今回は、「老年看護学」についてです。
正答率は比較的高い科目です。過去問題を一通り解くことで出題傾向を掴むことができ、点数獲得につながります。

では、具体的にはどのように攻略していけばよいでしょうか?
老年看護学攻略の攻略ポイントは?
老年看護学の攻略ポイントは、これだ!
2)カタカナ用語をチェックしよう!
3)認知症に関する問題は必ず出題される!
1)高齢者を取り巻く社会環境に関連した問題が頻出! について
高齢者に関する社会保障制度や法律(年金、介護保険、高齢者虐待防止法、成年後見制度など)についても出題されますが、注意したいのが高齢者の生活環境(同居者、介護者、収入、日々の生活にまつわる問題など)に関する問題です。
過去問を見ていきましょう。
令和元年度(2019年度)「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」の結果において、養護者による高齢者虐待に関する説明で正しいのはどれか。
1.夫による虐待が最も多い。
2.被虐待者の9割が女性である。
3.心理的虐待が全体の6割を占めている。
4.被虐待者の認知症高齢者の日常生活自立度判定基準はランクIIが最も多い。
答え:4
選択肢1 虐待を行った者は「息子」が40.2%を占め最も多く、次いで21.3%を占める「夫」となっています。よって、×
選択肢2 被虐待者の約75%が女性なので、×。
選択肢3 身体的虐待が67.1%を占め最も多く、次いで心理的虐待が39.4%となっています。よって×。
選択肢4 他の選択肢に比べ、ここまで確認されている方は多くないと思いますが、被虐待者の認知症高齢者の日常生活自立度判定基準は、ランクIIが約35%で最も多くなっています。下表参照
厚生労働省 「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」(https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/000871877.pdf)
P.17 2.養護者による高齢者虐待についての対応状況等 ―(7)被虐待高齢者の状況 ― ウ.要介護状態区分等(表 44~表 48)より
また、過去にはこれ以外に、高齢者がいる世帯の構造、活動と休息のリズム、65歳以上75歳未満の就業者、権利擁護、介護施設従事者による高齢者虐待、最期を迎える場所の希望、さらには再婚したいが息子に反対されている70代女性への声掛け、というような問題までも出題されています。高齢者がどういった生活環境にいるのか、どういったことを望んでいるのかなど、データや教科書掲載の事例などで裏付けしておくとよいかと思います。
2)カタカナ用語をチェックしよう! について
老年看護学では、カタカナ用語の問題がほぼ毎年出題されています。
過去問を見てみましょう。
身体的フレイルの評価基準はどれか。2つ選べ。
1.視力低下
2.体重減少
3.聴力低下
4.歩行速度の低下
5.腸蠕動運動の低下
答え:2・4
フレイルとは、老化に伴うさまざまな機能の低下(予備能力の低下)により、疾病発症や身体機能障害に対する脆弱性が増す状態をいいます。フレイルの評価基準には様々なものがありますが、アメリカのフリード L. P. Friedらが提唱した CHS(cardiovascular health study)基準〈フリード Friedの基準〉が国際的に多く用いられています。
この基準は(1)体重減少、(2)主観的疲労感、(3)日常生活活動量の減少、(4)身体能力(歩行速度)の減弱、(5)筋力(握力)の低下の5項目のうち、3項目以上該当するとフレイル、1 または2項目だけ該当する場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断するものです。この基準は身体的フレイルの評価に限定されていることや、日本人にそのまま適用しにくいという点が指摘されており、このフリードの基準を基盤としたうえで、日本人に適用しやすい国内共通の評価基準(日本版CHS基準)がのちに開発されています。
以上のことから、選択肢で該当するのは2と4になります。
これ以外にもPEM(ペム)、サルコペニア、ロコモティブシンドローム、エイジズムなども近年話題になっていますね。また、評価基準もカタカナ名称のものがありますね(カッツインデックス、バーセルインデックスなど)。なんとなく「確かこんな意味だったよね?」というレベルの理解だと、国試本番の緊張からど忘れしてしまったりすることもありますので、正しく理解しておくことが大切です。
3)認知症に関する問題は必ず出題される! について
認知症に関する問題は、患者数が最も多いアルツハイマー型認知症に重点を置きがちですが、レビー小体型、前頭側頭型、脳血管性も数年ごとに出題されていますし、コミュニケーション方法なども出題されやすいポイントです。
認知症高齢者とのコミュニケーションで適切なのはどれか。
1. 説得するように話す。
2. 作話があっても話を聞く。
3. 一度に多くの情報を伝える。
4. 同じ内容を繰り返している場合は会話を終了する。
答え:2
選択肢1ですが、認知症の人が納得・安心できる話し方を心がけます。そのためには、否定や訂正、指摘をせず安心して心地よく話せるように傾聴します。よって、選択肢2が〇。選択肢3、一文に複数のメッセージを盛り込まないようにし、簡単な文で1つの要素を伝えましょう。選択肢4は、選択肢2と同様、相手を否定せず、発話をゆっくり待つことが大切です。
認知症の攻略法ですが、まずは代表的な認知症についてそれぞれの好発年齢、障害部位、特徴、経過などを押さえましょう。次に、認知症の検査(長谷川式認知症スケール〔HDS-R〕、ミニメンタルステートテスト〔MMSE〕)の評価方法、認知症の中核症状、行動・心理症状、それらに対応する看護をおさえます。そして、各認知症の出題傾向を調べてどういった点が狙われやすいのか、という点を理解すると、さまざまな方向から問われても得点につながりやすくなります。
今回の3ポイントふまえた過去問を、コチラにまとめています。ぜひご利用ください。
次回は、健康支援と社会保障制度について説明します!