先日、毎日新聞に『トイレ・共用推進 性的少数者に配慮』という記事が掲載された。
記事によると……東京都渋谷区は8日、区の施設を今後新築・改修する際、性的少数者や障害者ら誰もが使いやすい新しいタイプのトイレの整備を進めるとの基本方針を発表した。男女共用や、障害の特性などに応じた機能別のトイレを想定しており、区長は「『渋谷スタンダード』のトイレができれば、日本中に広がる可能性がある」と期待を寄せる。公共のトイレは、男女別と、車椅子や赤ちゃん連れの人が使える広めの「多機能トイレ」を整備するのが一般的だ。しかし男女別は、心と体の性別が一致しないトランスジェンダーの人や、異性の介助者を同伴している人が利用しづらいとの声がある。(略)
同区は基本方針で「トイレは生活の中で不可欠な設備。トイレのために行動が制限され、社会参画が阻害される状況は大きな損失」として、「多様性を受け入れる」「みんなが選べる」――などを柱に掲げる。男女共用化のほか、車椅子利用者、人工肛門や人口ぼうこうを付けている人(オストメイト)、乳幼児連れの人など、それぞれの特性に応じて選べるよう、多機能トイレの設備を個室に分散するなどの考えが示された。(略)
同区は2015年、同性カップルを法的な夫婦と同等にみなすパートナーシップ条例を全国に先駆けて制定するなど、性的少数者の支援に取り組んでいる。

ということで、今回は「性の多様性」に注目して解説!

例えば『性の多様性』について、過去の国試ではこのように出題されていた!!

第107回 午前・54
性同一性障害〈GID〉/性別違和〈GD〉について正しいのはどれか。
1.出現するのは成人期以降である。
2.ホルモン療法の対象にはならない。
3.生物学的性と自己認識とが一致しない。
4.生物学的性と同一の性への恋愛感情をもつことである。

正解 3

 

この問題を新聞記事・ネットニュースから読み解く!!

最近、新聞やニュースだけでなく、色々な所で「LGBT」という言葉を耳にするようになったと思いませんか? 今、世界中で大きな話題となっています。日本国内でも同様に、テレビドラマなどの題材となったり、世間の注目を集めるワードとなっています。また、看護師国家試験の出題基準にも「LGBT」が記載されており、世間だけでなく国試を受験する人にとっても非常に重要なポイントとなってくるのではないでしょうか。
そもそもLGBTとはLesbian(レズビアン)・Gay(ゲイ)・Bisexual(バイセクシャル)・Transgender(トランスジェンダー)の言葉の頭文字をとって組み合わせた言葉で、性的少数者を表す言葉のひとつとして使われます。他にもSexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)の頭文字をとった「SOGI」という表現もあります。性的少数者には、LGBT以外にも男女どちらにも恋愛感情を抱かない人や、自分自身の性を決められない・分からない人など、本当に様々な人がいます。
そうした性的指向・性自認、LGBTなど性的少数者の方々が抱える悩みや、社会で直面する困難は多く、中には誰にも打ち明けられずに自殺してしまう人もいます。その悩みの多くは差別や偏見などからくるのだと思います。
このような差別や偏見などのストレスをなくそうという活動が活発化し、色々な場所で議論が交わされていたり、具体的な対策がたてられています。冒頭の記事もそのひとつです。
そこで今回は、具体的な対策について書かれた記事がいくつかありましたので、紹介していきたいと思います。

 

まずは認めることが大きな一歩

これまで同性愛者など、様々な性的指向をもった人々に対して、偏見の目を持たずに接してきた人はたくさんいたと思います。しかし、それを公に認めた例というのは非常に少なかったのではないでしょうか。今、その状況が少しずつ変わりつつあります。それは彼等彼女等にとってとても大きなことだと思います。そんな「大きな一歩」として、同性カップルを公に認めるという記事がありましたので、早速見てみましょう。


中野区は9日、お互いを人生のパートナーとする宣誓書を提出した同性カップルに対し、受領証を交付する「中野区パートナーシップ宣誓」に取り組む方針を発表した。8月から受け付けを開始する予定。希望するカップルには、療養看護や財産管理などに関する委任契約の公正証書の受領証も交付する。区長は「同性パートナーということで社会的に不便を感じている人たちに対して、少しでも不便を解消できることを考えるべきだ」と述べた。
区によると、宣誓書の提出時にカップル双方が20歳以上で、区内在住か区内に転入する予定などの要件を満たせば、受領証を交付できる。さらに、宣誓書に任意後見契約公正証書などを添えて提出すれば、住宅ローンを組む際に必要な公正証書の受領証も、併せて交付する。
同性パートナー制度をめぐっては、都内では2015年11月に渋谷区と世田谷区が全国に先駆け、相次いで証明書などの交付を始めたほか、兵庫県宝塚市や那覇市などにも同様の制度がある。
区長は「(同性カップルの)当事者を含めて、いろいろ話を聞いたりしながら準備をしてきた」と語った。

—毎日新聞  2018年5月10日(木)

東京都世田谷区と渋谷区にて、最初に同性パートナーを認める動きが始まり、少しずつですが、こうして全国に広がりつつあります。まさしく大きな時代の変化なのではないでしょうか。これまでに一体どれだけの人達が悩み、嘆いたりしてきたことでしょう。これからの時代、そんな彼等彼女等が、自由で拓けた生活をどこででも営んでいけることになっていくための、大きな勇気ある制度として、今後もあらゆる土地域に広がっていって欲しいと思います。

 

差別のない世界を、東京都から!

前述のパートナーシップ制度に伴い、今度は市区町村という単位ではなく、「東京都」が大きな大きな意義のある条例を成立させました。勿論、東京オリンピックを見据えてなのでしょうが、これは世界に対して大きなアピールとなると思います。
まずは記事を見てみましょう。


ヘイトスピーチを規制し、性的少数者(LGBTなど)への差別を禁止する東京都の人権条例案が5日、都議会本会議で可決・成立した。来年4月に全面施行する。ヘイトスピーチ対策で公的施設の利用制限ができるようになるが、有識者から表現の自由の侵害や恣意的な運用を懸念する声も出ている。
条例は、2020年東京五輪・パラリンピックを見据え、いかなる差別も禁じた「五輪憲章」の理念を実現するのを目的に掲げる。
特定の人権や民族に差別的言動を繰り返すヘイトスピーチを防ぐため、知事が定める基準に従い、公的施設の利用を制限できる。ヘイトスピーチやヘイトデモをした団体・個人名を公表し、様子を収めたネット上の動画の経験者らでつくる第三者機関が審査する。性的少数者への差別禁止は、事業者に差別解消に努めるよう求める。(略)

—毎日新聞  2018年10月6日(土)

先日、「アメリカのトランプ大統領がトランスジェンダーを排除」という記事がありました。世界的に広がっている「性の多様性を認める」という潮流に逆らう形となるこのトランプ政権の方針に、世界中の注目が集まりました。しかし、東京都はまさしく「性の多様性を認める」、そしてそれを差別することを禁じるという形で非常に大きな一歩を踏み出そうとしています。こうした公の動きが活発化し始めたことにより、人々の関心や考え方というのも徐々に徐々に変わり始めるのではないでしょうか。もっと自由な、もっと拓けた誰もが住みやすい街づくり、国づくりをしていって欲しいと思います。

 

差別・偏見のない、誰もが生きやすい世界を……


衆議院議員が月刊誌にてLGBTに対し「生産性がない」と発言したというニュースが大きな波紋を呼んだり、今年は本当に新聞の中で「LGBT」というワードを目にします。それだけ、これから大きな変革が訪れるような気がしてしまいます。これまでに、集団デモや色々な所でLGBTを認めて欲しいと訴える動きがありました。一人ひとりが動いてきました。そうしたら市区町村が動きました。今度は東京都が動き出しました。次は誰が大きな一歩を踏み出すのでしょうか。国でしょうか。世界全体なのでしょうか。
まだまだ時間はかかってしまうのかもしれません。それでもゆっくり、着実に少しでも差別・偏見のない世界がやってくるのを期待して、これからもこの話題について注目していきたいと思います。
 

イラスト:Aokimac

 

おまけ! 今回のテーマに関連するワードの過去問題も見てみよう!

第104回 午後問題64
第105回 午後問題54