今回頂いた質問

高齢者の特徴について教えてください。
「高齢者は薬物による副作用を起こしやすい」ようですが、高齢者って身体機能が衰えると、薬物が体内に吸収されにくくなりますよね?吸収される薬物量が少ないのなら、副作用を起こすことも少ないような気がするのですが…

ご質問ありがとうございました。高齢者に起こる薬物の副作用について、理解を深めましょう。

高齢者は、胃酸の分泌が減少したり、胃腸の働きが低下したりすることによって、薬物の吸収が悪くなることがあります。
そのため、内服した薬物の効果が現われにくい場合があります。

ただし、高齢者の内臓機能の衰えは、胃腸だけではなく、肝臓や腎臓にも起こります。
肝臓の解毒作用や、腎臓の排泄作用が低下すると、内服した薬剤の成分がいつまでも体内に残りやすくなります。

また、高齢者は加齢に伴い、あらゆる臓器の機能が低下していることがあります。そのため、複数の病気を併発していることが多く、何種類もの薬物を服用する機会があります。
さらに、高齢者は記憶力や判断力も低下するため、同じような種類の薬を重複して内服したり、内服の回数や量を間違えたりする危険性もありますね。

これらのような理由から、「高齢者は薬物による副作用を起こしやすい」といわれているのです。

では、ここまでを踏まえて過去の国家試験問題を解いてみましょう。

問題

第102回 看護師国家試験 午後問題62

加齢による身体生理機能の変化とそれによって影響を受ける薬物動態の組合せで正しいのはどれか。

1.体内水分量の減少―――――――代謝
2.体内脂肪量の増加―――――――排泄
3.血清アルブミンの減少――――――分布
4.糸球体濾過値〈GFR〉の低下―――吸収

1.× 体内水分量の減少は分布に影響する。
2.× 体内脂肪量の増加は分布に影響する。
3. 血清アルブミンの減少は分布に影響する。
4.× 糸球体濾過値(GFR)の低下は排泄に影響する。

※薬物動態は、吸収(薬の体内吸収)→分布(薬が体内のある組織に移行する)→代謝→排泄という流れをくむ。

正解は… 3

編集部より

高齢者の薬物の副作用は、身体への悪化にとどまらず、生活の質にも影響を及ぼすことがあります。たとえば、副作用に眠気やふらつきを起こしやすい薬物では、転倒や骨折を起こすばかりか、寝たきりの原因にもなりますね。そのため看護師は、高齢者が薬物を正しく服用できるよう観察・工夫したり、副作用の有無について慎重に観察していくことが必要です。