1、2、4はいずれも障害者総合支援法に基づく給付になります。
1.○ 就労移行支援は、「就労を希望する障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者につき、生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談、その他の必要な支援を行う。」とされる訓練等給付の一つです。標準利用期間は2年とされています。これが正答となります。
2.× 自立生活援助は、「居宅において単身等で生活する障害者につき、定期的な巡回訪問又は随時通報を受けて行う訪問、相談対応等により、居宅における自立した日常生活を営む上での各般の問題を把握し、必要な情報の提供及び助言並びに相談、関係機関との連絡調整等の自立した日常生活を営むために必要な援助を行う。」とされる訓練等給付の一つです。居宅での自立した日常生活を送るための援助です。
3.× ピアサポートとは、同じような体験をした人々が対等な立場で実践する相互支援活動です。同病者の体験を聴いたり、自身の体験や思いを開示することで情緒的支援を受け、また、自身の問題について相談することによって、療養生活への助言や医療福祉サービスの情報を得ることもできます。設問のような具体的かつ直接的な社会復帰のためのサポートではありません。
4.× 就労継続支援A型は、「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者のうち、適切な支援により雇用契約等に基づき就労する者につき、生産活動その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う。」とされる訓練等給付の一つです。一般企業への就職が困難な障害者を対象にしています。

なお、障害者総合支援法の訓練等給付には、選択肢以外にも 
・自立訓練(機能訓練)
・自立訓練(生活訓練)
・宿泊型自立訓練
・就労継続支援B型(非雇用型)
・就労定着支援
・共同生活援助(グループホーム)
があります。いずれの給付も内容、対象者などを確認しておきましょう。

 
今回のポイントふまえた過去問を、コチラにまとめています。ぜひご利用ください。
次回は、地域・在宅看護論について説明します!