今回は「看護の統合と実践」についてです。
この科目では、看護実践において必要な知識と技術を総合的に問われるため、幅広い分野の理解が求められます。
「看護の統合と実践」の学習ポイント
2)災害時対応
3)外国人患者さまへの対応
1)リスクマネジメント について
過去問をみてみましょう。
インシデントレポートについて適切なのはどれか。2つ選べ。
1. 法令で書式が統一されている。
2. 責任追及のためには使用されない。
3. インシデントの発生から1か月後に提出する。
4. 分析結果は他職種を含めて組織全体で共有する。
5. 医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例の報告は不要である。
正解/2・4
インシデントレポート(事故報告書)は通常ではない出来事がおきたとき、その状況の報告とその後の対処・対策を策定するために作成します。事実確認、当事者も含めた組織全体への注意喚起、安全管理のシステムの再構築などのために活用し、再発防止のために活用されます。
注意点として、インシデントレポートは個人に対する責任追及、当事者などの処罰のために用いられるものではありません。また、インシデントレポートの作成者は、事実を正確に記入し、すみやかに報告することが大切ですが、期限が決められているわけではありません。
インシデント(ヒヤリ・ハット)報告の目的はどれか。
1. 反 省
2. 謝 罪
3. 責任追求
4. 原因究明
正解/4
医療過誤で正しいのはどれか。
1. 医療機関・医療従事者の過失による。
2. 事故に至らなかったものも含む。
3. 非侵襲的行為によるものは含まない。
4. 被害者に医療従事者が含まれる。
正解/1
医療事故とは、医療行為により何らかの有害な結果が発生したものをいいます。
そして、医療事故は、不可抗力によるものと、過失によるものに分けられます。
医療事故 ――――――――― 不可抗力によるもの
┃
――――――― 過失によるもの=医療過誤
医療過誤とは、対象者にとって有害な結果の発生に医療従事者がかかわっていて、かつ防ぐことができた場合の医療事故をさします。刑事告発や賠償責任を問われる可能性のある医療上の誤った、あるいは過剰な行為のことをさします。
このようにインシデントレポートや医療過誤などリスクマネジメントに関する問題は、国試でかなり多く問われています。看護師として患者の安全を守り、医療の質を向上させるため、定義や目的への理解を深めることが大切です。
2)災害時対応 について
問題を解いてみましょう。
災害急性期に看護師が行う対応で最も適切なのはどれか。
1. 情報の発信を行う。
2. 各自の判断で行動する。
3. 災害現場の安全を確保する。
4. 災害時の対応マニュアルの見直しをする。
正解/3
まず看護師として安全を確保することが求められます。
情報の発信を行うこともあるかもしれませんが、「最も適切なのはどれか」と問われていることから、安全の確保が正解となります。
災害時のトリアージで正しいのはどれか。
1. トリアージタッグは衣服に装着する。
2. 治療優先度の高さはトリアージ区分のⅠ、Ⅱ、Ⅲの順である。
3. トリアージの判定は患者の到着時および到着後30分の2回行う。
4. 最優先に治療を必要とする者には、黄色のトリアージタッグを装着する。
正解/2
1. × トリアージの装着部位は、右手→左手→右足→左足→頸部と決まっています。
2. ○ 治療優先度の高さは、赤(Ⅰ:最優先治療群)→黄(Ⅱ:非緊急治療群)→緑(Ⅲ:軽処置群)→黒(0:救命が不可能の不処置群)となっています。
3. × 再トリアージは、患者さんの状態が変化したときに行います。
4. × (2の説明を参照)
災害時の看護では、適切なトリアージ、応急処置、被災者支援のためのケアを提供する知識が求められます。
特にトリアージは疾病や外傷の緊急度を判定して、患者の優先順位と分類を行う過程です。災害時の医療活動の目標は、最大多数の傷病者に最善の医療を提供することで、そのために初期災害医療の基本である3Tの医療支援を行います。
3Tとは、トリアージtriage,治療treatment、搬送transportation のことをさします。
災害時のトリアージは災害医療の要であるため、教科書にさかのぼって確認しておきましょう。
3)外国人患者さまへの対応 について
過去問をみてみましょう。
Aさんは、3年前に来日した外国人でネフローゼ症候群のため入院した。Aさんは日本語を話し日常会話には支障はない。Aさんの食事について、文化的に特定の食品を食べてはいけないなどの制限があるがどうしたらよいかと、担当看護師が看護師長に相談した。
担当看護師に対する看護師長の助言で最も適切なのはどれか。
1. 日本の病院なので文化的制限には配慮できないと話す。
2. 文化的制限は理解できるが治療が最優先されると話す。
3. Aさんの友人から文化的制限に配慮した食事を差し入れてもらうよう話す。
4. 文化的制限に配慮した食事の提供が可能か栄養管理部に相談するよう話す。
正解/4
Aちゃん(3歳)は、両親(外国籍)と3人で暮らしている。来日して1か月が経った。2日前に急性胃腸炎で個室に入院した。症状が改善し、経口での食事を再開することになった。看護師が訪室すると、香辛料の香りが部屋に充満しており、唐辛子の入った肉などのたくさんの料理が並べられていた。母親は看護師に気付くと「Aは日本食には慣れておらず、食べられないので家で作ってきました」と話した。
このときの母親への看護師の対応で適切なのはどれか。
1. 普段のAちゃんの食事の内容を尋ねる。
2. 栄養指導を受けるまで食事の持ち込みはできないと説明する
3. たくさん食べさせてAちゃんの体力を回復させるよう伝える。
4. 病院食を完食するまで、持ち込み食は食べさせないよう伝え。
正解/1
外国人患者さまへの対応として、看護師は言語や文化の違いを理解し、それを乗り越えるための工夫をしながら、患者の権利を尊重したケアを提供することが求められます。異文化への配慮と安全な環境を提供することで、患者さまが安心して医療を受けられるようサポートしていきましょう。
この連載は、今回が最終回になります。ここまで国家試験対策の勉強法についてお読みいただき、ありがとうございました。看護師という素晴らしい職業を目指しているみなさんを心から応援しています。
国試合格への勉強は大変な道のりですが、その先には患者さんからの多くの笑顔と感謝が待っています。どうか最後まで諦めずに、自分を信じて進んでください。みなさんの成功をお祈りしています!
過去回については、こちらの一覧ページからご覧いただけます。
国家試験直前まで、ぜひ、ご活用ください。