つぼみのもっと知りたい!災害看護

「災害看護」って聞いたことはあるし、授業でも習うけど
実際どんな活動をしていて、どんな情報があるのだろう?

そんな災害看護について医教マスコットの『つぼみ』が徹底調査します!

毎年のように起こっている災害や大規模事故の現場でも
たくさんの看護師さんが活躍しています。
みなさんもつぼみと一緒に災害看護について知識や情報を学んで
いざというときに活かせたらいいですね★

災害医療・災害看護ってどんなことをしているの?
いつから始まったの?

日本における災害医療の本格的スタートは、1995年に発生した阪神・淡路大震災がきっかけでした。この大災害において6434人の方が亡くなり、その中でも「防ぎえた災害死」がその後の大きな課題となりました。これは、通常の医療行為が行えていれば助かっていた命が多くあったということです。主な原因といわれているのには大きく4つあり、1.超急性期に現場で医療活動を行える医療チームがなかったこと 2.災害医療を中心的に担い、指揮をとれる病院がなかったこと 3.重症・重病の患者さんの搬送が広範囲で行われなかったこと 4.医療情報を病院間や他の地域の医療機関と共有できていなかったこと が挙げられます。これらの反省点が原点となり、日本の災害医療はこれまで様々な研究・整備が行われ、2005年にはDMATが立ち上げられました。2004年新潟中越地震、2011年東日本大震災、2016年熊本地震でも災害医療チームは大いに活躍してきました。
これら被災地で行う災害医療のチームにおいて看護師が行う医療のサポート、生活支援や心のケアが『災害看護』です。

”DMAT”ってなぁに?

DMATとは……Disaster Medical Assistance Team=災害医療派遣チーム

大地震及び航空機・列車事故等の災害時に被災者の生命を守るため、被災地に迅速に駆けつけ、救急治療を行うため、厚生労働省の認めた専門的な研修・訓練を受けた災害派遣医療チームを日本 DMATと呼びます。国内では、2004年8月に東京都で初めて「東京DMAT」が設立され、そこから全国でもDMATが発足されました。災害が起こった際、災害急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性を持った、災害派遣医療チームであり、広域医療搬送、病院支援、域内搬送、現場活動などを主な活動としています。

●日本DMATの活動について

日本DMATの活動は、通常時に都道府県と医療機関との間で締結された協定及び厚生労働省、文部科学省、独立行政法人国立病院機構等により策定された防災計画等に基づきます

災害が起きた際、被災地域の都道府県は、当該都道府県外からの医療の支援が必要な規模の災害に対応するため、DMATの派遣を他の都道府県、厚生労働省、国立病院機構等に要請します。そして、以下の基準に基づき、管下の統括DMAT登録者等の意見を聴いて、必要に応じて速やかにDMATの派遣要請を行います。

DMAT派遣要請の基準

  1. 震度6弱の地震又は死者数が2人以上 50 人未満若しくは傷病者数が 20名以上見込まれる災害の場合
     管内のDMAT指定医療機関に対してDMATの派遣を要請
  2. 震度6強の地震又は死者数が 50 人以上 100 人未満見込まれる災害の場合
     管内のDMAT指定医療機関並びに被災地域の都道府県に隣接する都道府県及び被災地域の都道府県が属する地方ブロックに属する都道府県に対してDMATの派遣を要請
  3. 震度7の地震又は死者数が 100 人以上見込まれる災害の場合
     管内のDMAT指定医療機関並びに被災地域の都道府県に隣接する都道府県、被災地域の都道府県が属する地方ブロックに属する都道府県及び被災地域の都道府県が属する地方ブロックに隣接する地方ブロックに属する都道府県に対してDMATの派遣を要請
  4. 南海トラフ地震(東海地震、東南海・南海地震を含む)又は首都直下型地震の場合
     管内のDMAT指定医療機関及び全国の都道府県に対してDMATの派遣を要請

厚生労働省は、被災地域の都道府県の派遣要請に応じ、都道府県、文部科学省、国立病院機構等に対してDMATの派遣を要請します。被災地域外の都道府県は、被災地域の都道府県の派遣要請に応じ、厚生労働省と連携しながら、管内のDMAT指定医療機関及び日本赤十字社支部に対してDMATの派遣を要請します。厚生労働省は当分の間、被災地域の都道府県の派遣要請が無い場合においても、緊急の必要があると認めるときは、被災地域以外の都道府県に対して被災地域へのDMATの派遣を要請することができます。

日本では以下の通りに、都道府県の地方ブロックに分かれています。

  • ●北海道ブロック:北海道
  • ●東北ブロック:青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、新潟県
  • ●関東ブロック:茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
  • ●中部ブロック:富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
  • ●近畿ブロック:滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
  • ●中国ブロック:鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
  • ●四国ブロック:香川県、愛媛県、徳島県、高知県
  • ●九州・沖縄ブロック:福岡県、佐賀県、大分県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

各都道府県では、地域防災計画にしたがって、それぞれの地域にあった体制、連携、制度を整え、災害時に備えています。

東京DMATの出場までの例を見てみよう!

東京DMAT

東京DMATの出場は、都知事の命令で行われます。東京消防庁が事故や災害による傷病者の救助を行う際、現場に近いDMAT指定病院に連絡が入り、直ちに東京DMATが出場体制を整えます。東京DMATの出場に要する時間はおおむね5分程度で、現場までは東京消防庁DMAT連携隊が送り届けます。東京DMATは車中で東京消防庁と無線交信をしながら、患者の様態確認や収容先の選定、迅速な救命活動を行うための準備など、わずかな時間も救命のために尽くします。


参考:厚生労働省HP内『日本DMAT活動要項』
参考:東京都福祉保健局

そもそも急性期・亜急性期・慢性期ってなぁに?

それぞれどんな看護や支援をするの??

急性期

災害発生からおおよそ1週間までの時期をさします。さらに急性期の中でも 1)発生から6時間 2)6時間から72時間 3)72時間から1週間 の3つに分けらます

1)この時期はライフラインや医療施設などが被害を受けており、医療機能が著しく低下しています。また、被災現場には消防や自衛隊などによる救助活動が開始されているものの、道路渋滞や情報の錯綜により、救急搬送も円滑に進まないことが多くあります。主に、医療の中心となるのは、被災地内の災害拠点病院で行われます。病院では患者・職員の安全とともに病院の被害状況を評価し、傷病者の受け入れをします。市区町村では救護所の設置準備に入りますが、被害が大きい場合は、それらが非常に困難な状態になります。

2)この時期は被災地域内の病院において、医療需要が最も増加します。また、傷病者が自力で病院へ、または救急車・ヘリコプターなどで搬送されてきますが、薬剤や医療資器材が不足し始めます。そして、DMATなどの救護班が被災地へ派遣されるのもこの時期内です。被災地病院を中心とした医療活動をし、行政や医療また、派遣された医療チームが連携し、慢性疾患患者や要支援者へ「悪化させない医療」を行うことも重要です。被災地域内において重症者が多数発生している場合には被災地外への広域搬送が行われます。

3)避難所などの救護診療や巡回診療が実施される時期です。外傷患者は減少しますが、日常的に服薬を必要とする慢性疾患患者(糖尿病や高血圧など)が被災により処方されていた薬の消失などから医療機関を訪れてくることが多くあります。また、被災地外からの医療派遣や医療資器材の援助が届き、支援活動が活発になっている時期です。

亜急性期

発生から1・2週間~1か月程度。1週間程度が過ぎてくると、混乱していた被災地の医療行政の指揮統制や情報収集などが機能しはじめ、また、ライフラインの復旧とともに医療施設の外来診察の再開など被災地の医療機関が回復してきます。それに伴い、医療救護班などによる医療支援は撤収するところもありますが、避難所では感染症予防などをはじめとした公衆衛生活動が主となってきます。避難所での生活は特に高齢者には環境的にも、体力的にも、非常に困難が多く、阪神・淡路大震災ではこの時期、高齢者の避難所肺炎、従来もっていた慢性疾患の悪化などの健康上の問題が多く発生しました。これが「震災後関連疾患」といわれるものです。

慢性期

発生後1か月~3年程度の時期。地域が復旧・復興していくための時期です。避難所から仮設住宅に移った被災者による新たなコミュニティができます。しかし、新しいコミュニティになじめない高齢者が孤立することも多くみられます。また、この時期の心のケアも非常に重要とされています。

なぜ心のケアが必要なの??

災害によって、近親者や友人を失ったり、ペットや自宅、財産などの大切なものを失ったりと多くの人たちが心に深い傷を負い、また、避難所や新しい場所での生活、仕事や日常の立て直しなどさまざまな要因から、大きな心的ストレスにも見舞われます。災害の影響によって起こる精神への影響は被災直後にあらわれることもありますが、数か月たってからあらわれることもあります。東日本大震災でも震災に関連して自殺した被災者は2017(平成29)年の時点で210人いると報告されています。

災害によるストレスは予期できないことが多く、通常の対処(コーピング)が困難となります。被災地で看護にあたる際、災害から引き起こされた喪失体験や生活環境の中で起こる心的ストレスについて、その現状や実際を知ることが看護の手掛かりとなり、場合によっては専門科医との連携をとりながら心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病等を軽減するとともに、生きる活力を得て、復旧・復興に向けて歩き出せるよう支援することが大切です。

参考URL: 被災者のこころのケア 都道府県対応ガイドライン
参考URL: ストレス・災害時こころの情報支援センター

次回は、災害看護として実際に被災地で
慢性期の災害看護活動を行ってきた方にインタビューしてくるよ!