<part2>患者さんの想いを聴き、他職種に伝えていく

ここまでのお話で、言語聴覚士の方は、患者さんとの接点が濃密だな、と感じました。
逆に、看護師との接点はどの程度あるものなのでしょうか。

濃度は濃いのかもしれませんが、わたしたちリハビリ職が患者さんに関わる時間は、ほんの一部です。
看護師さんはその何倍もの時間を患者さんと過ごしています。なので、看護師さんからは、患者さんの病棟での様子をいつも教えていただいています。
また、リハビリの過程で、それぞれの患者さんがその患者さん特有のコミュニケーション方法を使うことがあります。
そういったコミュニケーション方法は、看護師さんにも具体的なやり方を伝達し、実際にそのコミュニケーション方法で患者さんとコミュニケーションをとってもらいます。看護師さんが気づいた改善点があれば教えていただき、日常生活で実際に使えるコミュニケーション方法を一緒にみつけていきます。
食事面でいうと、患者さんが安全に食べるために心がけるべきことや介助方法をお伝えして、実践していただきます。食事の時の患者さんの様子を教えいただいて、患者さんが安全にたくさん食べられる食事の形態や方法を一緒に考えていきます

まさしく「協働」ですね!
どんなポイントに注意して、看護師と連携をされていますか。

言語聴覚の専門用語は使わず、理解してもらいやすい簡単な言葉で伝えるようにしています
確実に伝達できるように、たくさん言わずに守ってほしいことを1,2点だけ伝えるようにしています。また、看護師さんは多く勤務していますが、一人一人が大切な仲間です。なるべく名前で呼ぶようにしています。
看護師と連携イメージ
(写真はイメージです)

看護師と協働して対応された患者さんで、印象深い方はいらっしゃいますか。

パーキンソン病を患っていて、胃瘻から栄養をとっていた患者さまがいらっしゃいました。
重度の嚥下障害があり、誤嚥性肺炎も繰り返していますが、口から食べたいという想いが強い方でした。安全な姿勢をとった上で、アイスクリームやゼリーを数口なら安全に食べられると判断し、主治医の許可をとりました。
看護師さんに食べるときの姿勢や介助方法を伝え、私と看護師さんが交代でその患者さん関わることで、その患者さんは毎日数口ですが安全に食べることができました!
1週間ごとにカンファレンスを行い、お互いに感じていることをすり合わし、修正することで、その方は誤嚥性肺炎になることなく、ご自宅に帰られました。

一つの結束の強いチームとなった結果、無事故で患者さまの退院を迎えることができたのですね。

ええ。言語聴覚士は、医療職の中で患者さんの話に耳を傾ける時間が多い職種だと考えています。患者さんの想いを聴き、他の職種の方に伝えていくことができると考えています。話すこと、食べることに関して、多職種と協働して、患者さんの希望に沿うものを提供していきたいと思っていますね。

この患者さんのように、意欲や目標がしっかりしている方はいかがですか。

この患者さん一人に対してではないのですが、患者さんの「今より良くしたい」「話したい」「食べたい」という強い想いが、私の言語聴覚士としての意欲になっています。看護師さんでも、同じことを思ってくださる方がいらっしゃるかもしれませんが、「この方の力になりたい」と思う患者さんの存在自体が、私のやりがいそのものだと思っています

看護師を目指す学生さんたちに、一言お願いします。

看護師さんはどの職場でも患者さん、ご家族、多職種、地域の方など、本当にたくさんの人と関わって仕事をする職種だと思います。知識だけでなく、言葉遣いや気遣い、臨機応変に対応していく力などさまざまな能力が必要になってきます。勉学に励みつつ、違う世代の方と関わったり、今しかできない経験をしたりすることも将来の糧になると思います。あなたが看護師さんになることを待っている人は、たくさんいますよ!!

今日はありがとうございました!