<part3>看護師さんには患者さんに寄り添う存在でいてほしい
印象に残っている患者さんはいらっしゃいますか。
先日まで担当していた90代の女性は、散歩が日課で、足が強いということを褒められるのが自慢だったそうです。それが足の骨を折ってしまって歩くのが難しくなってしまったんですね。そういう方に車椅子を勧めるのがいいかというとそうではないですよね。そのため、なんらかの形で歩く方法を考えました。でも、家では杖を使って歩けるようになったけれど、外ではなかなか難しかった。そうすると心の落ち込みがどうしても起こってしまいます。
どのようなケアをされたのですか。
その患者さんが2番目に大事にしていることは何かということを、看護師さんを含めたチームで話し合いました。すると、人から褒めてもらうのが嬉しかったり、こんなことができるんだよという自分の経験を話したりすることが好きだということがわかりました。そのため、お茶を飲みながら他の患者さんと昔話に花を咲かせてもらったり、地元の美しい景色情報を披露しあったり、交換日記で孫に知恵を貸してあげたり…といった試みを行ったところ、失われそうであった笑顔を取り戻していったので、ここに焦点をあてていきました。
患者さんにとって大切なことを把握してケアをされたということですね。
はい。歩くという大事な機能を失ってしまったけれど、今もいきいきと楽しそうに過ごされていると聞いています。リハビリと言うと体の回復に目が向きがちですが、実は心のケアも作業療法の本質なんです。患者さんが生活していくうえで大切なことを把握し、心をケアしていくことは、看護師さんと共有しやすい部分ですので、いつも相談しながら行っています。
写真はイメージです。)
では、作業療法士というお仕事は今後どのように変わっていくと思いますか。
今後広がっていくのはロボット事業ですね。例えば、手の麻痺がある患者さんの筋肉に低周波の電気刺激を通すことで、物を掴む練習が何倍も早くできたりとか、運動イメージを回復させるために、歩けない患者さんをロボットで吊ってリハビリをしたりとか。企業さんがリハビリの技術を補完してくれるロボットを開発してくれているので早期に対応できるようにしたいです。
他にやってみたいことはありますか。
長く今の職場で働いているので、ここで培ってきた人間関係で、横の連携を作りたいです。申し送りなどもうまく連携がとれたらいいですよね。クリニックと大きな病院がつながっているように、大きな枠でネットワークを強化するには、人と人とのつながりだと思います。
最後に、共に働く看護師さんに求めることを教えてください。
お仕事を見ていると、とてもお忙しそうなので、人が足りないという状況は慢性的にあるのかなと思います。それでも患者さんに寄り添って笑顔でいてくれたり、安心できる存在でいてくれる看護師さんがいます。そういう方は入院生活の潤いにもなりますね。その気持ちは忘れないでほしいです。
看護師をめざしている方に向けてのメッセージもお願いします。
これからいろいろな困難にはぶつかるとは思うんですが、看護師という仕事は、志の高い職業です。人に貢献することもできますし、自分の存在価値を感じられる職業だと思うので、ふんばって資格を取ってほしいです!