今回頂いた質問

訪問看護の実習で統合失調症の患者さんを担当しています。毎回ではないので単純な飲み忘れなのか拒薬なのか微妙なのですが、処方されている内服薬を飲んでいない時があります。もし拒薬だった場合どのように対応すればよいのでしょうか。

在宅で療養を続ける精神疾患患者の看護では、処方薬の服薬管理が重要となります。

現在担当されている患者さんについてですが、拒薬(自己判断によって意図的に薬を飲まないこと)なのか怠薬(無意識・記憶障害による飲み忘れ)なのか、1人暮らしなのか家族と同居なのかがわかりませんので「1人暮らしで拒薬」という前提で考えてみましょう。
服薬を拒否することで精神症状の悪化や再発する場合が多く、服薬管理は精神疾患患者が在宅で安心した生活を続けていく上で非常に重要となります。家族と同居している場合は、家族に対して服薬管理指導を行いますが、1人暮らしの場合は療養者本人が服薬管理をすることになります。
その場合は、療養者が抱いている薬物治療に対する気持ちを丁寧に把握するとともに、服薬の目的や副作用が現れた時の対応の仕方を指導し、本人が納得した上で、服薬の自己管理が続けられるように支援することが重要となります。

拒薬の理由

拒薬する理由についてですが、
●薬の飲みにくさ
●服薬することで現れる眠気や脱力感
●倦怠感など日常生活に影響を及ぼす副作用
●服薬する薬によって自分が変えられてしまうのではないかという不安や妄想 
などが考えられます。

拒薬する精神疾患患者への対応

統合失調症の患者さんの中には、病状の悪化による再入院を繰り返す過程で、自分が統合失調症であることや、服薬中断が精神症状悪化につながると分かっている場合もあります。病識や服薬の必要性について本人がどう思っているのかを確認することも対応策を考える上で重要となってきます。
対応策として、
●現在の服薬状況を確認する
●服薬に対する本人の認識を確認する
●薬に対する不安や理解不足の解消方法を検討する

また、単純な飲み忘れによって症状が不安定となり、服薬中断につながっていく場合もあります。その際には、服薬カレンダーなどの活用も有効な手段となるでしょう。

では、国家試験で出題された統合失調症の在宅療養者の拒薬に関する問題を解いてみましょう。

問題

第102回 看護師国家試験 午後問題91

Aさん(42歳、男性)は、統合失調症で入院中だが、3か月の治療で症状が改善したため、退院することになった。Aさんは、統合失調症で数回の入院経験があるが、前回の退院後に拒薬がみられたため、今回は2週間に1回の訪問看護が計画されている。Aさんはアパートで1人で暮らしている。身体的な疾患はない。

訪問時、ごみ箱に多くの内服薬が捨てられていた。Aさんは「その薬は飲んではいけないとみんなが言うし、飲むと体がだるくなるので飲みたくない」と言う。
看護師の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.「そんなはずありませんよ」
2.「しばらく内服を休みましょう」
3.「服薬チェック表を使ってみましょう」
4.「薬を飲んだ後の症状を聞かせてください」
5.「薬の内容について主治医に相談してみませんか」

1.× 患者の訴えを否定するのではなく受け止め、適切な知識や行動の教育的介入を行うことが必要である。
2.× 服薬の中断は、症状の悪化や再発につながる。また、服薬の取りやめは看護師ではなく医師の判断が必要である。
3.× 服薬チェック表は、無意識や記憶障害などによる薬の飲み忘れなどの防止には効果があるが、薬物治療への不安や副作用への拒否感による拒薬には、薬に対する不安を取り除くための関わりが必要である。
4.○ 患者が拒薬する理由を把握するためにも、服薬後の症状を知ることは重要である。
5.○ 薬物治療の正しい知識と教育が必要であり、治療・服薬が継続できる関わりが重要となる。

答え…4・5

編集部より

拒薬する統合失調症の患者さんに薬を飲ませるのは、至難の業。毒を飲まされている、その薬を飲むとめまいがするから怖いなど、本人にとっては切実なことなので、拒否するのも無理はないのかもしれません。その恐怖を理解して、本人の気持ちに寄り添うことが、看護の基本方針ですね。ただ、どうしようもない場合は液体の薬を処方してもらい、家族が朝食のみそ汁やお茶などにまぜて飲ませるといった方法をとることもあるようで、現実の看護対応はさまざまなようです。