今回頂いた質問

不妊症の定義が「1年」に短縮される方向だというニュースがありました。不妊症やそのサポートなどについて教えてください。

晩婚化が進む中、不妊症の患者は増加しています。不妊症の男女は10組に1組といわれていますが、最近では7組に1組、将来的には3.5組に1組になるという統計もあります。

2015年6月に報道された記事は、『生殖可能な年齢で、特に避妊をせず正常な性生活を送っているのに「2年」にわたって妊娠をみない場合』という不妊症の定義を、WHO(世界保健機構)やアメリカの学会にならって、「1年」に短縮するというものです。正式決定は8月になりますが、女性の妊娠年齢が上昇するなかで、より早期に適切な不妊治療を受けることにつながるとされています。

不妊の原因

1)排卵因子(無排卵・卵子の未成熟・ホルモン異常など)
2)卵管因子(卵管通過障害など)、
3)男性因子(無精子症・乏精子症・精子無力症・精子奇形症・精管通過障害など)

があります。他にも、性交障害や特に異常はみられないのに妊娠しないものなど、複数の因子が重なり合うなど多岐にわたっているのが現状です。ここで、不妊症の主な検査と治療についてまとめておきましょう。

不妊症の主な検査と治療

不妊因子検査治療
排卵因子基礎体温表
ホルモン測定
超音波検査
性交日指導
排卵誘発薬(クロミフェン)
排卵誘発薬(ゴナドトロピン)
男性因子精液検査
ヒューナーテスト
人工授精
体外受精(顕微授精)
卵管因子子宮卵管造影
通気通水検査
子宮鏡
卵管鏡・腹腔鏡下手術
子宮鏡手術
体外受精

不妊治療は高額ですが、そのほとんどが保険診療の適用となっていません。そこで厚生労働省では、少子化対策として「特定不妊治療費助成事業」を開始しました。各都道府県、指定都市、中核市が設置している「不妊専門相談センター」では、不妊に悩む夫婦に対し、医師・助産師等の専門家が相談に対応したり、診療機関ごとの不妊治療の実施状況などに関する情報提供を行っています。また、日本看護協会では、生殖医療を受けるカップルへの必要な情報提供および自己決定を支援する「不妊症看護認定看護師」を養成しています。

不妊は、長期にわたる治療を必要とすることも少なくありません。夫婦のニーズに合わせた検査や治療を選択できるよう、根拠に基づく正確な情報を提供してその選択を支援していく必要があります。また、検査・治療に伴う悲嘆反応やストレスを受けとめ、自尊心の低下を予防することや、夫婦間の考えの調整をはかっていくことも大切になります。

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第104回 看護師国家試験 午前問題81

不妊症について正しいのはどれか。

1. 6か月間避妊せずに性交渉があっても妊娠しない状態である。
2. 頻度は妊娠を希望し避妊しないカップル10組に3組である。
3. 体外受精に要する費用の公的な助成制度がある。
4. 女性の年齢と不妊症の治療効果は関係しない。
5. 男性側の原因は7割程度である。

1. × WHOの不妊症の定義は「1年間の不妊期間をもつもの」とされている。
2. × 一般的に不妊症の男女は10組に1組といわれているが、最近は7組に1組という統計もある。
3. ○ 厚生労働省の「特定不妊治療費助成事業」は、戸籍上の夫婦を対象に体外受精と顕微授精の一部費用を給付する制度である。
4. × 加齢による卵子の質の低下で妊娠率は下がるといわれている。30代前半の着床率は30~40%であるが、40代では10~20%以下になる。
5. × 近年、男性不妊の割合が増えているが、男女比率は、およそ1:1とされている。

正解…3

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編集部より

「妊活」という言葉が話題になったように、不妊治療に関するニュースが以前より増えてきている気がします。しかし、当事者にとってはとてもデリケートな話題です。看護を担当するときには、どのようなサポートを必要としているのか、よく検討することが大切になりますね。