ううむ…むむむ…。そんなにいきんで大丈夫?
1 出血のリスクを減らすには?
血液凝固に関する検査データの2回目です。(前回はこちら。)
今回はまず、看護師国家試験で問われやすい出血傾向にある患者さんへの看護をみてみましょう。
1)医療処置時の注意点
血圧測定時はマンシェットの加圧は最低限に。
注射時の止血確認は念入りに。
医療器具の圧迫にも注意しましょう。
2)症状の緩和
例えば便秘時の怒責、強く鼻をかむ、激しい咳嗽が
脳出血や、気道出血、肺出血につながることも。
症状を緩和できるような看護を行うことで、
出血のリスクを減らしましょう。
3)口腔内出血の予防
固い食べ物、歯ブラシの選択には注意!
(口腔内の止血は困難です)
4)転倒予防
思わぬ転倒、打撲が皮下出血につながります。
周囲の環境はしっかり整えましょう。
2 さて、ここで前回の復習
血液の大原則、覚えていますか。
血液は血管外では固まり血管内ではよどみなく流れる!
前回、表で学習しましたよね。
血管内 | 血管内 | |
---|---|---|
血管内 | 凝固しない | 凝固する |
異常 | 凝固する | 凝固しない |
この大原則を守るために
1)血液凝固系
2)線溶系 の2つの働きがあることも学びました。
今回は2)線溶系の検査データをみていきましょう。
3 線溶系に関わる基準値をおさえよう。
A.フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)
血栓症・脳梗塞・心筋梗塞・線溶亢進・
悪性腫瘍・大動脈解離・播種性血管内凝固(DIC)など
基準値5.0μg/ml
特に臨床上問題なし
B.Dダイマー
線溶によりフィブリンが分解されて生じた物質のひとつ。フィブリンは血栓の一部なので、フィブリンが分解されたということはどこかに血栓があることを示します。
血栓症・脳梗塞・心筋梗塞・悪性腫瘍・
大動脈乖離・播種性血管内凝固(DIC)など
基準値1.0μg/m
特に臨床上問題なし
どこが国試に出題されやすい?
●まず、凝固に関わる流れは大まかでよいのでとらえられるようにしよう。
国試に出題されやすいのは血小板とプロトロンビン
血液疾患や、肝疾患などどういう疾患で異常になりやすいかみてみよう。その上で出血傾向にある患者さんに対する看護を理解しましょう。
実習で目にすることが多いのは、上記に加えてPT-INR、Dダイマーなど
なぜその検査をわざわざ行っているのか(背景にワルファリンの内服や重症感染症などがあるかも)考えると、疾患への理解も深まります。
5 過去問をチェックしよう。
第101回看護師国家試験 午後問題32
播種性血管内凝固〈DIC〉で正しいのはどれか。
1.フィブリノゲン分解産物〈FDP〉値の減少
2.血漿フィブリノゲン濃度の低下
3.プロトロンビン時間の短縮
4.血小板数の増加
解説
播種性血管内凝固症候群〈DIC〉は、なんらかの基礎疾患により、凝固系が活性化され全身の細小血管に血栓が多発する症候群。多発した血栓は線溶系で溶解されるが、原因が取り除かれないと次々に形成されるため、止血に必要な凝固因子と血小板が消費されてしまい出血傾向を生ずる。
1.× 血栓が溶けるため、フィブリノゲン分解産物の値は上昇する。
2.○ 血漿内のフィブリノゲンは、フィブリンを作るため消費され濃度は低下する。
3.× 凝固時間であるプロトロンビン時間は延長する。
4.× 血小板は血栓をつくるのに消費されて減少する。
さて、これで全11回の「あねごの検査データまるわかり。」はおしまいです。
最後にあねごから看護師をめざすみなさんへのメッセージを。
この一年間でさまざまな検査データの見方を学習してきました。いかがでしたか?
看護師国家試験では、基準値・異常値が提示され疾患名を問われるような必修・一般問題や、疾患名やその重症度、必要な看護を推察させるような状況設定問題が出題されます。
看護師になると、当たり前のように採血をし、その結果やそれに関する医師の診察記事から看護上のアセスメントを日々行います。また、私たちの日々の看護で観察し気づいたことを医師に報告し、その裏付けとして検査を行った結果が、診断、治療に影響を与えることもあります。診断をする時、治療効果の判定を行うとき、検査結果は非常に重要です。
検査結果を基準値内かそうでないかだけでなく、多角的にとらえることが出来るように思考する練習をすると、もっと理解が深まると思います。
国試を受験される方はもう一度全部読み返して復習しておきましょう。
(テキスト:sakura nurse イラスト:中村まーぶる)