今回頂いた質問

要介護認定を受けている療養者さんが医療保険で訪問看護を受けています。介護保険が優先されるのではないでしょうか?

介護保険による訪問看護サービスは、第1号被保険者と第2号被保険者(16疾病に限る)で要支援・要介護が認定された方が利用できます。介護保険が他法に優先するため、介護保険で訪問看護を利用できる療養者さんは医療保険では利用できません。
ただし、例外があります。
それは、「厚生労働大臣が定める疾病等」や急性増悪等の理由により医師が訪問看護特別指示書を交付した場合のみですが、医療保険での対応となります。このあたりは、国家試験の状況設定問題でも問われてくるところなので確認が必要です。しっかりと覚えておきましょう。

介護保険の利用者で医療保険の訪問看護の対象となる、厚生労働大臣が定める疾病等

●末期の悪性腫瘍
●多発性硬化症
●重症筋無力症
●スモン
●筋萎縮性側索硬化症
●脊髄小脳変性症
●ハンチントン病
●進行性筋ジストロフィー症
●パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のものに限る))
●多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症およびシャイ・ドレーガー症候群)
●プリオン病
●亜急性硬化性全脳炎
●ライソゾーム病
●副腎白質ジストロフイー
●脊髄性筋萎縮症
●球脊髄性筋萎縮症
●慢性炎症性脱髄性多発神経炎
●後天性免疫不全症候群
●頸髄損傷
●人工呼吸器を使用している状態
(※赤字は平成24年4月から追加で対象となった5疾患)

では、国家試験で出題された訪問看護の保険制度に関する問題を解いてみましょう。

問題

第102 看護師国家試験 午前問題59

要介護認定者が訪問看護を受ける際、医療保険から給付される疾病または状態はどれか。
1.関節リウマチ(rheumatoid arthritis)
2.在宅酸素療法を受けている状態
3.人工呼吸器を使用している状態
4.全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)<SLE>

1.× 関節リウマチは「介護保険」の特定疾病(40歳以上65歳未満の2号被保険者が介護申請できる疾病)である。
2.× 要介護認定者で在宅酸素療法を受けている人への訪問看護は、介護保険が適応される。
3.○ 人工呼吸器を使用している状態にある者は厚生労働大臣が定める疾病等に該当し、医療保険での訪問看護を受けることになる。
4.× 全身性エリテマトーデスは特定疾患治療研究事業対象の疾患であるが、訪問看護を医療保険で行う「厚生労働大臣が定める疾病」ではない。

答え…3

編集部より

「介護保険は他法に優先!」を繰り返し呪文のように唱えていた時に、「在宅看護論」の新規問題に「医療保険による訪問看護」との記述があり、混乱したことを覚えています。最初は間違いかなと思いましたが、先生からの詳細な説明があり、訪問看護における介護保険・医療保険の仕組みの複雑さにため息をつきました。介護保険・訪問看護に関する状況設定問題が多く出題されるようになった昨今ですが、「例外」に関しても、国試は知識を問うてきます。覚える範囲が少なくてすむ「例外」を押さえておくのも手だと思います。