看護学生には看護学生ならではの悩みがあるんです。勉強や実習、国試…考えるだけで不安がいっぱい。
でもなんとかこの状況を脱したい!つまずきがちなテーマを一緒に考えていきましょう。


患者さんから情報収集どこからまとめればいいのか分からない

看護学生Sさん

看護学生 Sさん
看護師になりたいという夢をかなえるために実習で奮闘の毎日。

老年看護学の実習や成人看護学の実習(慢性期)では、入院してから数日、既往歴もほとんどない患者さんを受け持つことはまれ。患者さんから情報収集をする時に、なんにもなくても困るけれど、逆に情報がありすぎてもどこからまとめればいいのか分からなくて困ります。

これで解決!

半泣きあらため美咲さん

半泣き あらため 美咲さん
今年3年目を迎える看護師。学生時代を懐かしく思い出しながら、
相談に来る学生にアドバイスを送る。

情報がありすぎて混乱する気持ち、よくわかります。
私は最初に、基本から確認をしていきます。
まず1)名前、性別、年齢。
そして次に2)入院までの経過と既往歴をみます。
それから、患者さんの現在の3)ADL(日常生活動作)を確認します。
基本的な情報の次は、4)検査データです。入院時と直近のデータをチェックし、たくさんの数値の中から必要なものを取捨選択します。
医師から患者さんやご家族へ病状説明している記録、転科転棟の場合は医師・看護師のサマリー(資料)などもわかりやすくまとまっているかもしれません。では今度は、具体的な事例で考えてみましょう。

事例

全身性エリテマトーデスでステロイド内服中、腹痛で入院したAさん(女性・28歳)。その後CT撮影して腸管穿孔が見つかり一部腸を切除、ストーマ造設術を行いました。術後肺炎で加療し、落ち着いてきましたが、ストーマの離開があり再度縫合しています。ADLは自立しており(日常生活自立度A)、検査データは次のとおりです。
・CRP(入院時)15.98mg/dL→(受け持ち時)3.02mg/dL
・白血球(入院時)12000/μL→(受け持ち時)8500/μL
・アルブミン(受け持ち時)2.8g/dL
・血清総蛋白(TP・受け持ち時)6.0g/dL
・ヘモグロビン(受け持ち時)9.0g/dL

まず基本から確認をしていきます。
1)名前、性別、年齢  → Aさん、女性、28歳。
2)入院までの経過と既往歴 → 全身性エリテマトーデスでステロイド内服中に腹痛で入院。
3)ADL(日常生活動作) → 自立している。

そして4)検査データです。Aさんは、内科から外科に転科しており、様々な医師や看護師の記録、血液検査データや画像データが入力されています。どのように情報の取捨選択を行えばよいでしょうか。

この事例において、上記の検査データがなぜピックアップされたのかを考えてみましょう。

1)CRP(基準値0.3mg/dL以下)と白血球(基準値4000~8000/μL)
理由:術後感染兆候の指標。
術前に腸管穿孔による感染で急激に上昇していたCRPや白血球が、術後1週間程度して、一旦低下してから再上昇した場合、なんらかの感染症を疑います。

2)アルブミン(基準値4.0~5.0g/dL)、血清総蛋白(TP・基準値6.5~8.0g/dL)、ヘモグロビン(基準値男性14~18g/dL、女性12~16g/dL)
理由:栄養状態の指標。
基準値よりも低い場合は、創治癒遅延が考えられます。

データの取捨選択には明確な理由があるのがわかりますね。
次に、今顕在している看護問題、そして潜在的な看護問題を分けてみます。

この事例でいうと、今顕在している看護問題は、ストーマ再離開と肺炎再発のリスクです。そのための情報収集としては、
◎ステロイド投与および栄養状態低下に起因するストーマ再離開のリスク
ストーマに関する医師看護記録を見てみる。
◎肺炎を再発するリスク
現在の呼吸状態や嚥下機能、安静度や過去の喫煙歴、呼吸器疾患の有無を調べる。
といったことが考えられます。

そして潜在的な看護問題、そのための情報収集としては次のことが考えられます。
◎ストーマ造設によるボディイメージの変化
ストーマに対しての受け入れ、自身でストーマ交換ができるのか、手伝ってくれる家族がいるのかを看護記録やプロフィールから見てみる。
◎ステロイド投与に起因する易感染状態
検温表からの発熱などバイタルサインの変化や、呼吸器尿路、ストーマ創部など起因となりそうなものを挙げる。

こうしてみると、ぼんやりしていた情報収集の中心が、くっきりしたものになってきたのではないでしょうか。

また、事前学習で疾患から考えられる看護問題をあらかじめ整理しておくと、受け持ちの患者さんと比較して、頭の中も整理しやすくなります。

情報収集はパズルのピースを集めるようなもの。看護の過程展開を考えるために、すべてのピースが集まればすっきりしますが、集めることが本来の目的ではありません。あくまで目的は、その患者さんにどんな看護が必要かを明確にして、適切な看護を提供するため。家族や社会背景など、いくつもの問題が複雑に絡み合っている場合も考えられますが、患者さんに必要な看護は何か、という視点で見ることを心がけましょう。個別性の看護という点では、ベッドサイドからの情報収集なども大切にしたいですね。

<関連リンク>「ハンサム看護師、あねごに学ぶ。|ベッドサイドは○○の山の巻」

(テキスト:sakura nurse イラスト:中村まーぶる)