つぼみのもっと知りたい!災害看護
DMAT(第1回参照)や民間からの医療チームなど、
たくさんのお医者さんや看護師さんなど、医療従事者の方々が派遣されることは
もうみなさん知っていることかと思います。
更に、忘れてはいけないのが、自衛隊も医療支援を行っており、その中には看護師さんもいます。
今回はそんな「自衛隊の看護師さん」について、災害発生時の派遣に関することも含めて見ていきましょう!
自衛隊の看護師さん?
どこで看護業務を行っているのかな?
どうやってなるのかな?
自衛隊の看護師とは
自衛隊の看護師について、みなさん馴染みがなく、なかなか想像つかないと思います。まずは自衛隊の看護師が所属する、医療・衛生の組織に関することから説明していきます。
自衛隊には、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の3つの自衛隊があり、その中でそれぞれ、医療チームである衛生科部隊を個別に持っています。さらに、前述の3部隊の共同機関でもある自衛隊病院が全国で16施設あります。自衛隊の看護師は看護師であるだけではなく、自衛隊の一員として「看護官」と呼ばれ、全国の駐屯地にある各部隊の「医務室」か、全国の「自衛隊病院」のどちらかで勤務しています。
自衛隊の看護師になるには
自衛隊の看護師になるには以下の3つの方法があります。
(1)防衛医科大学校看護学科に入る
防衛医科大学校看護師養成課程(自衛官候補看護学生)は、保健師・看護師である幹部自衛官となるべき者を育成するコースです。4年間の教育を受け保健師・看護師の国家資格の取得を目指します。免許取得後は、陸・海・空各幹部候補生学校に入校し、幹部自衛官に必要な知識と技能を学びながら、幹部としての資質を養います。その後、自衛隊看護師として全国の自衛隊病院や衛生科部隊等で勤務し、実務経験を積んでいきます。受験資格は18歳以上21歳未満の者 、高卒者(見込含)又は高専3年次修了者(見込含)(自衛官募集HPより抜粋) 。
防衛医科大学校看護学科は、「自衛官コース」(陸・海・空の自衛隊の保健師・看護師の幹部自衛官を養成するコース)と「技官コース」(防衛医科大学校病院で勤務する保健師・看護師の技官を養成するコース)に分かれています。
どちらも入学次第、「特別職国家公務員」(技官コースは非常勤職員)の身分となり、自衛官コースは給与、技官コースは非常勤職員手当が支給されます。
毎年9月に募集があり、例年の志願者は多数です。今年度(2018年)の倍率は16.3倍でした。
そして、もちろん最終学年時には他の看護学生と同様に、看護師国家試験を受験し、合格を目指します。ちなみに、防衛医科大学校看護学科の国家試験合格率は例年ほぼ100%だそうです。
(2)自衛隊に一般曹候補生として入隊し准看護師過程を受ける
一般曹候補生とは
陸上・海上・航空自衛隊の曹となる自衛官を養成する制度です。一般曹候補生は、入隊後2年9月以降選考により3曹へ昇任します。自分の能力に合わせて、知識と技能を高めてゆくことが可能です。
一般曹候補生とは、18歳以上33歳未満の者を対象に、陸上、海上、航空各自衛隊の部隊勤務を通じて、その基幹隊員となる陸・海・空曹自衛官を養成する制度です。応募資格年齢を比較的広くとっているため、高校新卒者はもちろん、高専卒、大卒、社会人経験者まで多様な経歴を持った人材が一般曹候補生として入隊します。(自衛官募集HPより抜粋)
上記にもある「知識と技能を高める」ことの一環として、資格の取得機会があり、その中のひとつに准看護師資格があります。
(3)看護師資格を取得後に自衛隊に入隊する
看護師国家資格を取得し、その後、自衛隊の看護官募集に応募する。いわゆる中途採用や転職のイメージです。とはいえ、年齢は36歳未満の制限や、募集によっては経験年数の条件があり、小論文試験、口述試験、身体検査などもあります。また、募集人数も少ないため(平成28年度の陸上自衛官看護枠は約5名の募集でした)具体的なデータはありませんが倍率は100倍近くあるのではといわれています。
なるほど!
自衛隊の看護師さんになるための方法は分かったけど活動は
自衛隊病院や防衛医科大学校病院での勤務、各駐屯地での看護だけなの?
自衛隊看護師の活動
自衛隊病院や防衛医科大学校病院、各駐屯地での看護活動は通常の病院勤務の看護師と、普段の看護師としての医療業務内容に大きな変わりはありません。しかし、決定的に違うのは看護師としての医療業務と共に、自衛隊員の一員としての訓練があります。「自衛隊の訓練」というと多くの人の頭に真っ先に浮かぶのは「ほふく前進」や「射撃の訓練」。それらに加え、国内外の災害や緊急派遣に備えての野外病院の訓練があります。
災害時の自衛隊の医療支援
大規模災害が発生した際、自衛隊は現地で公共団体などと連携・協力し合い、被災者や遭難した船舶・航空機などの捜索、救助、水防、医療、防疫、給水、人員や物資の輸送などの様々な活動を行います。自衛隊の災害派遣は都道府県知事等の要請(ただし、特に緊急を要する場合は、要請を待たずに)に基づき、防衛大臣またはその指定する者の命令により派遣されます。
災害が発生後、要請があり被災地へ派遣、という大まかな流れだけでいえば、DMATも自衛隊の医療チームも同様です。しかし、自衛隊の医療活動ならではなのが、前述にもあるように日々の訓練の上、野外病院の医療チームとしての機能を持ち備えていることです。自衛隊の医療チームは野外における患者の治療、一次収容を行うことができます。また、X線の撮影、臨床検査(血算、生化学)が実施でき、小外科手術や点滴薬の投薬が可能な「野外手術システム」の設備や、ヘリでの搬送を必要とする際、ヘリポートに隣接した場所に患者を収容することができる、SCU(広域搬送拠点臨時医療施設)を開設する機能もあります。
●自衛隊救急車両
(陸上自衛隊HPフォトギャラリーより引用)
●一般的な救急車両は1人のみ搬送可能ですが、自衛隊救急車両は一度に4人の傷病者を搬送することができます。
(陸上自衛隊HPフォトギャラリーより引用)
近年の災害では、東日本、熊本、大阪北部、北海道で起きた大震災や、集中豪雨による災害がみなさん印象に強く残っていると思います。これらの自然災害の際にはもちろん、自衛隊が人命救助のために派遣されました。そして自然災害だけではなく、平成7(1995)年に起きた地下鉄サリン事件、平成17(2005)年に起きたJR福知山線脱線事故のような人為的な大災害の際にも自衛隊が派遣されています。
さて、自衛隊というと、行動的なイメージが強く、超急性期で積極的に活動を行っている姿が思い浮かぶのではないでしょうか。しかし、それだけではなく、東日本大震災のように長期に渡る支援が必要な大災害の際は、避難所での健康・衛生管理や心のケアも行っています。
長期に渡る支援にも関わっていたんだね。
被災者の多い大きな災害の派遣が一番多いのかな?
ニュースで大きく報道されているような大きな災害のみで派遣されているようにみえますが、あまり知られていないのは、自衛隊は医療が不足している離島などの救急患者を航空機で緊急輸送(急患輸送)も行っているのです。平成29(2017)年の災害派遣総数501件のうち401件が急患輸送でした。それらは南西諸島(沖縄県、鹿児島県)や小笠原諸島(東京都)、長崎県の離島などへの派遣が大半を占めています。
またその他にも、海外での自然災害発生時や、紛争による避難民の救護活動の際も派遣されます。
自衛隊員として、派遣の際に看護師さんも迷彩服で活動することもあります!
(もちろん自衛隊病院では通常の白衣で業務を行っています)
調べている中で見かけたのが
「自衛隊の看護師さん、興味はあるけど体力に自信がないのでまよっています」という方に対して
「体力がなくても訓練していく中で培われるから大丈夫! ぜひ挑戦して下さい!」
と書いてある記事がありました。
興味がある方はぜひ「自衛隊の看護師さん」を選択肢のひとつとして考えてみて下さい☆