先日、東京新聞に『出生数 2年連続100万人割れ』という記事が掲載された。
記事によると……2017年に生まれた赤ちゃんの数(出生数)は統計開始以来、最小の94万6060人(前年比3万918人減)となり、2年連続で100万人を割り込んだことが6月1日、厚生労働省の人口動態統計(概数)で分かった。(略)厚労省の担当者は「20代~30代の女性が減っているため、すぐに出生数を増やすことは難しい。不安を持たずに出産できるよう支援を充実させる必要がある」としている。母親の年代ごとの出生数は45歳以上を除く全ての世代で減少。特に「25~29歳」「30~34歳」の世代では、それぞれ9千人以上減った。第一子出生時の平均年齢は前年と同じ30.7歳で晩産化の傾向が続いている。都道府県ごとの合計特殊出生率は沖縄の1.94が最も高く、宮崎の1.73、島根の1.72が続いた。最も低かったのは東京の1.21。出生数が死亡数を上回ったのは、沖縄だけだった。

ということで、今回は「出生率」に注目して解説!

例えば『出生率』について、過去に国試ではこのように出題されていた!!

第103回追加試験 午後・38
15歳から49歳までの女性の年齢別出生率の総和はどれか。
1.総再生産率
2.純再生産率
3.出生率
4.合計特殊出生率

正解 4

この問題を新聞記事・ネットニュースから読み解く!!

人口に関する問題は国家試験において、色々な形で出題されています。死亡数や総人口、そして今回のテーマのような出生数、出生率など、何かしらの形で出題されています。少しでも点数の取りこぼしを防ぐためにも必ず押えておきたいところだと思います。そして、そんな国試に直結するワードがこのように新聞に掲載されているということを改めて感じますね。

上記の問題の正解肢である、合計特殊出生率とは、1人の女性が生涯に産むと推測される平均子ども数のことです。この合計特殊出生率は第1次ベビーブーム(1947~1949年)には“4”を超える数値でした。そして、現在は冒頭の記事にあった通り、都道府県ごとではありますが、沖縄の“1.94”という数値が1番高い数値となってしまっています。ちなみにこの合計特殊出生率が“2.1”以下になると現在の人口水準を維持できなくなるといわれています。つまり、将来、人口は今よりもずっとずっと少なくなってしまうということです。
そこで、次にこの『出生率』からみる、これからの人口の変動といったところに注目してみたいと思います。

 

単純に子どもが減った? いやいや、それだけじゃないって!

冒頭にあった出生率に関する記事で、出生に関する数値だけでなく、他の数値にも着目しながらこの問題を取り上げている記事が毎日新聞に掲載されていました。これをみると、今抱えている問題がどういったものであるのかが浮き彫りになってくるようで、とても分かりやすい記事でしたので、ご紹介しましょう。


厚生労働省は1日、2017年の人口動態統計を公表した。合計特殊出生率は前年より0.01ポイント低い1.43と、2年連続で低下した。(略)
一方、出生数は統計開始(1899年)以降で最少、死亡数は戦後最多となり、出生より死亡が多い「自然減」は11年連続、減少幅は39万4373人と過去最大だった。
出生率について年代別に05年と比べると、20代が低下し、30代は大きく伸びている。30代での出産が一般化し、1人が産む子どもの数は大きく伸びにくくなっている。(略)
出生数の85%を占める25~39歳の女性の数が前年比2.5%減の1009万1029人(前年比26万2964人減)となり、この世代の人口減少が出生減少の大きな要因とみられる。(略)
厚労省は「25~39歳の女性は今後も減少が続くとみこまれ、出生数の減少は避けられない」と指摘している。
---毎日新聞  2018年6月2日(土)

「出生数の85%を占める25~39歳の女性の数」が減少しているというのは、我々が思っている以上に大変な事態なのかもしれません。また、それに加えて、“出生率が低くなっていく一方”というのはどういうことに繋がっていくのか、次の記事と絡めて説明していきたいと思います。

 
 

子どもが減った? いやいや日本人が減ってるって!

世間的に見た人口に関する大きな問題点といえば、恐らく「高齢化」だと思います。この高齢化が無視できない数字として、この春に発表されていたのをご存知だったでしょうか。


総務省が13日公表した2017年10月1日時点の人口推計によると、外国人を含む総人口は1億2670万7千人で、前年から22万7千人(0.18%)減った。マイナスは7年連続。65歳以上の高齢者は3515万2千人で全体の27.7%を占め、割合は過去最高を更新した。人口減少は40都道府県に及び、増加は7都県。増加率は東京都の0.73%が最高で、一極集中が続いている。
(略)人口が増えた7都県は東京、埼玉、千葉、神奈川、愛知、福岡、沖縄で前年と同じだった。ただ出生数が死亡数を上回る「自然増」は沖縄だけで、他は人口流入による「社会増」が自然増を補った。東京と愛知は前年の自然増から自然減に転じた。
---東京新聞  2018年4月14日(土)
 
 

この記事を読めば分かると思いますが、日本の人口の割合で、65歳以上の高齢者の割合が増えているのです。そして、ひとつ前の記事に戻ってみましょう。「出生数の85%を占める25~39歳の女性の数」が減少しているのです。これだけを見ても、少子化はますます進み、高齢化もどんどん進んでいくのではないかということが、容易に想像がつきます。
47都道府県の内、40の道府県で人口が減り、増えた7都県でも沖縄以外は海外からの人口流入による「社会増」である、ということはやはり単純に日本人の数というのは圧倒的に減っています。そして本来ならば、それを打開出来るはずの出生数の85%を占める25~39歳の女性の数が減ってしまっている……。
この大きな大きな影響を受けてしまうのは、今現在、数が減り続けている子どもたちになってきてしまうのです。

 

子どもが減って、人口が減って、どうなっちゃうの……

例えば、「高齢化」という部分だけの問題点を挙げるとするとどんなことがあるでしょうか。いくつかある内の一つに大きな問題として、「医療費」があります。やはりどうしても高齢者というのは若者と違って病院とは切っても切れない関係になってきてしまいます。そして、その医療費というのは、決して無料ではなく、国からの援助が大きく関わってきます。

それでは逆に同じ「医療費」という問題を「少子化」という観点からみてみましょう。国に収める税金等から捻出される医療費が、少子化が進むことにより、税金を払う人自体が減ってしまい、思うように賄いきれなくなってしまうかもしれません。もしくはそれを補おうと、今の子ども達は納税の金額的にかなり無理をしなくてはなりません。

我々が高齢者になり、今の子ども達が大人になった時、困るのは我々でしょうか。それとも大人になった子ども達でしょうか。僕が思うに、その両方だと思います。
「出生率が減る」「人口が減る」というのは、ただ単純に、人が少なくなるというだけではないのです。そこには色々と複雑な問題が潜んでいるということに今から1人ひとりが気付き、考え、行動をしなくてはならないのだと思います。
「人口統計」といってもただただ大きな数字にしかみえないかもしれません。ただ、よ~く覗き込んでみてみると、現代の社会を写し出しながら、社会の多様な面(社会問題を含む)を表しているのものなんだということがより多くの人に伝わって欲しいなと思います。

イラスト:Aokimac
 

おまけ!今回のテーマに関連するワードの過去問題も見てみよう!

出生:
第96回 午前問題36
第102回 午前問題21
第104回 午後問題1
 
人口:
第98回 午前問題65
第102回 午前問題1
第103回追加試験 午後問題1
第104回 午前問題1