国試に出る検査データには定番あり。
ひとつずつ覚えて得点アップをめざしましょう!

肝細胞イメージ

肝機能検査で広く用いられているよ。

1 肝機能のデータだけど…。

今回のテーマはASTとALT
看護師国家試験の過去問や健康診断結果などで
一度は目にしたことがあるでしょう。
前回に続いて肝機能の指標を示すデータです。
(参考:第5回「肝胆機能の指標 ビリルビン」はこちら)

健康な肝臓イメージ

ASTとALTは、どちらもアミノ酸の代謝に関わる酵素。
特にALTは肝細胞中に多く存在するので、
もしASTよりもALTのほうが異常値(高値)を示しているならば、
肝臓に疾患の原因があると推察できるデータになります。

傷ついた肝臓イメージ

しかし、ASTとALTは、
腎臓、肺、心臓、筋、血液など全身に分布しているため、
必ずしも肝疾患だけに関わるものではない
ということも頭に入れておきましょう。
(詳しくは5で解説します)

2 血の中に出てしまう!

正常な肝細胞が何らかの疾患で障害されると、ASTとALTが血中に出てしまいます。
そのため、血液検査をするとASTとALTが高い値になるのです。

肝細胞イメージ

なので正確には、肝機能の指標というより、肝細胞の障害の程度を示す指標ですね。
もし、肝硬変のように肝細胞の破壊がかなり進んでしまうと、壊れる細胞もない状態なので高値になりません。

3 基準値をおさえよう。

AST:10~40 U/L
ALT:5~45 U/L
だいたい50以下と覚えればOK。低い場合は問題ありません。

ちなみに
AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ の略です。

基準値イメージ

4 国試では?

看護師国家試験では、主に長文問題(状況設定問題など)のキーワード。
特に、肝疾患や心筋梗塞を示す指標として問われやすいので注目です。
細かい数値が問われることはまずありませんが、
何の疾患が疑われるかを知っておきましょう。
たとえばこんな形で出題されます。

出題イメージ

国試
第101回看護師国家試験 午後問題94

Aさん(52歳、男性)は、2か月で体重が7kg減少した。2か月前から食事のつかえ感があるため受診した。
検査の結果、胸部食道癌と診断され、手術目的で入院した。
入院時の検査データは、Hb9.5g/dl、血清総蛋白5.4g/dl、アルブミン2.5g/dl、AST〈GOT〉24IU/l、ALT〈GPT〉25IU/l、γ-GTP38IU/l、尿素窒素18mg/dl、クレアチニン0.7mg/dl、プロトロンビン時間82%(基準80~120)であった。Aさんの状況で術後合併症のリスクとなるのはどれか。
1.出血傾向(×)
2.腎機能障害(×)
3.低栄養状態(○)
4.肝機能障害(×)←ASTとALTどちらも基準値内なので×となります。

5 肝疾患以外にも注目!

実習

基準値が高くなると肝臓に影響が出るのは
もちろんですが、例えば心筋梗塞など、
肝臓以外にも大切な疾患がありますよ。

心筋梗塞イメージ

肝疾患急性・慢性肝炎、肝硬変、薬剤性肝障害、アルコール性肝炎など
心疾患心筋梗塞、心筋炎など
胆道・膵臓疾患胆石・胆道炎、胆嚢癌、総胆管結石、胆管癌など
筋疾患多発性筋炎、筋ジストロフィーなど

6 肝機能を示す指標は他にも…。

1)他の代謝酵素

LDH(乳酸脱水素酵素):糖代謝に関わる酵素。これもASTやALT同様に全身に分布。肝細胞が障害されることで逸脱して上昇するのも同じです。

2)合成能が低下して異常値が出る

肝臓はさまざまな物質の合成に関わっているので、その機能が低下すると異常値を示します。

TP(血清総蛋白)・Alb(血清アルブミン)

第3回参照。蛋白合成が低下するので値も低下。

TG(中性脂肪)・総コレステロールなど

これも脂質合成が低下するのに伴い値が低下します。

PT(プロトロンピン時間)

プロトロンピンは凝固因子のひとつ。
すべての凝固因子は肝臓で作られているため、
肝機能が低下すると止血時間が伸びます。

肝機能についての検査データは以上で終わり。
次回は血糖値の長期指標・HbA1cをまるわかり解説します。

納得イメージ

(テキスト:sakura nurse イラスト:中村まーぶる)