看護師にとって薬理学の知識は必要不可欠!
奥が深いお薬の世界を現役の看護師&薬剤師が丁寧に解説します。
国試の過去問といっしょに学習していきましょう。

1 余分な水分を出すのが役目。

利尿薬は、余分な水分を体の外に排泄するための薬です。水分を体から出す方法は、基本的には尿。では、具体的にどんな疾患で使われるかみてみましょう。

利尿薬が使用されている疾患まとめ

応用範囲が広く、全身いろいろな場所の疾患に使われていますよね。でも、あくまで排泄するのはその部位からではなく尿としてです。ということで腎臓の仕組みを復習しましょう。

腎臓の仕組み

ナトリウムは水と同じ動きをします。つまり、ナトリウムを多く排泄(=尿細管での再吸収を抑制)すれば水も排泄することができるわけです。


2 利尿薬の副作用はこれだ。

おもな利尿薬

ループ利尿薬

フロセミド

チアジド系利尿薬

トリクロルメチアジド、スピロノラクトン

カリウム保持性利尿薬

スピロノラクトン、トリアムテレン

浸透圧利尿薬

D-マンニトール など

利尿薬は、水を排泄するためにナトリウムなどの再吸収を抑制します。そのため、電解質のバランスが崩れるのが大きな副作用です。たとえばループ利尿薬は、ナトリウムの再吸収を抑制するとともに、カリウムの吸収も抑制するので低カリウム血症になりやすくなります。これを防ぐために、カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン)などがあります(ただし、単独での利尿効果は弱いです)。

薬剤師から副作用について一言

薬剤師 鶴原伸尚さん

鶴原伸尚さん
つるさん薬局(東京都)の薬剤師。患者さん一人ひとりの想いを大切に日々奮闘中。

初めて利尿薬を利用する患者さん、特に高齢者には、脱水、低血圧等によるめまい、ふらつきの注意を行います。健康のため自主的に有酸素運動を始めるというように生活習慣が変わる場合にも注意が必要です。薬を飲み慣れてきても、熱中症を起こしやすい時期、お腹を壊したときなどは副作用を起こしやすくなります。
薬を継続的に利用する場合は、血液検査で低カリウム血症などの副作用を早期に発見できることがほとんどです。薬局では、血液検査を行っているか、そしてその頻度を確認しています。


3 看護で気をつけるのはここ!

利尿薬を使うと頻回に排尿したくなります。高齢者では、転倒につながることも。

また、排泄行為に介助が必要な人の場合、気兼ねしてなかなか声をかけられない方もいるため、看護師からも声がけをするなどの工夫も必要です。薬剤の使用時間も、出来る限り夜間帯にかからないようにするなど、医師と協力して配慮できるといいですね。

こんな事例がありました

1)入院中の患者さんに「毎回尿量を測定するのって結構疲れるのよ」と言われました。確かに、夜中も毎回尿の量を測定するため、コップに排尿する行為は動作も含めて負担がかかる行為です。この方の場合は、心不全の急性期後、なるべく早く体重測定のみに出来るよう話し合いました。
2)急性心不全で入院された患者さん。外来で処方された大量の利尿薬が余っていたのですが、「この薬飲むとおしっこ近くなるから飲んでなかったのよ」と一言。利尿薬は副作用に注意が必要であるとともに、利尿薬の効果そのものからくる身体的な負担もあります。とはいえ、効果を実感しやすい薬でもあるので、浮腫の軽減や呼吸状態の改善など伝えることで、患者さんに治療に対しての理解を得ることは大切です。


4 国試の過去問を解いてみよう。

第103回看護師国家試験 午後問題31

降圧利尿薬により血中濃度が低下するのはどれか。

1.ナトリウム
2.中性脂肪
3.尿酸
4.血糖

正解・・・1
降圧利尿薬は尿中の電解質も同時に排泄されるため、血中のナトリウムやカリウムが低下し、低ナトリウム血症や低カリウム血症などの副作用が出ることがあります。中性脂肪には影響しませんが、尿酸や血糖は上昇します。


5 最後に再び薬剤師から。

薬剤師 鶴原伸尚さん

薬剤師はお薬を渡すだけではありません。

薬局に本人が利尿薬を取りに来られる場合は、むくみの軽減、血圧のコントロールの効果を確認し、副作用のチェックを行います。以前、利尿薬でむくみは軽減したものの、ふらついて仕事にならないという患者さんがいました。用量の調節を行うこともありますが、この場合は、短時間型のフロセミドから長時間型のアゾセミドに変更して、めまいの副作用を軽減できました。

利尿薬をご家族などが代理で取りに来られる場合は、腹水、胸水など深刻な状況が多くみられます。効果や副作用の確認は難しいのですが、コンプライアンス(医師・薬剤師の指示通り、飲み忘れ、自己判断することなく飲めているか)の確認を行い、飲みやすい剤形の提案、変更を行っています。またご家族の心のケアも重要な仕事です。治療が難しいのはご本人たちも理解されているので、お話を聞くことが一番のケアになります。


(テキスト:sakura nurse・鶴原伸尚 イラスト:中村まーぶる)