個別性を考えた看護計画ってどうやって立案したらいいのだろう。
看護学生 Tさん
看護師になりたいという夢をかなえるために実習で奮闘の毎日。
これで解決!
半泣き あらため 美咲さん
今年3年目を迎える看護師。学生時代を懐かしく思い出しながら、
相談に来る学生にアドバイスを送る。
先月の事例で振り返ってみましょう。
全身性エリテマトーデスでステロイド内服中に、突然の腹痛で入院したAさん(女性・28歳)。腸管穿孔で一部腸を切除、ストーマ造設術を行いました。術後3週間経過し、徐々にストーマ離開部分も上皮化してきています。経口摂取の量も増え、シャワー浴も許可されていますが、突然の入院や手術、ストーマ造設に対するショックがまだ大きく、看護師がストーマケアをする時は無言になり、なかなか自分で触ることができません。
前回あげた潜在的な看護問題のなかで、【突然のボディイメージの変化によりストーマの受容ができていない】という看護問題をとりあげます。
Step1 看護目標を決める
まずは看護目標です。看護目標とは、看護計画を実施することで期待される結果(ゴール)を指します。つまり、患者さんにどうなってほしいか、を決めるのです。
最初に、3週~4週を目安にした長期目標を考えてみましょう。
この時、初めからきちんとした文章にしようとすると難しいかもしれません。まずは、ぼんやりしていてもいいので、5W1Hや主語・術語・修飾語で分けて書いてみましょう。
この時のポイントは、アセスメントをもう一回読み直すこと! その中にすべてのヒントは隠されています。
・述語→ストーマを受け入れることができる
・状態→退院後の生活に合わせて
・時間→退院前までに
↓ これを文章化すると、看護目標が決まります。
【退院前までに、Aさんの退院後の生活に合わせて、(Aさんが)ストーマを受け入れることができる】
Step2 短期目標を決める
長期目標を決めると、それをクリアするために必要な一回り小さな目標(=短期目標)が見えてくるのではないでしょうか。
・ストーマを見ることができる
・(直接でなくとも器具の上からでも)ストーマを触ることができる
・ストーマパウチにふれて入浴ができる
・ストーマに対しての思いを表出できる
・食べるものによって便の性状が変わることを体感できる
などなど。
Step3 OP・TP・EPを決める
次に、短期目標をクリアするための具体的な計画となるOP(観察計画)、TP(実施計画)、EP(教育および指導計画)を検討していきます。
この時のポイントは、OPを書くとき、その計画をあげた根拠を自分の中で明確にしておくこと! その後のTP・EPがわかりやすく、個別性に配慮したものにできます。
OP | 根拠 |
---|---|
(1)周囲の発赤・熱感・疼痛・腫脹の有無の観察 | ストーマ周囲の離開部に感染のおそれがある。 Aさんの場合ステロイドを内服しているので、感染リスクが高い。 |
(2)排便の性状を観察 | ステロイド内服による、ストーマ周辺の皮膚トラブルの回避。 ストーマ周囲からの便の漏れなどをできる限り少なくすることで、Aさんのストーマに対するマイナスイメージの軽減。 |
ただOPを羅列するのではなく、このように患者さんの身体的・心理的・社会的背景のアセスメントを基に、そのOPの根拠を明らかにしていくと、その後のTP・EPにつながりやすくなります。また、たとえ一般的なOPであっても、患者さんをしっかりアセスメントし、それを基にした計画であれば、それは個別性に配慮した看護計画になります。
看護過程や看護計画についてのテキストには、「もう悩まない」とか「コツがわかる」などといった題名がついたものがたくさんあります。こういう本を参考にすることも一つの方法ですが、悩む過程はとても大切な時間です。自分で悩み、単語の羅列でもよいのでまず言語化すること、そして何度もアセスメントを振り返ること。患者さんを看護の視点で考えようと思う気持ちから、個別性は生まれます。その後に、テキストなどを参考に肉付けしていけば、その疾患で考えられる共通点もきちんと含まれる看護過程が展開されるでしょう。
(テキスト:sakura nurse イラスト:中村まーぶる)