つぼみのもっと知りたい!災害看護

みなさん、DMAT(災害派遣医療チーム)のことはもう知っていることかと思います。
でも、災害発生時にDMAT以外の派遣医療チームも活躍しているのはご存じですか?
今日はそのひとつである「DPAT」についてご紹介します。

DPATってどんなチーム??

DMAT(Disaster Medical Assistance Team=災害派遣医療チーム)は災害時の救急治療を行うための専門的な医療チームですが、DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team=災害派遣精神医療チーム)は災害発生時、被災地でこころのケアを中心とした精神医療及び精神保健活動を行うための専門的な医療チームです。
平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災でも精神科医のチームが派遣され、「こころのケア」の支援は行われていましたが、特に組織化はされておらず、その後、PTSDを発症したり、避難生活で大きなストレスを抱える被災者が増えていきました。これらの課題を受けて、2013年3月に厚生労働省がDPATの名称や定義を定め、制度を作り上げ同4月に設立されました。実際の災害派遣としては、2014年8月に発生した広島土砂災害がDPAT設立後、正式な初派遣活動となりました。

DPATの活動定義とチーム構成

<活動定義>
DPATは、各都道府県等が継続して派遣する災害派遣精神医療チーム全ての班のことを指します。
DPATを構成する班の中で、発災当日から遅くとも48時間以内に、所属する都道府県等外の被災地域において活動できる班を先遣隊として派遣します。先遣隊は、主に本部機能の立ち上げやニーズアセスメント、急性期の精神科医療ニーズへの対応等の役割を担い、先遣隊の後に活動する班は、主に本部機能の継続や、被災地での精神科医療の提供、精神保健活動への専門的支援、被災した医療機関への専門的支援、支援者(地域の医療従事者、救急隊員、自治体職員等)への専門的支援等の役割を担います。

●DMATとDPATの比較

<チーム構成>
DPATは以下の職種を含めた数名(車での移動を考慮した機動性の確保できる人数を考慮)で構成しています。

■精神科医師 ※1
■看護師
■業務調整員(ロジスティックス):連絡調整、運転等、医療活動を行うための後方支援全般を行う者

※1) 先遣隊を構成する医師は精神保健指定医でなければなりません。しかし、先遣隊以外の班を構成する医師は精神保健指定医であることが望ましいとされています。

現地のニーズに合わせて、児童精神科医、薬剤師、保健師、精神保健福祉士や臨床心理技術者等を含めて適宜構成します。また、地域の実情に応じて、都道府県等の職員だけでなく、関連機関(大学付属病院、国立病院、公立病院、その他の病院、診療所等)の職員で構成する場合もあります。
DPAT1班あたりの活動期間は1週間(移動日2日・活動日5日)を標準としていますが、発災直後等のライフライン・宿泊環境等が整っていない状況で活動を行う班の活動期間は、班員の健康に配慮をした期間とします。また、活動の引継ぎがある場合は、活動期間に重なりを持たせるようにします。

DPAT派遣までの流れ

DPATの派遣調整は、基本的にDMHISS※2を用いて行われます。また、DPATの派遣は、基本的に災害対策基本法に基づいて行われるため、都道府県と政令指定都市によって、また、災害の規模の大きさによっても派遣の流れが以下のように異なっています。

※2)  災害時精神保健医療情報支援システム(Disaster Mental Health Information Support System:DMHISS)
DMHISSは災害時に効率的な活動を行うためのインターネットを用いた情報共有ツールであり、派遣要請/派遣先割当機能、活動記録機能、集計機能を有するシステムである。

◆被災都道府県外からの支援が必要な規模の災害の場合
■厚生労働省を介して、派遣要請を行う場合
1)被災都道府県の本庁担当者は、管下のDPAT統括者と協議し、厚生労働省に対し、DPATの派遣斡旋を要請する。可能であれば、必要なチーム数、期間、優先される業務についての情報を提供する。
政令指定都市の場合は、まず当該都道府県または他の市町村に応援を要請する。

2)厚生労働省は、派遣都道府県に対して派遣の斡旋を行う。

3)派遣都道府県の本庁担当者は、管下のDPAT統括者と協議し、派遣可能日程を厚生労働省に回答する。
必要に応じて、当該都道府県に所属する政令指定都市に対して応援を要請する。

4)厚生労働省は、派遣都道府県等DPATの派遣先(都道府県)を決定する。

5)被災都道府県は、派遣都道府県等DPATの活動地域(市町村)を決定する。

6)派遣都道府県等DPATは、活動内容、活動場所、スケジュール等を被災都道府県と協議し、速やかに支援に入る。

■厚生労働省を介さず、派遣要請を行う場合
1)被災都道府県の本庁担当者は、管下のDPAT統括者と協議し、派遣都道府県に対し、DPATの派遣を要請する。
政令指定都市の場合は、まず当該都道府県または他の市町村に応援を要請する。

2)派遣都道府県の本庁担当者は、管下のDPAT統括者と協議し、派遣可能日程を被災都道府県に回答する。
必要に応じて、当該都道府県に所属する政令指定都市に対して応援を要請する。

3)被災都道府県は、派遣都道府県等DPATの活動地域(市町村)を決定する。

4)派遣都道府県等DPATは、活動内容、活動場所、スケジュール等を被災都道府県と協議し、速やかに支援に入る。

注)被災都道府県等が管下のDPATを派遣する場合は、以下の「被災都道府県内の支援で完結する規模の災害の場合」と同様の流れでDPATを派遣する。

◆被災都道府県内の支援で完結する規模の災害の場合
1)被災都道府県等の本庁担当者は、管下のDPAT統括者と協議し、DPATの派遣の必要性を検討する。

2)被災都道府県等は、被災都道府県等DPATの活動地域(市町村)を決定する。

3)被災都道府県等DPATは、活動内容、活動場所、スケジュール等を被災地域の担当者と協議し、速やかに支援に入る。

●DPAT派遣までの流れ

東日本大震災のような大規模災害時には、被災地域からの派遣要請がなされるまでに時間を要したり、被害が甚大なために派遣要請を行えない場合があります。その場合は、国が被災都道府県からの派遣要請を待たずに、派遣都道府県等に対して応援を要請する可能性があるため、派遣都道府県等は、DPAT統括者の判断により、必要に応じて、DPAT派遣のための待機を関係機関へ要請することが望ましいとされています。

DPATの活動3原則:スリーエス(SSS)

自己完結型の活動:Self‐sufficiency
移動、食事、通信、宿泊等は自ら確保し、自立した活動を行うこと。また自らの健康管理(精神面も含む)、安全管理は自らで行うこと。

積極的な情報共有:Share
被災・派遣自治体の災害対策本部や担当者、被災地域の支援者、及び他の保健医療チームとの情報共有、連携を積極的に行うこと。

名脇役であれ:Support
支援活動の主体は被災地域の支援者である。地域の支援者を支え、その支援活動が円滑に行えるための活動を行う。ただし、被災地域の支援者は被災者でもあることに留意すること。

DPATの活動の終結はいつ?

DPAT活動の終結は、DPAT活動における処方数、相談数等の推移を評価しながら、被災地域の精神保健医療機関の機能が回復し、かつDPAT 活動の引継ぎと、その後の精神保健医療ニーズに対応できる体制が整った時点を目安として、被災都道府県がDPAT都道府県調整本部の助言を踏まえて決定されます。終結を決定する際は、被災都道府県の精神保健医療関係者等を招集した会議を行い、その後の災害精神保健医療体制について関係者の合意を得ることが望まれます。また、現地のニーズに合わせて終結後のフォローアップ体制も検討し、場合によっては長期に渡ることもあります。

<これまでの主な活動期間>
平成26(2014)年8月に発生した広島土砂災害では約2か月半、平成26(2014)年9月に発生した御嶽山噴火災害では約10日、平成27(2015)年9月に発生した関東・東北豪雨災害では約1か月、平成28(2016)年に発生した熊本地震では約半年の期間、DPATが活動していました。

 

今月初旬は大阪での台風被害、北海道での地震災害と大きな災害が2つもありました。
被害に遭われた方々へ、心よりお見舞い申し上げます。

各地で、また、思いもよらないような災害がたくさん発生していますね。
先日参加させていただいた「災害看護学会」で兵庫県立大学院減災復興政策研究科の室崎益輝先生がおっしゃっていた言葉が印象的でした。
「正しく恐れて、正しく備える そのために正しく学ぶ」
これからまた、どのような災害が私たちに降りかかるか分かりません。しかし、いざというときのために備えて、あわてず、助け合えるよう正しい知識を身につけておきましょう。