今回頂いた質問

実習で患者さんを受け持っていますが、どうしても会話が続きません。時には、患者さんがイライラしている様子もあり、どのように関わったらよいか分かりません。臨床指導者から「コミュニケーションの方法を工夫してみては?」とアドバイスを受けましたが、どのように工夫したら良いのでしょうか。

ご質問ありがとうございます。

「患者さんとの会話が続かない」というのは、学生として悩むところですね。
会話が途切れると、患者さんとの間に気まずい空気が流れて、どうしたらよいか分からなくなる・・・そんな悩みを抱える学生はとても多いものです。

実は、「患者さんとの会話が続かない」場面であっても、患者さんとのコミュニケーションは続いているということをご存じでしたか?

たとえば、患者さんの表情やしぐさを観察してみましょう。
会話が途切れたとき、患者さんはどのような様子でしょうか?

(1)患者さんが首をかしげて、何かを考えている様子はありませんか?

このような様子がみられる患者さんは、もしかすると「学生の話がよく分からない」と感じているのかもしれません。専門用語をわかりやすい言葉に置き換えたり、「何か分からない点はございませんか?」など声をかけてみたりしてはいかがでしょうか。

(2)イライラした様子や、辛そうな様子(眉間にしわを寄せるなど)はありませんか?

このような様子がみられる患者さんは、もしかすると「痛みやだるさなどの苦痛がある」のかもしれません。「どこか具合の悪いところはございませんか?」とたずねてみましょう。
万が一「あっちへ行ってくれ!」などといった突き放す言葉を投げかけられたら、患者さんの気持ちとして素直に受け止め、ひとまずその場を離れましょう。学生にとっては辛い場面ですが、患者さんと距離を置くことも時には必要です。患者さんの様子を遠くから観察しながら、なぜ患者さんがそのような言葉を発したのか、学生としてどんなことができるか、考えてみましょう。

(3)よそよそしい様子や、こちらの顔色をうかがう様子はありませんか?

このような様子がみられる患者さんは、もしかすると「学生との関わりに緊張している(戸惑っている)」のかもしれません。学生に受け持たれることを了解したからといって、すべての患者さんがフレンドリーに関わってくれるとは限りません。学生がどんな人なのか?学生とどのような距離感で接したらよいのか?学生だけでなく、患者さんにとっても毎日が試行錯誤です。実習期間には限りがありますが、病気や治療に関することだけでなく、患者さんの趣味や特技など、患者さんが楽しく話せる話題を見つけることから始めてみましょう。

このように、患者さんのしぐさや表情などを通してメッセージを汲み取ることを、非言語コミュニケーションといいます。患者さんの表情やしぐさを観察しながら、体調を気遣う言葉をかけてみたり、それとなく距離を置いてみたりすることも、大切な看護ケアです。
患者さんとの会話が途切れたら「非言語コミュニケーションのチャンス!」と捉え、患者さんとの前向きな関わりを続けていきましょう。

回答は以上になります。

では、第100回の国家試験で出題された問題を解いてみましょう。

問題

第100回 看護師国家試験 午前問題15

患者とのコミュニケーションで適切なのはどれか。
1. 否定的感情の表出を受け止める。
2. 正確に伝えるために専門用語を多く使う。
3. 会話の量と信頼関係の深まりとは比例する。
4. 患者の表情よりも言語による表現を重視する。

1.○ 否定的な感情もまた、患者さんの気持ちであることには変わりません。感情表出を受け止めることで、患者さんが自身の気持ちを整理できるよう、寄り添う姿勢が大切です。
2.× 情報の正確さは必要ですが、患者さんにとって十分に理解できる言葉で伝えることが重要です。どうしても専門用語を使うのであれば、わかりやすい説明を補足するようにしましょう。
3.× 会話の量と信頼関係の深さは、必ずしも比例するとはいえません。
4.× 患者さんの表情もまた、言語と同じように重視すべき情報です。

答え…1

編集部より

48時間以上にも及ぶ難産だった患者さんが言ってました。「最後まで手を握り、腰をさすってくれた学生さんがいて、今ではプロの助産師として立派に働いているのよ!」と本当にうれしそうに。実習中の学生さんに出会った患者さんたちは、担当の学生が羽ばたく姿を応援してくれていますよ。