今回頂いた質問
実習で、初めて統合失調症の患者さんと接しました。毎回、笑顔で話しかけるんですが、無反応で無表情なことが多く、嫌われているかと思うと、どうしていいのかわかりません……。
その患者さんが無反応だったり無表情だったりするのは、あなたのことが嫌いで拒否しているのではありません。統合失調症の慢性期にみられる症状です。このような場合は、挨拶や日常的な言葉かけを根気強く続けることで、患者さんと心の交流が徐々にできるようになってきます。
さまざまな態度や発言が、精神の障害によるものであると理解すれば、患者さんとの信頼関係を築くことができるでしょう。
統合失調症の代表的な症状やその分類を確認してみましょう。
統合失調症の代表的な症状の分類
■ブロイラーによる【基本症状】と【副次症状】
基本症状
(1)連合弛緩(思考障害)
(2)感情障害(感情鈍麻)
(3)アンビバレンス(両価性)
(4)自閉
副次症状
知覚の障害(幻覚)、妄想、記憶障害、緊張病性症状、急性症状など
■シュナイダーによる【一級症状】と【二級症状】
一級症状
(1)思考化声……自分の考えが他人の声として聞こえる
(2)応答形式の幻聴……「あいつはバカだ」「そうだそうだ!」というように、自分について会話する複数の声が聞こえる
(3)自己の行為を批判する声の幻聴……「歩くな」「食べるな」など、行為に批判的な声が聞こえる
(4)身体への被影響体験……「頭に電気を流されていて脳が溶ける」など、身体の異常な感覚が他人の影響だと考える
(5)思考奪取とその他の思考への影響……「自分の考えが抜き取られ、何も考えられなくなる」などと感じる
(6)妄想知覚……「車のクラクションが2回鳴ったのは、戦争が始まるという意味だ」など、知覚したことに特別な意味づけをする
(7)感情、欲動、意思の領域におけるさせられ体験、被影響体験……他者によって感情、欲動、意思が操作され、「させられている」と感じる
(8)思考伝播……自分の考えていることが他者に伝わってしまうと感じる
二級症状
統合失調症でみられるが、診断上それほど重要ではない症状(その他の幻覚、思考制止、観念奔逸、錯乱と困惑、強迫行為など)
■クロウによる【陽性症状】と【陰性症状】
陽性症状
通常では現れない知覚や思考、行動などが出現するもので、幻覚、妄想、思考障害、著しく奇異な行為、シュナイダーの一級症状が含まれる。ブロイラーの副次症状にあたり、急性期にみられやすい。可逆的な症状であり、治療に反応しやすい。
陰性症状
通常ならばあるはずの感情や意欲などが低下または消失するもので、感情の鈍麻、平板化、意欲の喪失、注意の障害、思考の貧困、爽快感の消失、非社交性などが含まれる。ブロイラーの基本症状にあたり、慢性期にみられやすく、陽性症状よりも目立たない。器質的、固定的な症状であり、治療しにくいとされる。
では、統合失調症の症状について問われた国家試験の過去問題を解いてみましょう。
問題
第102回 看護師国家試験 午前問題44
統合失調症の陰性症状はどれか。
1.作為体験
2.感情鈍麻
3.滅裂思考
4.被害妄想
2.○
3.×
4.×
陰性症状にあたるのは感情鈍麻である。
答え…2
編集部より
統合失調症は以前、「精神分裂病」と呼ばれていました。「精神分裂病」は、ブロイラーが提唱した「スキゾフレニア」を直訳した言葉で、1937(昭和12)年から使われてきましたが、言葉のイメージから、「精神が分裂している恐ろしい病気」という人格を否定するような誤った認識が世間に広まってしまい、患者やその家族が偏見や差別の対象なっていました。
そのため、その病名を改めることを求める声が高まり、日本精神神経学会によって新しい病名の検討が進められ、2002(平成14)年に「統合失調症」という病名に変更されました。