今後、ますます重要視されてくるチーム医療。
コメディカルの分野で働くプロに、看護師とどのように関わって仕事をしているかを伺いました。

今回ご登場いただいたのは、病院薬剤師として働くTさんです。病院薬剤師のお仕事、看護師との連携などについてお話を伺いました。

【病院薬剤師】
1)医師の処方を基に内用・外用の調剤をおこなう。また、病院薬剤師は、注射調剤、TDMなどの病院ならではの業務のほか、医薬品管理、医薬品情報管理、薬剤管理指導などもおこなう。
2)病院薬剤師養成課程を持つ大学(6年)で学び、国家資格を取得する。
3)薬剤師として、病院にとどまらず、ドラッグストアや調剤薬局、さらには行政、製薬会社、食品・化粧品メーカーなどの活躍の場もある。

【Tさんプロフィール】
兵庫県淡路島出身。ご実家が薬局を営み、ご両親の仕事ぶりを見て薬剤師を志す。薬学部進学の後、『Dr.コトー診療所』という漫画・ドラマに刺激を受け、へき地や離島医療に携わりたいという夢を持つ。
大学卒業後、全国各地に病院・クリニックを持つ医療グループに就職、鹿児島県内の病院に赴任。このグループ病院は離島やへき地にも施設を持っている。上司に相談し、みっちりと指導を受け、入職4年目で念願の離島病院に赴任!! 約2年間にわたって離島病院で活躍、医療環境の向上に努める。その後、関西地区の新病院設立時に薬局長として転勤。現在に至る。


<part1>すべての業務の根底にあるものは…

病院薬剤師のお仕事は、とても幅広くなっていると聞いたことがあります。

そうですね。調剤薬局だと、調剤や服薬指導が中心になりますが、病院薬剤師の業務は多岐に渡ります。入院患者さまや外来患者さまへの調剤・監査の業務以外に、注射調剤、無菌製剤・院内製剤調整、抗がん剤の調整、医薬品管理、麻薬管理、医薬品情報管理、薬剤管理指導、TDM(薬物治療モニタリング)などです。さらに、チーム医療や専門業務があります。

そんなにあるんですか!?
いくつか具体的な業務を教えて頂けますか。

まず、注射調剤について紹介します。オーダーを基に病棟に払い出しをします。各病棟及び患者さまごとにセットして、病棟での過誤を防ぐようにしています。また、注射剤の配合変化のチェックや投与ルート(経路)の確認を行い、適正に使用されるように提案しています。TPN(完全静脈栄養)の無菌調剤も実施しています。

過誤防止も払い出しの業務の1つのポイントなのですね。

そうですね。医薬品情報管理業務・薬剤管理指導業務にも関連しますが、当院では1,000品目以上の薬剤を取り扱っています。それらの医薬品が有効かつ安全そして適正に治療に用いられるためには、適正使用に関する情報が不可欠です。なので、わたしたち病院薬剤師は、医師、看護師など院内の各臨床部門へ情報提供をおこない、各部門からの質疑応答に対しても迅速に情報提供できるよう努めています。

なるほど…。確かに薬剤に関する医療事故は多いですよね。
他の業務はいかがですか?

TDM(薬物治療モニタリング)は、病院薬剤師の最も重要な業務の一つです。TDMとは、血液中の薬物濃度を測定し、その情報をもとに薬剤の最適な投与量・投与間隔などを決定し、適正な薬物治療を実施することです。TDMの対象となる薬には、抗生物質のほか、免疫抑制剤、抗てんかん薬、気管支拡張薬などがあります。薬学的な知識・技術を活かして個々の患者さんに応じた最も安全・効果的な薬物治療の実践をサポートしています。

安全・適正・有効ということが、病院薬剤師のすべての業務の根底にあるんですね。
院内のチーム医療では、どのようなことをされていますか。

医療安全に関する研修の開催・業務改善、ICT (院内感染予防チーム)もわたしたち薬剤部が中心となっています。また、NST(栄養サポートチーム)、がん化学療法、褥瘡、透析もおこなっているので、医師・専門看護師・栄養士などの他職種と連携し合って治療にあたっています。

お忙しそうですが、お勤め先はどのような病院ですか。

現在は、210床の急性期病院の薬局長として病院内の中間管理職的な立場で仕事をしています。主な業務は、処方せんに基づく調剤業務、入院患者さんに対しての病棟業務、院内製剤業務、多職種連携してのチーム医療などです。

病院薬剤師として、心がけていることはありますか?

患者さまにより安心・安全な医療を受けていただけるように、医薬品の適正な管理・供給・医薬品情報の評価・提供すること、また、チーム医療の中における薬学管理などを実践し、医療技術の向上に努め、地域医療に貢献できる薬局を目指しています。

(写真はイメージです)

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