今回は「母性看護学」についてです。

まずは、母性看護学の出題基準を理解することから始めましょう。特に、ここ2・3年の出題傾向から考えると、以下の3つのポイントが重要です。

「母性看護学」の学習ポイント

1)妊娠・分娩・産褥期のケア
2)新生児ケア
3)母子の健康教育と支援

1)妊娠・分娩・産褥期のケア について

まず、正常な妊娠・分娩・産褥期についてしっかり暗記をしていってください。妊娠中の母体の変化、分娩の生理、産褥期の母体変化とその管理についての理解を深めます。
そのうえで、合併症の理解、特に「妊娠高血圧症候群」「妊娠糖尿病」「早産」など妊娠・出産に関わる疾患やリスクに関する理解も必要です。

問題を見ていきましょう。

第103回追試 AM109
Aさん(28歳、初産婦、正規雇用の事務職)は、妊娠26週2日である。Aさんは身長158cm、体重58kg(非妊時体重53kg)で2週前から0.5kg増加している。血圧128/80mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(±)。下肢に軽度の浮腫を認める。子宮底長23cm、腹囲78cm。血液検査データは、Hb11.2g/dL、Ht34%、空腹時血糖80mg/dLであった。
妊娠経過のアセスメントで適切なのはどれか。
1. 正常な経過
2. 妊娠高血圧症候群
3. 妊娠糖尿病
4. 妊娠貧血
正解/1

この問題のように、まずは「正常かどうか」のアセスメントができることが重要です。
また、以前もお伝えしたとおり、正解を覚えて終わりではなく、×選択肢についても理解を深めていきましょう。

・妊娠高血圧症候群
血管攣縮と血液凝固亢進に関連していて、妊娠週数にかかわらず、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上を高血圧がみとめられたもの、と定義しています。

・妊娠糖尿病
75gブドウ糖負荷試験〈75OGTT〉において、次の基準の1点以上を満たした場合に診断されます。
(1)空腹時血糖値≧92mg/dL
(2)1時間値≧180mg/dL
(3)2時間値≧153mg/dL

・妊娠性貧血
Hb値11.0g/dL未満、Ht値33%未満の場合に診断されます。

もう1問見てみましょう。

第108回 AM106
Aさん(34歳、初産婦)は、夫(37歳、会社員)と2人暮らし。事務の仕事をしている。身長157cm、非妊時体重54kg。妊娠24週4日の妊婦健康診査時の体重58kgで4週前から1.5kg増加している。血圧128/88mmHg。尿蛋白(±)、尿糖(-)。浮腫(±)。Hb 10g/dL、Ht 30%。子宮底長22.5cm、腹囲84cm。胎児推定体重700g。非妊時より白色の腟分泌物は多いが、瘙痒感はない。
Aさんの妊婦健康診査時のアセスメントで適切なのはどれか。
1. 妊娠性貧血
2. 腟カンジダ症
3. 胎児発育不全〈FGR〉
4. 妊娠高血圧症候群〈HDP〉
正解/1

・膣カンジダ
外陰部における疼痛を伴う強い掻痒感を主症状とし、膣内における白色濃厚な粥状(酒粕状・粉チーズ状)の分泌物が特徴的です。

・胎児発育不全
何らかの理由で胎児の発育が遅延・停止した状態であり、通常の在胎数週に沿った発育が見られない場合をさします。
胎児の体重計測はあくまでも超音波計測による推定体重となり、実際とは誤差が生じることがあります。よって、胎児発育不全が疑われた場合は、臨床診断を行うことが推奨されています。

他にも前置胎盤、早産、妊娠中の感染症(風疹、トキソプラズマなど)に関する問題が出題されます。これらの疾患の予防、診断、治療、看護のポイントを押さえておきましょう。
 

2)妊娠・分娩・産褥期のケア について

まずはこちらも新生児の正常な発達・生理を押さえましょう。そのうえで新生児マススクリーニングなどの検査、新生児黄疸(高ビリルビン血症)、呼吸障害、感染症などの疾患に関する知識が求められます

では、問題を見てみましょう。

第106回 PM6
肺サーファクタントの分泌によって胎児の肺機能が成熟する時期はどれか。
1. 在胎10週ころ
2. 在胎18週ころ
3. 在胎26週ころ
4. 在胎34週ころ
正解/4

肺胞の表面の水分と空気の界面には肺サーファクタント(肺表面活性物質)による被膜層が形成されていて、表面張力で肺胞がつぶれないようにしています。肺サーファクタントは肺胞Ⅱ型上皮細胞から分泌され、在胎34週ごろから、その産生が急速に高まります。

第107回 AM104
在胎38週4日、骨盤位のため予定帝王切開術で出生した男児。看護師はインファントラジアントウォーマー下で児の全身を観察した。羊水混濁はなかった。

身体所見:身長 49.0cm、体重2,900g、頭囲 33.0cm、胸囲 32.0cm。直腸温37.8℃、呼吸数55/分、心拍数150/分。大泉門は平坦、骨重積なし、産瘤なし、頭血腫なし。胎脂は腋窩にあり。筋緊張は強く、四肢は屈曲位。皮膚は厚い。うぶ毛は背中の1/2にあり。耳介は硬い。精巣は両側ともに完全に下降。外表奇形はなし。
検査所見:Apgar〈アプガー〉スコアは1分後9点、5分後10点。臍帯動脈血pH7.30。

出生後2時間。児のバイタルサインを確認したところ、直腸温37.5℃、呼吸数75/分、心拍数160/分、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉87%であった。心雑音はなし。鼻翼呼吸および呻吟がみられた。四肢末端にチアノーゼあり。
この児の状態で考えられるのはどれか。
1. 胎便吸引症候群〈MAS〉
2. 呼吸窮迫症候群〈RDS〉
3. 心室中隔欠損症〈VSD〉
4. 新生児一過性多呼吸〈TTN〉
正解/4

×選択肢についても、確認してきましょう。

・胎便吸引症候群
胎児が低酸素状態に陥ると、迷走神経反射によって腸管蠕動運動の亢進と肛門括約筋の弛緩がおこります。これによって羊水中に胎便が排出され、黄緑色に混濁します。これを羊水混濁といいます。低酸素状態による胎内でのあえぎ呼吸や、出生後の第一呼吸で胎便が気道内に吸引されると、胎便吸引症候群を発症します。

・呼吸窮迫症候群
肺胞Ⅱ型細胞の未成熟に伴うサーファクタントの不足により発症します。感染症や新生児仮死、血清羊水吸引や肺出血などの肺サーファクタントを不活性化する病態によっても二次的に発症することがあります。肺胞の拡張不全から機能的残気量が減少し、低酸素血症やアシドーシスが進行します。在胎26~28週の児の約50%に発症しますが、在胎30~31週の児の発症は20~30%未満である。つまり、早産児にみられることが多い症候群です。

このように新生児の正常、異常をアセスメントする問題が多く出題されています。出題基準にある病態はもれなく学習しましょう。

 

3)母子の健康教育と支援 について

妊婦や家族に対する健康教育、出産後の母子に対する心理的・社会的支援の理解が必要です。母乳育児の指導、育児不安への支援、配偶者や交際相手からの暴力(ドメスティック・バイオレンス〈DV))への対応なども含まれます。

今回はDVについて学習してみましょう。

第97回 AM49
婦人相談所の機能はどれか。
1. 不妊治療相談
2. 子宮がん検診
3. 母子健康手帳の交付
4. 暴力被害女性の保護
正解/4
婦人相談所は、2024年4月1日から困難な問題を抱える女性への支援に関する法律に基づき、「女性相談支援センター」に名称変更されています。

2001年(平成13年)に配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律〈DV防止法〉が制定され、対応機関として配偶者暴力相談支援センターや女性相談支援センター(旧婦人相談所)があります。

第106回 AM62
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律〈DV防止法〉で正しいのはどれか。
1.婚姻の届出をしていない場合は保護の対象とはならない。
2.暴力を受けている者を発見した者は保健所へ通報する。
3.暴力には心身に有害な影響を及ぼす言葉が含まれる。
4.母子健康センターは被害者の保護をする。
正解/3
※選択肢4の「母子健康センター」は、平成29年(2017年)4月から、法律名として「母子健康包括支援センター」に変更されています。

1.× DV防止法の対象は「配偶者」としての位置づけが明確でなくても、「生活の本拠を共にする交際」であると認められれば適応される。
2.× 暴力を受けている者を発見した場合、保健所への通報ではなく、配偶者支援センターや警察所へ通報する努力義務がある。
3.○ DVとは、身体に対する暴力またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動のことをいう。
4.× 被害者の保護を行うのは、配偶者暴力相談支援センターや警察である。

 

母性看護学の学習を進める上で、まずは「正常」を確実に身につけることが重要です。解剖生理や妊娠・出産のメカニズムを理解し、母子の健康に関するさまざまな問題を把握しましょう。着実に学びを深めていくことで、母性看護学の理解と実践力が向上し、国家試験の合格へとつながります!

今回の参考問題リストもぜひご参考に。
次回は精神看護学について説明します