今回は「小児看護学」についてです。

小児看護学は範囲が広く暗記が多いので、科目ごとに攻略していく際は、一番最後に取り組むことをおすすめします。以下のポイントに注意して学んでいきましょう。

「小児看護学」の学習ポイント

1)発達段階の理解
2)小児特有の疾患をおさえる
3)予防接種と感染対策も忘れずに

1)発達段階の理解 について

新生児期、乳児期、幼児期、学童期、思春期といった各発達段階に応じた特徴、成長と発達のプロセス、健康状態に対する理解が求められます。

まずはエリクソンに関する問題を見ていきましょう。

第108回 PM8
エリクソン,E. H. の乳児期の心理・社会的発達段階で正しいのはどれか。
1. 親 密
2. 同一性
3. 自主性
4. 基本的信頼
正解/4

エリクソンは、人生を8段階に分け、それぞれのライフステージに肯定的・否定的な発達課題を示しました。各期において、肯定的な面(発達課題)と否定的な面(発達危機)の葛藤により、心理的発達や社会的適応を促すとされています。

<エリクソン, E. H.の発達課題とそれに対する発達危機>
乳児期 ―――― 基本的信頼   対  基本的不信
幼児期初期 ―― 自律性    対  恥と疑惑
遊戯期 ――――自主性(積極性) 対  罪悪感
学童期 ―――― 勤勉性      対  劣等感
青年期 ―――― 自己同一性    対  自己同一性の混乱
前成人期 ――― 親密性     対  孤独
成人期 ―――― 生殖性(世代性)対  停滞
老年期 ―――― 統合性      対  絶望

なお、エリクソンの発達課題は小児だけでなく、老年などでも出題されることがあるので、乳児期~老年期までまんべんなく覚えておいてほしいと思います。

発達段階に関する問題を、もう1問、見てみましょう。

第112回 AM57

1歳6か月の身体発育曲線(体重)を示す。
異常が疑われるのはどれか。



正解/3

身体発育曲線とは、成長期における「身長」や「体重」の変化をグラフで示したものです。
これを使うと、年齢ごとに自分の体がどのくらい成長しているのかがわかり、正常な成長をしているか確認することができたり、病気を早期に発見することができたりします。

身体発育曲線には、「基準線」と呼ばれる線が引いてあり、子どもの身長と体重の成長が標準であれば、この基準線に沿った曲線となります。基準線に沿って伸びていれば適正で、基準線に対して上向き、あるいは下向きに伸びていれば異常と考えます。

第110回 AM53
乳幼児身体発育調査による、身体発育曲線のパーセンタイル値で正しいのはどれか。
1. 3パーセンタイル未満の児は、要精密検査となる。
2. 50パーセンタイルは同年齢同性の児の平均値を示す。
3. 10パーセンタイルは同年齢同性の児の平均より10%小さいことを示す。
4. 75パーセンタイル以上90パーセンタイル未満の児は、要経過観察となる。
正解/1

「乳幼児身体発育調査」は10年ごとに厚生労働省が行っている調査で、その基準値となるのが「身体発達曲線」です。
「身体発達曲線のパーセンタイル値」とは、対象の児の身長や体重などを発達曲線に当てはめた結果のことをさします。同年齢(月齢)の全体を100人と仮定した時、対象の児の身長や体重が小さいほうから数えて何番目になるのかを示す数値のことです

その検査の結果、
・10パーセンタイル未満90パーセンタイル以上の児は要経過観察
・3パーセンタイル未満97パーセンタイル以上の児は、場合によっては精密検査が必要となります。

ここで注意が必要なのは、50パーセンタイル値を平均値と認識してしまう方がいます。あくまでも50番目の数値と平均値は異なるので正しい理解が必要です。

小児の発達段階や健康状態に関する問題ではエリクソンが頻出ですが、ピアジェ、ハヴィガースト,R. J.のほか、今回見たパーセンタイル値、成長・発達の原則やスカモンの発育曲線、改訂版デンバー式発達スクリーニングなども出題されることがあります。

これらは、いわゆる暗記問題であり、覚えていれば得点なりますが、覚えていなければ、あてずっぽうで解答することになります。それぞれの概要をしっかり理解しておきましょう。

 

2)小児特有の疾患をおさえる について

先天性疾患や感染症、小児の慢性疾患など、年齢特有の病態について詳しく理解しましょう。
今回は川崎病について、みてみましょう。

第103回追試 AM103
Aちゃん(3歳、男児)は、5日前から発熱し、自宅近くの病院を受診し解熱薬を処方され服用していた。昨日から眼球結膜の充血、口唇の発赤と亀裂があり入院した。入院時に、体幹の発疹と手足の浮腫が認められ、川崎病と診断された。
母親が「川崎病というのはどういう病気ですか。もう一度教えてください」と看護師に質問した。
看護師の説明で正しいのはどれか。
1. 「神経が障害される病気です」
2. 「血管に炎症が起きる病気です」
3. 「人から人に感染する病気です」
4. 「薬の副作用で起こる病気です」
正解/2

川崎病は、主に4歳以下の子どもに発症する原因不明の症候群で、1歳前後での発症が最も多くみられます。経過中に冠動脈の拡張、瘤ができ、狭心症・心筋梗塞などを発症するリスクがあり、小児期の後天性心疾患において重要な疾患群です。

別の問題も見てみましょう。

第112回 AM105
Aちゃん(2歳、男児)は両親、兄(5歳)の4人家族である。3日前から発熱が続くため、母親と一緒に外来を受診した。診察の結果、川崎病と診断され、個室に入院となり左手背に点滴静脈内留置針が挿入された。入院中は母親が希望し、Aちゃんに付き添っている。Aちゃんにγ-グロブリン療法とアスピリンの内服が開始されることになった。看護師がγ-グロブリン療法の開始のために訪室すると、Aちゃんは不機嫌にぐずって泣いている。
入院4日、Aちゃんは解熱し活気が出てきた。翌日、看護師がAちゃんを観察すると、手指の先端から皮膚が膜のように薄くむけていた。
この所見に対する看護師のアセスメントで適切なのはどれか。
1. γ-グロブリン療法の副作用(有害事象)である。
2. 皮膚のツルゴールが低下している。
3. 川崎病の回復期の症状である。
4. 皮膚科の受診が必要である。
正解/3

川崎病について、説明します。

以下に示す6つの主要症状のうち、5つ以上の症状を伴うものが川崎病と診断される。
(1)発熱
(2)両側眼球結膜の充血
(3)口唇・口腔所見:口唇の紅潮、苺舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
(4)発疹
(5)四肢末端の変化(急性期では手足の硬性浮腫、手掌足底または指趾先端の紅斑、回復期では指先からの膜様落屑)
(6)急性期での非化膿性頸部リンパ節腫脹

Aちゃんは手指の先端から皮膚が膜のように薄くむけていたことから、川崎病の回復期の症状だと考えらます。

以前、成人看護学の回でも説明したのと同様に、小児の疾患でも、
1)過去問を使って頻出の疾患を絞り込む
2)教科書を使って、その疾患に関する理解を深める
3)過去問に再度トライする
を繰り返すことで、点数アップにつながります。

 

3)予防接種と感染対策も忘れずに について

小児看護学では、特に乳児期・乳幼児期に行う予防接種のスケジュールや、各種感染症の予防・管理に関する知識も重要です。
国立感染症研究所 予防接種スケジュール
このなかでも、特に定期予防接種(ブルーのバー)になっているもについて確認していきましょう。

また、令和2年10月1日から、異なるワクチンの接種間隔に変更点(予防接種法施行規則の改正)があったので確認しておきましょう。

異なる種類のワクチンを接種する際の接種間隔のルール
(1)「注射生ワクチン」の接種後27日以上の間隔をおかなければ、「注射生ワクチン」の接種を受けることはできない。
(2)それ以外のワクチンの組み合わせでは、前のワクチン接種からの間隔にかかわらず、次のワクチンの接種を受けることができるようになった。
(3)接種から数日間は、発熱や接種部位の腫脹などが出ることがあります。ルール上接種が可能な期間であっても、必ず、発熱や、接種部位の腫脹がないこと、体調が良いことを確認し、かかりつけ医に相談の上、接種を受ける。
出典 厚生労働省 ワクチンの接種間隔の規定変更に関するお知らせ

 

ここまで見てきたように、小児看護学は覚えることがたくさんあるため、点数が伸びにくい分野です。
だからこそ、頻出で正答率の高いものから優先的に学んでいくことで、徐々に点数が伸び、攻略への自信がついていきます!

今回の参考問題リストもぜひご参考に。
次回は母性看護学について説明します!