今後、ますます重要視されてくるチーム医療。
コメディカルの分野で働くプロに、看護師とどのように関わって仕事をしているかを伺いました。

今回ご登場いただいたのは、言語聴覚士として働くKさんです。病院内での言語聴覚士のお仕事、看護師との連携などについてお話を伺いました。

【言語聴覚士】
1)言語や聴覚に障害のある人や発達の遅れ、嚥下障害などを持った人に対して、その発現メカニズムを明らかにし、検査・評価をおこなった後、機能の改善・維持、代わりとなるような訓練をおこなう。
2)言語聴覚関連学部を持つ大学・短大・専門学校等で学び、国家資格を取得する。
3)リハビリテーション科、脳外科、耳鼻科、小児科、神経内科などの病院内のみならず、リハビリテーション施設、保健所、特別支援学校、障害者福祉施設、高齢者福祉施設など、さまざまな場で活躍できる仕事。

【Kさんプロフィール】
中学生の時、おじい様が脳卒中で植物状態に。お見舞いに行った際に、言語聴覚士がおじい様の口腔ケアをしている場面に遭遇、その先生から話を聞き、言語聴覚士に興味を持つ。
言語聴覚士養成課程のある大学で学び、学業だけでなく、ヘルパーのアルバイトをしたり、ボランティア活動をしたり、多くの人との出会いや豊富な経験を積む。卒業後、国立病院に就職し、現在も同じ病院で活躍中。


<part1>わかっていても、最後まで聴く!

言語聴覚士の方はさまざまな場所で活躍されていますが、Kさんの勤務先はどのようなところですか?

わたしは、病床数400弱の国立病院のリハビリテーション科に勤務しています。リハビリテーション科のスタッフは30名ほどで、言語聴覚士は7名常勤しています。
病院自体には回復期病棟もあり、脳外科や整形外科などもありますが、神経内科所属の医師が多くいます。

どのような患者さんの対応をされるのですか?

さきほど神経内科所属の医師が多いと言いましたが、その関係上、神経難病の患者さんを主に担当し、話すことと食べることのリハビリテーションを提供していきます。

具体的に教えてください!

まず、話すことに関しては、患者さんと周囲の人が少しでもスムーズに会話ができるように、問題点を評価し、訓練プログラムを立てて、実際に訓練をしていきます。
例えば、病気の症状として、声が小さくなったり、ろれつが回りにくくなったり、病気の進行によって声が出なくなったりします。その方の言葉を聞き取りにくくしている原因が、声の小ささであれば、大きな声を出す訓練をする、声が出なくなった場合は、文字盤のような声に変わるコミュニケーション手段を導入する、という感じです。同時に、ご家族など周囲の人にも、その患者さんとスムーズに会話をするためのポイントなどをお伝えすることもあります。
食べることに関しては、安全に食べるために必要な工夫を提案したり、飲み込みや咳の力を強くする訓練を行ったりしています。工夫点は患者さんや周囲の人に伝えていきます。

患者さんの個別性に、かなりの違いがありそうですね。

そうですね。病状だけでなく、神経難病は病気が進行していくんです。その時期に適したコミュニケーション方法や食べ方の工夫を、患者さんやご家族さんに伝えていくことが大変であり、難しいと感じることもあります。

Kさんの一日は、具体的にどんな流れでしょうか。

朝は1時間弱、リハビリテーション科内のミーティングがあったり、電子カルテを閲覧したり、患者さんの様子を確認したりします。夕方から夜にかけては、その日の記録や書類作成、勉強会などがあります。
それ以外の時間は、ほぼリハビリテーションの実施時間です。午前で平均5人ほどの、午後で平均6人ほどの患者さんのリハビリを実施します。食事評価をすることもあるので、時には昼食の時間帯も業務についている時があります。

言語聴覚士として、働くうえで心がけていることなどありましたら、教えてください。

患者さんの「話したい」という意欲を大切にしたいので、たとえ患者さんが私に何を伝えたいのかがわかっても、患者さんが言い終わるまで最後まで聴くようにしています。リハビリテーションは患者さんの意欲があって初めて成立します。患者さんによっては、進行していく症状に対して不安を感じている方もいます。脳卒中で生活が一変して困惑している方もいます。押し付けではなく、その患者さんたちが「ちょっとやってみようかな」と思うまで、何度も会いに行ったり、寄り添ったり、ただただ傾聴したりと、ご本人の意欲を引き出す関わりを大切にしています。「この人になら話してもいいかな」と思っていただける人になれるよう努力をしています。
最後まで聴く
(写真はイメージです)