今回頂いた質問

肝硬変では、直接ビリルビンと間接ビリルビンのどちらの値が上昇するのでしょうか。

ご質問ありがとうございます。まずは肝硬変の病態を考えてみましょう。

肝硬変とは、肝臓全体に高度の線維化がおこり、正常の肝細胞が破壊され再生結節(偽小葉)が形成される状態です。線維化によって肝小葉の構造が変化することで、肝内の門脈や胆管、中心静脈などの構造も変化します。きれいに整列していた肝細胞が不揃いになってしまうイメージです。

代償性肝硬変(まだ肝機能が保たれている時期)では、残された肝細胞がグルクロン酸抱合を行い、間接ビリルビンを直接ビリルビンに変換します。しかし、肝小葉の構造が変化し、肝内の門脈や胆管、中心静脈などの構造も変化しているため、直接ビリルビンをうまく胆管へ排出することができません。
その結果、直接ビリルビンは血管に入り込み血中に排泄されます。そのため肝硬変では血中の直接ビリルビンが(間接ビリルビンより)優位に増加します。

肝硬変が進行し、非代償性肝硬変(肝機能が保たれなくなってしまう時期)になると、肝細胞はさらに減少し、線維化が著しくなります。肝細胞でのグルクロン酸抱合も難しい状態です。こうなると、間接ビリルビンを直接ビリルビンに変換することができないため、間接ビリルビンも増加します。
そのため、非代償性肝硬変になると、間接・直接ビリルビンがともに上昇することになります。非代償性肝硬変の状態になると、肝機能不全により、黄疸、腹水、肝性脳症、門脈圧亢進による食道静脈瘤などの症状が出現します。

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第101回 看護師国家試験 午後問題55

総胆管結石による閉塞性黄疸と胆管炎とを発症した患者に、内視鏡的経鼻胆道ドレナージ術を行った。ドレナージ術は問題なく終了し、術後24時間の経過は良好である。
正しいのはどれか。

1. 抗菌薬の投与は必要ない。
2. 血清ビリルビン値が低下する。
3. 尿の色が黄色から褐色に変化する。
4. ドレナージチューブをクランプする。

1.× 胆管炎を発症しているので抗菌薬は必須である。
2.○ ドレナージ術で、うっ滞した胆汁が排出されるため黄疸は軽減する。血清ビリルビンの値も低下する。
3.× 褐色のビリルビン尿から正常の黄色に戻る。
4.× 閉塞性黄疸と胆管炎を軽快させるためには胆汁を持続的に体外に排出することが必要となる。術後すぐにドレナージチューブをクランプすることはない。

正解…2

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編集部より

過去の看護師国家試験を見てみると、ビリルビンが選択肢に出てくる問題が毎年のように出ています。直接ビリルビンと間接ビリルビン、ウロビリノーゲンとステルコビリノーゲン、それぞれどのような物質なのか説明できますか? 上記の関連ページでおさらいしておきましょう。