今回頂いた質問

サルコぺニアって試験に出ますか?

おおっと! なんと大胆なご質問でしょう(笑)。でもわかります。最近よく耳にする用語ですよね。講義で先生が話されるようなこともあるでしょう。なのに看護師国家試験の過去問題をみても、サルコぺニアは出てこない。・・・覚える必要あるの?

ご質問者はきっと、たくさんの問題を解かれてきたのでしょう。まずそこまでわかっちゃう自分を褒めてあげてください(笑)。

サルコぺニア、これまで看護師国家試験に出題はありませんでしたが、これからはあるかもしれませんね。実際医教の教材に記述はあり、来春4月発売の『必修問題対策トレーニング』でも問題として取り上げる予定です。もともと海外ではサルコぺニアに対する関心は高く、高齢化に伴って日本でも注目されています。これから医療や介護の現場に携わるにあたっても、知っておいてよい用語です。この機会に学んでおきましょう。

サルコペニアは進行性・全身性の筋肉量と筋力の減少によって、身体機能の低下を起こした状態をいいます。結果として身体動作が困難になって生活に支障をきたし、生活の質の低下や死の危険を引き起こすとされています。(一時的で限られた部分の筋肉量低下や筋力低下は含まれません)

80歳以上では約半数にみられるといわれているサルコぺニア。まさに現代の高齢化が招いたと言っていいでしょう。原因には、

(1)加齢によるもの
(2)活動に関連するもの(長期臥床、活動の少ない生活スタイル、無重力状態など)
(3)疾患に関連するもの(重症臓器不全、炎症性疾患、悪性腫瘍や内分泌疾患など)
(4)栄養に関連するもの(消化・吸収不良、食欲不振による栄養不足、摂取エネルギーの不足、タンパク質の摂取不足など)
があります。診断は身体動作(歩行速度)、筋力(握力)、筋肉量(機器による測定)の3つで行われ、原因に応じて栄養管理を合わせた筋力トレーニング、リハビリテーション、早期離床、早期経口摂取、適切な栄養管理、原疾患の治療などが行われます。

筋肉量・筋力量の低下は、いわゆる廃用症候群と同様、QOL(Quality Of Life:生活の質)にも影響を及ぼします。

特に姿勢を維持したり、立ったり歩いたりといった日常動作の基盤となる筋肉は重要です。たとえば筋力が低下すると、急にバランスを崩した際などに踏ん張ることができず、転倒してしまうリスクが増えてしまいます。手術後、臥床が続く間に筋肉が動かなくなり、寝たきりに繋がるようなこともありますし、足腰が弱ってトイレに行くのがおっくうになった高齢者が、紙オムツをするようになったら、気持ちまで弱くなってしまったというような例もあります。

たんに身体能力の問題にとどまらないのですね。術後などにリハビリを怠らないのはもちろん、日ごろ筋肉を鍛えるトレーニングを継続的に行うこと、また日常から活動的な生活を送ることが大切です。

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回答は以上になります。
今回は看護師国家試験に過去問題がないので、模擬問題を1問解いてみましょう。

問題

サルコぺニアにより引き起こされるのはどれか。

1. せん妄
2. 転倒
3. 帯状疱疹
4. 慢性閉塞性肺疾患

1.× せん妄は意識障害のひとつで、見当識障害やもの忘れの症状がみられる。サルコぺニアとの関連はない。
2.○ サルコぺニアは筋肉量と筋力の減少で、身体機能の低下が起きた状態である。転倒のリスクが高まる。
3.× 帯状疱疹はウイルス感染症で、はじめ神経痛様の疼痛が出現し、数日後に小水疱を伴った浮腫性紅斑が生じる。
4.× 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、たばこ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる、肺の炎症性疾患である。

正解…2

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編集部より

新しい用語を耳にすると、不安になりますよね。特に看護師国家試験が近づいてから知ると、慌てて教科書をめくってみたり。それに「サルコぺニア」だなんて、なんだかむずかしそう。
でもたいがいの用語は、ことば自体は真新しくとも、内容は今まで習ってきたことの延長として理解できることばかりです。加齢、長期臥床、廃用症候群、筋力低下、QOL・・・。解説文のことばは、ぜんぶどこかで目にしてきましたよね。関連させて復習すれば、知識もぐんと深まるはず。心配せずに、1つ1つ覚えていきましょう。