今回は、「成人看護学」についてです。

成人看護学は、一般問題だけでなく状況設定問題でも出題がありますし、出題範囲自体も幅広い印象がありますよね。苦手科目として挙がることも多い科目です。
とはいえ、ここ数年の成人看護学は、比較的点数を取りやすい問題が多くなっています。過去問を使いながら、傾向をしっかり押さえておくことが、一番の対策につながると言えそうです。

では、具体的にはどのように攻略していけばよいでしょうか?

成人看護学の攻略の攻略ポイントは?

成人看護学の攻略ポイントは、これだ!

1)過去問題を丁寧に学習していこう!
2)代表的な疾患の生活指導は、ガイドラインを参考にしたい。
3)状況設定問題は、検査データの解析が重要!

 

1)過去問題を丁寧に学習していこう! について

出題基準を見るとわかるように、成人看護学の出題範囲は膨大です。それを一つひとつあたっているのは効率が悪いので、やはりここでも過去問を有効活用していきましょう。すでに何度か説明していますが、過去問を使う意義は、
1)数年分の過去問をやることで、頻出テーマを知る。
2)ひとつ1つのテーマに対して、どこまで深堀すればいいのかを知る。
の2つです。
これは、成人看護学においても同様です。

過去問を見ていきましょう。

第110回 AM42 
Aさん(50歳、男性)は肝硬変と診断され、腹水貯留と黄疸がみられる。
Aさんに指導する食事内容で適切なのはどれか。
1.塩分の少ない食事
2.脂肪分の多い食事
3.蛋白質の多い食事
4.食物繊維の少ない食事
答え:1

Aさんに出現している症状(腹水貯留、黄疸)から、非代償性肝硬変であることが分かります。腹水の貯留は血漿膠質浸透圧(血漿蛋白質の減少)と門脈圧亢進が相まって生じるとされています。ならば、蛋白質をしっかり摂取したほうがいいのでは? となりますが、ここが要注意ポイントです。
食べた蛋白質はアミノ酸まで分解され、消化・吸収すると解剖生理学で学習しますが、実際の体内では「腸内細菌」の作用が関与し、アミノ酸がアンモニアへと一定量変化をしてしまいます。健康な人は、アンモニアはそのまま腸管の毛細血管に吸収され、腸管の静脈→門脈→肝臓と運ばれ、肝臓で尿素回路によって尿素へと変換されるので全く問題ありません。しかし肝硬変の患者さんになると、門脈圧亢進が起きているため、アンモニア入りの静脈血が全身循環に入る、または肝臓に入ったとしても、肝機能の低下により尿素に変換できないなどの理由で、血中アンモニアが高くなる要因へとつながります。そのため、アンモニア値が上がる可能性が高い場合は「蛋白制限食」となります。
また、腹水の貯留は、体の水分をできる限り抑えるということで、まずは塩分制限が行われます。

実はこの問題、第102回午前50のリメイク問題です。リメイク前の問題は以下のとおりです。

第102回 AM50
肝硬変で皮下出血、腹水貯留および手指の振戦がある患者に対する食事で適切なのはどれか。
1. 高蛋白食
2. 高脂肪食
3. 低残渣食
4. 塩分制限食

ご覧の通り、先に紹介した110回の選択肢とほぼ同じ選択肢が存在しています。つまり、102回の問題をやり、その選択肢を吟味し、周辺知識を広げておくことで、110回の問題にも対応できる知識が身に付く、というわけです。
この連載で何度もお伝えしているので、毎回読んでくださっている方は耳にタコかもしれませんが、今回も言わせてください。過去問をやって、正解を覚えて終わりではありません、×選択肢もしっかり吟味していきましょう!

 

2)代表的な疾患の生活指導は、ガイドラインを参考にしたい。 について

上記1)に沿って、「過去問やりました、×選択肢も吟味しました」までできたら、次の段階です。周辺知識を広げる、と書きましたが、具体的に何をするのかというと、生活指導に関するガイドラインを確認しておきましょう。

過去問を見てみましょう。

第111回 PM45
慢性心不全患者の生活指導で、心臓への負担を少なくするのはどれか。
高尿酸血症で正しいのはどれか。
1.痛風結節は疼痛を伴う。
2.痛風発作は飲酒で誘発される。
3.痛風による関節炎の急性期に尿酸降下薬を投与する。
4.血清尿酸値9,0mg / dL以下を目標にコントロールする。
答え:2

選択肢1、痛風結節には疼痛がありません。よって×。痛風結節とは、高尿酸血症の状態が長期間続くと、手足の指先や関節、肘膝関節、アキレス腱や耳などに尿酸塩結晶がたまって腫れた状態のものが発生し、それをさします。関節炎とは別のものです。
選択肢2、アルコールの種類に関わらず、飲酒後は尿酸値が上昇します。それにより痛風発作が誘発されます。よって○。
選択肢3、痛風発作中に血清尿酸値を変動させると発作が増悪することが多いため、発作中に尿酸降下薬を用いないことが原則とされています。よって×。
選択肢4、日本痛風・核酸代謝学会による『痛風・高尿酸血症ガイドライン第3版』では、「痛風関節炎を繰り返す症例や痛風結節を認める症例では、薬物療法の適応となり、血清尿酸値を6.0mg/dL以下に維持するのが望ましい」とされています。よって×。

成人看護学においては、この問題のように、治療のみならず生活指導に関する問題もよく見受けられます。過去問をやっていると、その生活指導が「古い」「イマドキこれは臨床ではやらない」というケースがあります。こういった判断は、まだみなさんでは難しいこともあるかと思いますので、過去問をやりつつ、生活指導については、インターネット上で最新の各ガイドラインを見ておくことをオススメします。近年はガイドラインも数年おきに新しくなっていますので、最新のものを見ておくこと、看護のポイント(日常生活や職場復帰に関することなど)を押さえておくと、点数につながりやすくなります。

 

3)状況設定問題は、検査データの解析が重要! について

状況設定問題においては、対象者の検査データが明示されている問題が多く見受けられます。正解を導くためには、その検査データを見ることによって何がわかるのか、そしてその基準値(正常範囲)を覚えておく必要があります。
過去問を見てみましょう。

第109回 AM91
Aさん(60歳、男性、元建設業)は、妻(57歳)と2人暮らし。2年前に悪性胸膜中皮腫と診断され、化学療法を受けたが効果がみられず、外来通院していた。2週前から、胸痛、息苦しさ、倦怠感が増強したため、症状コントロール目的で入院した。
バイタルサイン:体温36.0℃、呼吸数24/分、脈拍92/分、血圧126/88mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉86~90%(room air)。
身体所見:両側下肺野で呼吸音が減弱しており、軽度の副雑音が聴取される。
血液所見:赤血球370万/μL、Hb8.8g/dL、白血球6,700/μL、総蛋白5.2g/dL、アルブミン3.8g/dL
CRP1.5mg/dL。 動脈血液ガス分析(room air):pH7.31、動脈血二酸化炭素分圧〈PaCO2〉40Torr、動脈血酸素分圧〈PaO2〉63Torr。
胸部エックス線写真:胸膜肥厚と肋骨横隔膜角の鈍化が認められる。肺虚脱なし。

問題 Aさんの呼吸困難の原因で考えられるのはどれか。2つ選べ。
1. 胸 水
2. 気 胸
3. 貧 血
4. CO2ナルコーシス
5. 呼吸性アルカローシス
答え:1・3

状況設定文内にたくさんの検査データがあります。問題文を読みながら、疾患名、疾患名が明示されていない時は特徴的な症状と、異常数値にマーク(○で囲む、アンダーラインを引くなど)をつける習慣をつけてください。その上で、問題を解いていきます。

まず、悪性胸膜中皮腫でみられる症状を知っておきましょう。胸痛、咳嗽、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感がみられます。肺癌の症状と似ているため、生検を行って確定診断をします。ただし、悪性胸膜中皮腫は、その昔工事現場などで使われていたアスベスト(詳しくはコチラ)が原因のことが多く、患者さんの生活歴の確認も有効です。
選択肢1、エックス線でみられる「胸膜肥厚」は悪性胸膜中皮腫によるものと考えられますが、「肋骨横隔膜角の鈍化」がみられる場合は胸水の存在を疑います。よって、○。
選択肢2、この状況設定文内では、気胸を疑うべき所見は見当たりません。
選択肢3、ヘモグロビン〈Hb〉が8.8g/dLと基準値を大幅に下回っており、呼吸困難の原因の1つと考えられます。なお、ヘモグロビンの基準値は男性15g/dL前後、女性13g/dL前後です。
選択肢4、「CO2ナルコーシス」の場合、頭痛・意識障害などの症状がみられます。また、PaCO2が上昇しますが、正常値(35~45mmHg)の範囲内です。
選択肢5、「呼吸性アルカローシス」の場合、PaCO2が低下しますが、正常値の範囲内です。

 
1問を解くために、これだけの知識が必要であることに、ビックリした方もいるのではないでしょうか。そもそも状況設定問題では、そのテーマとなっている疾患の主症状などを理解していることは必須です。その上で、状況設定文内のデータが正常かどうかを問題文を読みながら判断し、さらに選択肢の疾患についても理解していなければなりません。それらができないと、得点につながらないのが状況設定問題です。
 
検査データの暗記は、実習中に担当患者さんにとって重要な検査データを覚えたように、経験を生かして覚えていくほうが効率的でしょう。それでも覚えきれていないものは、過去問や模試などで出てきた時に随時覚えていきましょう。先ほど説明した通り、数値を覚えるだけでなく、「そのデータは何を意味するのか」、「異常の場合は何を疑うのか」まで覚えてくださいね!

今回の3ポイントふまえた過去問を、コチラにまとめています。ぜひご利用ください。
次回は、老年看護学について説明します!