今後、ますます重要視されてくるチーム医療。
コメディカルの分野で働くプロに、看護師とどのように関わって仕事をしているかを伺いました。

今回ご登場いただいたのは、慢性期型病院で管理栄養士として働く田井稜(たい・りょう)さんです。病院内での管理栄養士のお仕事、看護師との連携などについてお話を伺いました。

【管理栄養士】
1)食品に関する豊富な知識を基に、栄養面から健康をサポートする専門職。管理栄養士課程のある四年制大学または専門学校で学び、国家試験を受験し、管理栄養士(国家資格)を取得。
2)管理栄養士の資格を生かした仕事としては、病院、学校や社員食堂などでの給食管理、行政機関や食品メーカーでの研究、フードコーディネーターなど多岐に渡る。一方、医療職として活躍するようになったのは、NST(栄養サポートチーム)が一般的になってきたこの10数年ほど。
3)病院などの医療施設における業務は大きく分けて2つ。
1つが、病院等の施設の集団給食に関する献立の作成・栄養価の計算、食材の発注と検収をおこなう「給食管理」業務。もう1つが、医療職として、個別管理が必要な患者に対して、健康状態や栄養状態に沿った提案をドクターにし、栄養計画を策定していく「栄養指導・管理」業務。

【田井稜さんプロフィール】
看護師であるお母様の勧めで薬剤師を目指していた。元々料理や食べることが好きで、高校時には飲食関連のアルバイトを経験。それがきっかけで、調理学校へ進学。医学的なことにも興味があったので、食と医療を担う管理栄養士を目指し、調理専門学校卒業後、大学へ進学。卒後、総合病院での勤務を経て、現在の慢性期型病院へ。
ブログ「管理栄養士応援サイト 栄養士の勉強とお仕事を運営している。


<part1>管理栄養士は、医療職としての認知度が低い!?

管理栄養士の病院での業務は、「給食管理」と「栄養管理・指導」の2つがあるとのこと。
田井さんは、日々、どのような業務を担当されているのでしょうか。

現在勤務している病院は100床程度の病院で、管理栄養士は、私を含め4名在籍しています。
主任が給食管理をおこなっていて、臨床面の栄養管理・指導は副主任である私に任されています。

NST(栄養サポートチーム)はありますか?

NSTは発足していませんが、患者さまの栄養評価、経腸栄養や経管栄養をおこなっている低栄養患者さま、重篤な褥瘡患者さまなどに対する栄養剤の選択などをドクターに提案し、栄養計画の策定などをおこないます。
また、ドクターはもちろん、看護師や言語聴覚士などと連携して、患者個々に適切な食事形態を選択し、できる限り患者個人に合った食事(栄養剤も含む)を選択できるように心がけています。
その他にも、入院・外来での栄養指導や、週1での病棟カンファレンス参加、月1回会の集団栄養指導などもおこなっています。

栄養管理・指導業務だけでも、多岐にわたるのですね。
管理栄養士としてのやりがいは、どんなときに感じますか。

一番は、立案した計画書を元に栄養剤などを検討し、実際に患者さまの栄養状態に改善がみられた時ですね。
また、今まで医療職としての認知度が低かった管理栄養士が、他職種に認められた時も、やっていてよかったと感じますね。

認知度が低い!?

もちろん、徐々に高くなっているとは思いますが、やはり一般の認知度は、低いのが現状です。
私自身は、患者さまはもちろん、他職種にももっと頼ってもらえるような管理栄養士を目指しています。
医療現場での実際は、給食管理から離れにくい状況にある管理栄養士が多く、臨床面での栄養管理がずさんな病院も多いです。地域のコミュニティを活かし管理栄養士が情報共有できる場を設け、医療に貢献できるような管理栄養士を増やしていきたいと思っています。

チーム医療にとって、管理栄養士は重要なポジションだと思っていましたが、現状はそうでない病院施設もあるということですね。

ええ。今現在、管理栄養士は、病棟への必置義務がありません。また、大学教育においても、医療には関係のない授業が数多くあり、病院での臨地実習も1週間は給食管理、臨床分野(栄養管理・指導)はたった1週間と圧倒的に短いです。そのため、卒業してすぐには臨床現場での仕事が難しいという現実があります。医療職としての管理栄養士を育てる大学もないわけではありませんが、現状そこまで多くはありません。

その反面、NSTを発足する病院も増えてきていると伺います。

ええ、私が以前勤めていた病院には、NSTがありました。医療現場における栄養管理の重要性が見直されてきた今、この先、医療職としての管理栄養士を育成する大学が増えれば、管理栄養士の必置義務が設置される可能性も高くなると思います。これからは当たり前のように管理栄養士が病棟に居て、他職種にも医療職として認知される日が来ると思います。

地域医療においても、重要な役割を担うのではないでしょうか。

そうですね。老健などの施設と連携して情報共有し、在宅でも食事療法がしやすいような環境を作ることが必要ですね。そのためには、病院内だけの栄養管理だけを考えるのではなく、退院してからのことも考えた医療を目指していく必要があります。管理栄養士は、今後の在宅医療の一端を担う職業となると考えています。
医療に貢献できるような管理栄養士に!