<part2>褒められたいからやっているわけではないんです。

介護福祉士として働くうえで大切にされていることは何ですか。

僕個人の意見ですが、介助が必要な居住者の方を、いかに人としてみるか、人として生活してもらえるかが支援者として必要なのではないでしょうか。拘束時間や給料の低さが原因で現場は常に人材不足です。また、毎日が時間通りの繰り返しで業務はカツカツになりがちにもなります。その中でも、いかに「俺、生きてるぜ!」「私、生きてる!」と思ってもらえるかを大切にしています。

人との関わりがお仕事のやりがいにつながっているように感じます。

そうですね。人のお世話をしていることで周りからは偉いと思われます。それでモチベーションが上がったりがんばろうと思ったり、褒められて悪い気分ではないです。でも、褒められたいからやっているわけではないんですね。「やってあげてる」って考えると、それが自分に返ってきて苦しくなってしまいます。仕事を続けるには、いかに自分なりのやりがいを見つけるかだと思います。

かなり大変なお仕事だと思います。それでも続けていけるのはなぜでしょう。

人が大好きということですね。障害者である居住者の方は、裏も表もなく、嘘をつかないというか、つけないというか、その人の正直なところが見えます。嫌なものは嫌ということを、言語や態度で発する人もいればまったく発しない人もいる。でも、本当のこと言ってるなとか、試してるのかなとか、その人の考えがなんとなくわかります。生まれも育ちも違うし、それぞれの事情もあるし、めちゃめちゃめんどくさいですけど。

やはり、人なんですね。では、今後やってみたいことはありますか。

研修を受けて、喀痰吸引のような医療ケアもやりたいですね。医師や看護師さんたちが常駐ではないですし、居住者の方といちばん接しているのは自分たちだからという想いもあります。それと関連しますが、看護師さんには、医療面だけじゃなく食事のような生活分野のケアもしてほしいですね。僕が勤めている施設は、生活支援は介護福祉士の業務、看護師は医療面の補助というように、はっきり分かれています。確かに越えてはならないラインはあるけれど…。

療養上のお世話も看護師の業務のひとつですからね。

はい。それから、「白衣の天使」といわれているように、優しい人でいてほしいですね。なにもないときでも定期的に顔を出したり、話を聴いてくれたり。やっぱりいちばんは心のケアです。施設に入ると人恋しくなる方が多いんです。そういった方が心を閉ざしてしまわないように、「気にしているよ、なにかあったら言ってね」っていう意識が必要だと思います。

それは常に心がけたいことですね。

看護師さんだけではなく、後輩たちにも「人の話を聴くこと」の重要性は日々伝えています。忙しいと、居住者の方が話す前に自分が話をしてしまったり、緊急のナースコールの場合でも「どうしました?」と聴かずに「(緊急なのは)わかっています」と対応してしまったりします。業務に流されてしまいがちな現状はありますが、僕たちが後輩たちに教えていかなくてはいけないと思っています。

「話を聴くこと」の大切さは、どのお仕事でも大切にしなくてはいけないことだと思います。

失敗する人間はいいんですよ。僕もいつも失敗しているので。不器用な人間のほうがむしろいい。器用なタイプの人は、日々の仕事がルーチン化してしまい、それを「当たり前」だと勘違いしがちです。それは、こわいなと思います。
それと、常に「(居住者に)何かあったんじゃないか」という意識を持つことと、「仕事は一人でやるな」というのは、後輩に伝えています。
特に、僕が働いている施設は、全員が介護福祉士ではありませんし、資格を持ってない職員もいます。一人で仕事をすると、自分の事情・常識の範囲で判断してしまうこともあると思います。いかに居住者の現状を把握するか、それは、一人ではないほう多角的に把握・判断できると思うんです

後輩の育成も、深澤さんの重要なお仕事ですね。
今日は、看護にも共通する患者さんとの関わり方のヒントをたくさんうかがうことができました。ありがとうございました!

(写真はイメージです)