つぼみのもっと知りたい!災害看護

先日、つぼみは8月10・11日に神戸国際会議場で開催された『日本災害看護学会』に参加してきました! 災害看護に関するお話をたくさん聞けてとても勉強になりました!
今回はその中で、つぼみが参加させてもらったワークショップのひとつを紹介します☆

 
ワークショップ 『看護力・看護ケアで災害関連死から生命を守る』に参加して……

口腔ケアと災害関連死が関係している!?

みなさんは「災害関連死」という言葉から何を思い浮かべますか? 恐らく、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)がまず浮かぶのではないでしょうか。

災害関連死が課題として提示され始めたのは、1995(平成7)年1月17日に発生した阪神・淡路大震災後からです。災害が直接的な原因となる死亡ではなく、避難所や仮設住宅などでの生活環境からくる過労・心労・ストレスによる疾患や自殺、避難所での感染症の蔓延、慢性疾患の増悪による心不全や心筋梗塞、そして肺炎など、震災が間接的な原因になっている死亡のことを災害関連死と言います。この災害関連死は「防ぎえた死」や「助かった、助けられた命」とも言われており、現在も様々な側面から災害関連死の予防・防止活動が行われています。
阪神・淡路大震災での災害関連死のうち約24%が肺炎と報告されています。これは、避難所での生活によるストレスや十分な休息、栄養が摂れないことによる免疫低下、また、インフルエンザなど感染症の蔓延とともに、水不足で口腔ケアができず誤嚥性肺炎の発生につながった可能性があると言われています
神戸常盤大学短期大学部で歯学・口腔外科を専門とし、指導している足立了平教授は、阪神・淡路大震災で被災、支援活動を経験した中で「命を守る歯科」をモットーに、誤嚥性肺炎を防ぐ意味から、口腔ケアの重要性と歯科を交えた支援活動の必要を訴えています。「口腔ケアは肺炎の40%ほどの予防のカギを握っており、生命を守るケアの一環として災害時の口腔保健活動を行う必要がある」と指摘しています。
こうした足立先生の活動を基盤とし、NPO法人災害看護支援機構(DNSO)は今回のワークショップで口腔ケアの演習を開催していました。

『NPO法人災害看護支援機構では、この「災害関連死」の問題を深刻に受け止め、昨年1年かけて「災害関連死を防ぐために私たち看護職ができること」について連続講座を開催し専門家からの学びを深めてきました。例えば、高齢者に多いと言われる誤嚥性肺炎の予防には、口腔ケアを行うことで肺炎は40%、死亡率は60%防げるということです。暮らしと人々の健康を守ること“看護者と看護力”によって「災害関連死を防ぐこと」は可能であるということを改めて痛感いたしました。』(日本災害看護学会誌第20巻1号 第20回年次大会講演集P122より一部抜粋・原文ママ)

日本災害看護学会2日目 8月11日(土)
NPO法人災害看護支援機構(DNSO)企画
ワークショップ 『看護力・看護ケアで災害関連死から生命を守る』

配布された物品
・口腔清拭シート
・スポンジブラシ
・医療用ゴム手袋
・ティッシュ
・口腔ケア用ジェル(1回分)
・うがい用の水(1回分)

2人1組になって演習スタート! つぼみも現役の看護師さんとペアを組ませていただきました!

(1)まずは、唾液をたくさん分泌させるためのマッサージ


唾液には抗菌・浄化作用があるので、たくさん分泌させることで、水が少ない中での口腔ケアを手助けしてくれます。

(2)シートをつかっての口腔ケア


このようにシートを利き手の人差し指を覆うようにくるくると巻き付けます。そして、反対側の手の指で相手の口角を少しだけ引っ張りながら、シートを巻いた指で口の中を歯並びに沿って優しくゴシゴシ! 最後に舌の汚れも拭き取ります。

・このとき、下の奥歯と頬の内側の溝の部分に溜まった汚れも掻き出すのを忘れずに。
・力を入れすぎず、あごに負担がかからないように優しく。
・口腔ケア用のシートが手元に無くても、清潔な布やハンカチを湿らせて代用することもできます。
被災の際、歯ブラシが手元に無かったときの口腔ケアに非常に有効です。

(3)スポンジブラシを使っての口腔ケア


スポンジを水で湿らせ、回転させながら歯並びに沿って奥から手前へ優しく磨いていきます。この時、舌の汚れも拭き取るようにします。最後に口腔ケア用ジェルをスポンジに含ませ、再度同じように奥から手前へ歯並びに沿って優しくなでるように磨いて完了です。

・相手の口の奥にスポンジを突っ込み過ぎないように注意すること。
・スポンジに水を含ませ過ぎてしまうと、口の中で滴った水を誤嚥してしまう恐れがある。スポンジを水で湿らした後は、水気をさっと切ること。
スポンジに含んだ少量の水で、口腔内を十分に湿らせたままケアすることができます。

(4)歯ブラシを使っての口腔ケア

歯ブラシを水で濡らして、歯と歯の間の汚れをしっかり取るように磨いていきます。磨きながらティッシュなどで小まめに歯ブラシの汚れを拭き取ります。
最後に少量の水を口に含み、うがいをしてすすぎます。マウスウォッシュなどがある時は、水代わりとして最後の仕上げで口をすすぐのも良いです。

・もし避難所で水道や、口に入れられる水が無く、ペットボトルのお茶しか手元になかったとしても、お茶は殺菌作用があるので、十分うがいの役割を果たしてくれます。
少量の水でも、最後のすすぎ用の水さえあれば(約15~30ml程度)口腔ケアはできます

入れ歯の場合も

高齢者の方は人前で義歯をはずすことに抵抗があるようですが、汚れた細菌が付着したまま義歯を装着していると、やはり誤嚥性肺炎の恐れが高まります。洗浄剤が手元になくても、食後はきちんとはずして、ティッシュなどで汚れをふき取るようにすることで誤嚥性肺炎を防ぐことができます。

 

非常持ち出し袋(防災グッズ)には「歯ブラシ」を!!

水・非常食・常備薬・懐中電灯などなど……非常持ち出し袋にはいろいろな物を入れていることかと思います。でも意外と忘れがちなのが「口腔ケアグッズ」です。歯ブラシ、歯磨き粉、コップ、マウスウォッシュ、必要な方は入れ歯洗浄剤と入れ歯ケース、その他、必要に応じて口腔ケア用清拭シートやスポンジブラシなど、口腔ケアグッズも入れておきましょう!

参考:日本歯科医師会 災害歯科医療対策
取材協力:NPO法人災害看護支援機構

 

つぼみが参加してみての感想……
まず、災害関連死と口腔ケアが繋がっていたことに驚きでした! たしかに、普段自分で行っている歯磨きって、うがいや歯ブラシの洗浄などでたくさん水を使っているし、すこしぐらい磨かなくてもたいしたことないだろうって思って、万が一、水が貴重な場面に遭遇した際はついつい遠慮したり後回したりしてしまいそう……。でも、被災した際も口腔ケアはとても大切だということをしることができました。今回参加させていただいたワークショップで、実際に本当に少ない水で口腔ケアをしてみたけど、いつものケアと全然変わらないぐらいお口の中がスッキリしました!
そして、普段からのケアもとても大切なので、みなさん毎日のケアも忘れずに!