今回頂いた質問

授業で「高齢者は転倒により骨折しやすい」と習いました。高齢者の転倒による骨折で多い部位をいくつか教えてください。

ご質問ありがとうございます。

高齢者に多くみられる骨折部位は、下記のとおりです。
このうち、高齢者の転倒による骨折で最も多いのは、大腿骨頸部骨折です。

・大腿骨頸部骨折(足の付け根:転倒による衝撃で骨折しやすい)
・橈骨遠位端骨折(手の骨折:転倒の際に手をつくことによって骨折しやすい)
・上腕骨近端骨折(肩の骨折:転倒によって肩を直接打つ、あるいは手や肘をつくことによって骨折しやすい)
・腰椎圧迫骨折(腰の骨折:転倒によって尻もちをついた際、腰の骨が圧迫されることによって骨折しやすい)

閉経や加齢に伴い、高齢者は骨量の減少がみられます。また、平衡感覚・視力・筋力などの低下により、容易に転倒を招きやすくなります。とはいえ、骨折により長期間に渡る安静(ベッド上で過ごす時間など)がきっかけで、寝たきりになるケースも決して少なくありません。

高齢者の寝たきりを防ぐためには、日常生活における転倒予防に努めることがとても重要です。看護実習の一環として行われている”環境整備”もそのひとつ。「使用していない点滴ポールは片付ける」「患者さんの歩行状況に合わせて、歩行器や車椅子を利用する」など、患者さんにとって安全・安楽に過ごせる環境づくりが、患者さんの早期回復を助けるのです。

回答は以上になります。
では、第100回の国家試験で出題された問題を解いてみましょう。

問題

第100回 看護師国家試験 午前問題23

高齢者の転倒による骨折で最も多い部位はどれか。

1. 尾骨
2. 肋骨
3. 頭蓋骨
4. 大腿骨
5. 肩甲骨

1.×
2.×
3.×
4.○
5.×

高齢者の転倒による骨折は、転倒によって外力を受けやすい部位(股関節・手首・肩関節・脊椎など)に多くみられます。転倒する際にどのような姿勢になるか、イメージしてみるとわかりやすいでしょう。
高齢者ではわずかな外力でも骨折しやすく、回復が遅いという特徴があります。入院中のみならず、退院後の転倒予防としてどのような工夫ができるか、患者さんと一緒に考えてみるのもよいでしょう。

答え…4

編集部より

真冬の朝に凍った路面で足を滑らせ、大腿骨頸部骨折の手術を受けることになった患者さん。「早朝の散歩が日課で、草木を眺めたり、ご近所さんと立ち話をしたりするのが楽しみだったのに……」と嘆く姿に、看護学生を含むスタッフ全員が「何とか順調に回復してほしい!」と一致団結。床上運動などをうまく取り入れながら、早期離床へ向けたリハビリを行いました。その結果、患者さんは入院前と変わらず歩行できるまでに回復。患者さんの笑顔は、看護学生にとってかけがえのない喜びだったようです。