このコーナーでは、全11科目、必修問題、状況設定問題の対策など、第108回国家試験に向けた国試勉強法を隔週で紹介していきます。国試対策に過去問学習はかかせません。看護師として学んでもらいたいポイントは昔も今もそうそう変わらないからです。ただし、国試も進化をとげています。免許取得のための試験ではなく、看護師の資質や現場に出た時の対応力・判断力なども合否の基準となっているのが現在の国試。そこで、医教ではこんな過去問学習法をおススメしています。

医教オススメの過去問3ポイント学習

(ポイント1)各選択肢を、なぜ○なのか、なぜ×なのかでしっかり吟味する。
(ポイント2)出題者が何を答えさせたかったのか、意図をくみとる。
(ポイント3)誤肢はただの×選択肢にあらず。読み解くべし。

医教イチオシの「○×学習法」。○×を吟味していくと1つの選択肢の2面性をとらえることができ、それだけでも学習効果が2倍ということになります(ポイント1)。そしてその作業をすると、問題を作った人がその問題で何を答えさせ、何を伝えたかったのかが自然に分かってきます(ポイント2)。さらに「誤肢」をないがしろにせず、しっかり向き合うことでさらに学習効果が上がります(ポイント3)。昨今は、過去問で×選択肢だったものを軸に問題を作りなおす出題方法もみられますので、誤肢学習はかなり効果的ですよ。以上の3ポイントを念頭に、直近の国試(つまり第107回国試)からこの過去問学習を行い、あわせて過去10年間の同テーマの過去問も同様に学習すると、最新の医療・看護技術の学習も踏まえての過去問学習になりますので、国試の最新傾向に堂々対応できる国試対策勉強法となります。


さて今回は、看護の統合と実践の状況設定問題を取り上げます。この科目の特徴的なテーマのひとつとして「外国人患者への対応」が挙げられます。日本看護協会「看護者の倫理綱領」の2には、『看護者は、国籍、人種・民族、宗教、信条、年齢、性別及び性的指向、社会的地位、経済的状態、ライフスタイル、健康問題の性質にかかわらず、対象となる人々に平等に看護を提供する。』といった理念が掲げられていますので、まずはこの考え方が大前提で日本の看護活動は展開されていきます。当初、「看護の統合と実践」という科目が出題基準に登場した頃は、文化の違いに配慮するといった主旨の問題が多かったのですが、ここへ来て、内容もかなり踏み込んだものが多くなってきており、治療や看護を受ける外国人の在留資格や利用できる制度も知っておかないと解けない問題になってきています。日本は1年後にオリンピックを控え、また、今年の12月8日、出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法(入管法)の一部を改正する法律案が可決、平成31年4月1日からの施行(一部の規定を除く)が決まったこともあり、日本政府が今まで以上に外国人の日本在留に積極的な姿勢を示していくと思われますので、外国人を看護対象とする対応をしっかり学んでおく必要がありますね。それから各科目の基礎知識をベースとして、「救急搬送→手術→入院→リハビリ」という流れに病院内の各部門の看護師や多職種、付き添いの家族が絡んでくる状況設定もこの科目ならではの特徴を示しています。
それでは、第107回看護師国家試験「看護の統合と実践」の状況設定問題の2題(外国人救急患者の看護・脳梗塞の高齢男性救急搬送と入院の看護:キーワードとなる設定文にアンダーラインが引いてあります)を解いてみましょう。

言葉の壁・文化の違いを乗り越えて、まずは患者の安楽を優先。制度の確かな知識で医療費などの懸念も解決しよう!

午前問題112~114(看護の統合と実践)「外国人救急患者の看護」
Aさん(38歳、男性)。23時ころ、徒歩で来院した。Aさんは胸を押さえ苦しそうに待合室で座っており、救急外来の看護師が声をかけると、Aさんは日本語を少し話すことができ、外出中に急に胸が痛くなったと話した。Aさんは英語は話せないようだった。Aさんは日本語学校の学生であり、Aさんの指定した番号に電話したところ、Aさんの妻につながり、日本語でのコミュニケーションが可能であった。妻は1時間後に病院に到着できるということだった。この病院には、夜間にAさんの母国語を話せる職員はいなかった

問題112 医師の診察までに救急外来の看護師が行う対応として適切なのはどれか。
× 1. Aさんの在留資格を確認する。 ← 日本に合法的に滞在している外国人は、必ず在留資格(種類はいくつかある)を持っている(空港の入国管理局で入国が許可された時点で在留資格を獲得しているといってもよい*出入国管理及び難民認定法〔入管法〕第2条の2)。またAさんは日本語学校の学生であり、日本語がわかる妻もいることから優先的に確認することではない。まずは今苦しんでいるAさんの症状を軽くすることを優先する。
× 2. Aさんの母国の大使館に連絡する。 ← 一刻も早くAさんの苦しみを軽減し、症状の急変を回避することが優先される。大使館に連絡している場合ではないし、また、1時間後に日本語のコミュニケーションが取れる妻が到着するので、通訳などの情報も必要ない。
○ 3. Aさんの理解度に応じた日本語で症状を聴取する。 ← Aさんは全く日本語が話せないわけではないので、今、どのようなことが苦しいのかある程度聞き取ることが可能である。聞き取れた症状によってAさんにファウラー位をとらせるなどして症状を軽減させることができ、また診断が迅速に行われるための情報を得られる場合もある。
× 4. 妻が来院するまでAさんに待合室で待ってもらう。 ← 妻が到着するまで1時間あるため、少しでも早くAさんの苦しみを軽減させる対応を考える。

問題113 Aさんの妻が、Aさんの国民健康保険証を持って救急外来に到着した。妻から聴取した情報によると、Aさんは特に既往はないが、時々頭痛があり、母国で市販されていた鎮痛薬を常用していたとのことであった。心電図でST上昇が認められ、Aさんと妻は、医師から「入院して冠動脈造影〈CAG〉を受けないと命の危険があるかもしれない」と説明を受けた。しかし、Aさんは「たくさんの費用は支払えないし、学校を休むのが心配だ」と検査を受けることを拒んだ。   
 このときの救急外来の看護師の説明で優先されるのはどれか。
× 1. 検査の手順を説明する。 ← 検査を受けることを拒んでいるAさんの思いを考慮せずに検査手順を説明すると、患者と医療者の信頼関係を損なう場合がある。
× 2. 学校は退学にならないことを説明する。 ← 入院・検査をする場合、どれくらい学校を休むことになるかの目安を伝えることは可能だが、退学にならないかどうかは看護師にはわからないため、安易な言葉かけは避ける。
× 3. 宗教に応じた食事対応ができることを説明する。 ← 現段階では、Aさんからの宗教文化や食事についての不安は提示されていない。
○ 4. 医療費は国民健康保険が適用されることを説明する。 ← 国民健康保険の負担割合などは日本国籍を有する加入者と同じである。Aさんの心配のひとつは入院・検査費のことなので、38歳のAさんは負担金が3割となることを説明する。

問題114 入院後2日、冠動脈造影〈CAG〉が実施された。冠動脈に有意な狭窄はなく、Aさんは急性心外膜炎と診断された。胸痛に対して消炎鎮痛薬が5日分処方された。処方された2日後、Aさんから「薬がなくなったので追加で処方して欲しい」と病棟看護師に依頼があった。  
 看護師の対応で優先されるのはどれか。
○ 1. Aさんの痛みの程度を確認する。 ← 鎮痛薬の過剰服用の原因として、痛み軽減の度合いが足りていない可能性もある。除痛は最も優先される対応なのでまず最初に確認する。
× 2. 医師に鎮痛薬の増量を相談する。 ← まずは5日分の薬がなぜ2日でなくなったかの理由を確認し、わかったことを医師に報告して対応を相談する。
× 3. Aさんが以前常用していた鎮痛薬の用量を確認する。 ← Aさんの母国で市販されている鎮痛薬の用量についてはAさんの記憶に頼るしかなく、情報源としては不確実である。
× 4. Aさんが指示された用法を守れていないことを指摘する。 ← まずは、痛みの程度を確認し、その上で用法の不明点に関してもう一度説明する。

問題112は、日本語の話せない外国人(または、症状をはっきりと訴えられない子どもなど)の症状を聞き取って緊急度をアセスメントし、治療に向けた準備を行うためにどうすべきかを考える問題です。冒頭でも述べたように、日本政府は多くの外国人労働者を受け入れる体制を整えつつありますので、外国人患者が訪れることも増えていくと予想されます。社会資源を使用する際にはその人の在留資格(労働者、学生、日本人の配偶者などで異なる)、健康保険の種類に関する基本的な情報は把握しておく方が良いでしょう。ただし、これも「看護の統合と実践」の特徴といってもいいと思いますが、ある意味常識で解ける問題でもありますね。外国人、日本人関係なく、目の前で苦しんでいる人をどうやって助けるかを常識的に考えれば、おのずと正解肢を選ぶことができるでしょう。

問題113は、Aさんは国民健康保険証を持っていることが設定文に書かれており、その他の選択肢は常識で消去できますので、正解はほぼ4としか考えられないと思いますが、この設定文は、外国人は残留管理制度により、就業している者は勤務先の健康保険、その他の者は国民健康保険への加入が義務付けられていることを知っておいてほしいというメッセージがあるように思います。外国人患者が労働者の場合も学習しておきましょう。

問題114も、ある程度、看護師としての常識があれば正解にたどりつける問題だと思います。この問題では対象が外国人ですが、これが子どもであったり、認知症の高齢者である場合でもほぼ正解は変わらないのではないでしょうか。ただし、各国で処方される薬の種類や用法はまちまちでしょうから、常用している薬をめぐる対応は今後も出題されるかもしれませんね。
もうひとつ、第107回国試母性看護学の一般問題で外国人在留者の社会資源を扱っていますので、以下に載せておきましょう。

第107回
午前問題56(母性看護学)出題基準: Ⅳ-8-C-d「在留外国人の母子支援」
産科外来を初めて受診した妊婦。夫婦ともに外国籍で、日本の在留資格を取得している。     
 この妊婦への説明で正しいのはどれか。
× 1. 「母子健康手帳は有料で入手できます」 ← 母子保健法第16条で、「市町村は、妊娠の届出をした者に対して、母子健康手帳を交付しなければならないとされており、基本、無料で交付される。
○ 2. 「妊婦健康診査は公費の助成を受けられます」 ← 母子保健法第13条では、市町村が必要に応じて妊産婦に対して健康診査を行うことを規定しており、妊婦健診は、母子保健法上は実施主体である市町村の自治事務である。実施回数、公費負担額等については、各市町村の判断による。
× 3. 「出生届は外務省に提出します」 ← 「外国人に関する届出は、届出人の所在地でこれをしなければならない(戸籍法第25条2)」とある。所在地とは「住所地(住民票をおいている市区町村)」「居所地(住民登録をおいていないけれど、現在住んでいるところ)」「一時的滞在地は(仕事のためや旅行などのために、一時的に滞在している場)」で、その地を管轄する市役所に出生届を提出する。
× 4. 「生まれた子どもは出生時に日本国籍を取得できます」 ← 日本においては、国籍は生まれた国ではなく、親の国籍によって決まるため、外国人夫婦が日本国内で子どもを産んでも、日本国籍ではなく、父親か母親の国籍になるため、大使館で申請を行う必要がある。

この問題は、前述の午前問題112~114とセットで学習しておくといいでしょう。選択肢1と2の◯×でわかるように、日本にいる外国人は、ほぼ日本の社会資源を日本人と同じように利用することが可能であることを覚えれば良いと思います。母子保健手帳は基本無料で市町村で入手できますし、通常の日本の妊婦と同様に妊婦健康診査には公費助成が行われます。注目すべきは、×選択肢ながら「戸籍法」「国籍法」が出てきており、看護学生にここまでの知識を求めるのかとも思いますが、社会保障の利用は結構自由で、出生届の提出先の選択肢も結構幅広いけれど、国籍取得となると結構シビアだ(国籍取得には帰化しなくてはなりません)くらいは覚えておくといいかもしれません。以下に、外国人患者の看護として過去に出題された一般問題1問と状況設定問題を1題挙げてみましょう。文化の違いへの対応をテーマに問題が構成されています。

関連の過去問(第103回)
午後問題79(看護の統合と実践)
Aさんは、3年前に来日した外国人でネフローゼ症候群のため入院した。Aさんは日本語を話し日常会話には支障はない。Aさんの食事について、文化的に特定の食品を食べてはいけないなどの制限があるがどうしたらよいかと、担当看護師が看護師長に相談した。担当看護師に対する看護師長の助言で最も適切なのはどれか。 1. 日本の病院なので文化的制限には配慮できないと話す。×  2. 文化的制限は理解できるが治療が最優先されると話す。×  3. Aさんの友人から文化的制限に配慮した食事を差し入れてもらうよう話す。× 4. 文化的制限に配慮した食事の提供が可能か栄養管理部に相談するよう話す。○← 治療と文化的配慮の両立にもある程度の限界があるが、まずは療養者の尊厳を守るための方法を考え、実施可能がどうかを確認してみることが重要である。

関連の過去問(第104回)
午後問題118〜120(看護の統合と実践)
Aさん(37歳、女性)は、アジアの出身で1か月前に日本人の夫(40歳)と娘(12歳)とともに日本に移住した。母国語以外に簡単な言葉であれば日本語と英語は理解できる。Aさんは、胸のしこりに気付き1週前に受診し、検査の結果、乳癌と診断された。今後の治療について説明を受けるため外来を受診する予定である。夫から「仕事が忙しく説明に立ち会えない。妻は日本語が上手く話せないがどうしたらいいですか」と電話があった。
問題118 このときの夫への対応で最も適切なのはどれか。 1. 電話で治療について説明をする。×  2. 英語での説明を医師に依頼すると伝える。× 3. 母国語の医療通訳者について情報提供する。○ 4. 日本語を話せる娘に通訳を依頼するよう伝える。× ← Aさんの英語と日本語の理解力では不安があり、次回外来受診まで1日、2日を争うわけでもないので、母国語の医療通訳者を手配して、今後の治療についてきちんと理解することが重要である。12歳の娘に癌治療の通訳が務まる可能性は低い。
問題119 術前に、術後のAさんの苦痛の程度を確認する方法について説明をすることになった。苦痛の程度を確認する方法として最も適切なのはどれか。 1. 日本語を覚えてもらう。× 2. 母国語と日本語の対応表を準備する。○ 3. ナースコールの利用方法を説明する。× 4. まばたきをしてもらうことを説明する。× ← 術前の患者に短期間で日本語を覚えさせるのは負担が大きい。また選択肢3と4では苦痛の程度把握は難しい。
問題120 入院初日。Aさんの同室の患者から、Aさんが使用している香水の香りが強く気分が悪くなるので何とかして欲しいという訴えがあった。病棟では香水の使用を禁止している。看護師が香水の使用をやめるように説明すると、Aさんは医師から何も言われていないと話した。Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。 1. 個室の利用を勧める。×  2. 同室の患者を説得する。× 3. 禁止されている理由を説明する。○ 4. 医師の許可があればよいと説明する。× ← 体調不良や治療によって匂いに敏感になっている患者もいるため、病室だけでなく病棟全体での香水を禁止している病院も多い。まずは理由を説明して、納得してもらうよう働きかける。

 
それでは第107回「看護の統合と実践」の状況設定問題をもう1題といてみましょう。

救急外来受診、術中、入院生活、リハビリテーションまでの場面場面を基本知識とアセスメント力の統合乗り切っていきます。

第107回 午後問題115~117(看護の統合と実践)「脳梗塞の高齢男性救急搬送と入院の看護
Aさん(72歳、男性)。妻と2人暮らし。朝6時に、妻が一緒に寝ていたAさんの様子がおかしいことに気付き、救急車を呼んだ。Aさんは病院に搬送された。病院到着時、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-10右片麻痺および失語がみられる。Aさんのバイタルサインは、体温37.0℃、呼吸数20/分、心拍数110/分、血圧150/90mmHg。身長160cm、体重60kg頭部CTで明らかな異常所見はなく、頭部MRIを行う予定である。

問題115 妻から聴取したAさんに関する以下の情報のうち、治療方針を決定するために最も重要な情報はどれか。
× 1. 5年前から禁煙していた。  
× 2. 最近、眠りが浅いと言っていた。  
○ 3. 今朝5時にトイレから戻って来た。  
× 4. 健康診査を2年間受診していなかった。 
「治療方針を決めるため」という目的があるのは、脳梗塞が疑われる場合、脳梗塞急性期である発症から4.5時間以内、8時間以内の患者のみに行える特殊な治療があり、早く対処するほど治療成績が良好であるため、発症後の経過時間を推測できる情報が重要であるためである。4.5時間以内の患者にはt-PA:組織型プラスミノゲン・アクティベーターの投与、8時間以内の患者には血管内治療が行われる。

問題116 Aさんは、左中大脳動脈領域の脳梗塞と診断され、組織プラスミノーゲンアクチベータ〈t-PA〉による血栓溶解療法が行われた入院から2日後、右片麻痺は残存しているものの、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉I-3と改善がみられた。多職種カンファレンスで経口栄養を検討したが、言語聴覚士による評価では、Aさんは誤嚥のリスクが高いと判断され、経鼻胃管による経管栄養を行うこととなった。
 Aさんに行う経管栄養法について適切なのはどれか。
× 1. 白湯から開始する。 ← 白湯を追加水分として投与する場合があり、その際、水は栄養剤と比較し胃から排出される時間が短いので、栄養剤の前に投与して胃に溜まる量を減らす。ただし、まずは現在の胃の中の残渣量を確認して、注入量や追加水分量を決める必要がある。
○ 2. 開始前に胃残渣を確認する。 ← 開始前に胃内残留量の測定を行う。前回注入した栄養剤が多量に残っている状態が続く場合は、栄養剤の量や投与方法が適切か検討する必要がある。
× 3. 経鼻胃管挿入中は嚥下訓練を中止する。 ← 嚥下機能が回復すれば、経口栄養に切り替えることが可能であるため、嚥下訓練は継続する。
× 4. 1日の目標摂取エネルギー量は2,200kcalとする。 ← 70歳以上のAさんは、身体レベルⅡの状態では2,200kcalのエネルギー量が必要だが、現在はまだ安静が必要であり身体活動レベルⅠと考えても良いため、Aさんの1日の目標摂取エネルギー量は1,850(身体活動レベルⅠ)〜2,200kcalの間と考える(日本人の食事摂取量2015年版)。

問題117 入院3日の20時、Aさんは覚醒し、点滴を触ったり、経鼻胃管を抜こうとしたりしており、落ち着かない様子である。  
 担当看護師が最初に行う対応で適切なのはどれか。
× 1. 身体拘束を行う。 ← 身体拘束は医師の診断のもと、自傷他害の場合に止むを得ず行われる。
× 2. 早めに消灯をする。 ← Aさんはせん妄状態になっている可能性がある。ただ消灯すれば就寝して解決できることではなく、原因のひとつに不安などもあるため、それらを取り除く環境づくりや看護対応が必要である。
○ 3. バイタルサインを測定する。 ← せん妄状態と判断するためにも、まずはAさんのバイタルサインを測定して、身体的な異常がないことを確認する。
× 4. 向精神薬の使用を検討する。 ← Aさんに精神疾患の診断が下りているわけではないので、不適切である。

問題115 では、状況のアセスメント、脳梗塞の急性期対応の知識、家族への聞き取り情報の選択など複合的な要素を限られた時間内で行う看護対応が問われています。Aさんは朝5時にトイレから戻ってきており、6時に妻が異変に気付いているため、発症時間を朝5時ごろと考え(朝、トイレで男性が立った状態で排尿すると腹圧がかかって血圧が急上昇し、脳血管疾患を発症するケースの報告は多い)、7時ごろに救急車で搬送されてきたとすれば、9時ごろまでに最も早期の治療である4.5時間以内の治療が行えるということです。次の問題で「組織プラスミノーゲンアクチベータ〈t-PA〉による血栓溶解療法が行われた」とあるので、無事、4.5時間以内に治療が間に合ったようですね。

問題116は、症状が落ち着いたが嚥下状態に不安の残るAさんに実施されることになった経鼻経管栄養への看護対応を問う問題です。選択肢1と2は経鼻経管の基本的な手技について。選択肢3は経鼻経管栄養法は嚥下機能が回復すれば経口栄養に戻れるという特徴を知っていてほしいということでしょう。選択肢4は全く別の角度からエネルギー摂取量を問う問題でした。年齢・身体活動レベル別のエネルギー摂取量の暗記に状況アセスメントをプラスしてあり、この選択肢1つで1問、問題が作れそうな内容ですね。

問題117では、救急搬送されてきた患者の状態をアセスメントして早期の治療につなげ、経管栄養も順調にこなしてきたと思っていたら、3日目にせん妄状態になりました。患者の状態は一定ではなく、入院中にも様々なことが起こって看護師はそれぞれの患者の状態を見極めて対応していかなくてはならないことがよくわかります(だから「看護の統合実践」と命名されたのでしょう)。選択肢1と4は常識的な部分で消去できます。国家試験で「身体拘束をする」と出てきたら、ほぼ×選択肢と考えて良いでしょう。現場では色々あると思いますが、倫理上は患者の尊厳を守る上で簡単には実施できない行為と考えられています。

 
以下に挙げた過去問題では、救急救命センター到着前集中治療室入室時集中治療室入室から8時間後(それぞれ同じ色のマーカーを施しています)のバイタルサインに注目して解いていく問題です。

関連の過去問(第106回)
午後問題115〜117(看護の統合と実践)
Aさん(70歳、男性)。妻(74歳)と2人で暮らしている。Aさんがトイレに入ったまま戻ってこないので妻が見に行くと、トイレで倒れていた。妻が発見直後に救急車を要請した。救急隊からの情報ではジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-20で右片麻痺があり、バイタルサインは、体温36.5℃、呼吸数16/分、脈拍108/分血圧200/120mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉96%であった。

問題115 救命救急センター到着時に観察する項目で最も優先するのはどれか。 1. 体温 × 2. 心電図波形 × 3. 意識レベル ○ 4. 尿失禁の有無 × ← JCSⅡ-20と右片麻痺、高血圧の情報から脳血管疾患が疑われるため、意識レベルの低下に注意が必要である。

問題116 頭部CTの結果、高血圧性脳出血と診断され、集中治療室に入室した。入室時にはジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-30。体温37.0℃、呼吸数16/分、脈拍82/分血圧154/110mmHg入室から8時間後、体温37.2℃、呼吸数18/分、脈拍50/分血圧208/106mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉97%になり、呼びかけと痛み刺激に開眼しなくなった。  このときAさんの状態はどれか。 1. 低酸素脳症 × 2. 脳圧亢進症状 ○  3. 髄膜刺激症状 ×  4. 正常圧水頭症 ×  ← 「脈拍」が108/分(頻脈)82/分(基準値)50/分(徐脈)、「収縮期血圧」が200/120mmHg154/110mmHg208/106mmHgでクッシング症状がみてとれ、「意識レベル」が、JCSⅡ-20JCSⅡ-30呼びかけと痛み刺激に開眼しなくなった(JCSⅢ-300)の変化からAさんは脳圧亢進症状の状態にあり、脳ヘルニアに進む危険がある。SpO2の情報から低酸素脳症は除外できる。

問題117 入院から4週が経過し、病状が安定して意識が回復した。Aさんは後遺症として運動性失語が残り、言葉がうまく発せられないため涙ぐむことがあった。妻は面会後「夫が話す言葉が分からず、どう接すればよいか分からない」と言って戸惑っていた。妻に対する対応で最も適切なのはどれか。 1. 「いつもどおり話をしてあげてください」 × 2. 「看護師も同席してAさんとお話ししましょう」○  3. 「リハビリテーションで話せるようになりますよ」 × 4. 「分かりやすい言葉で話しかけてあげてください」 × ←運動性失語は、聞いて理解することは比較的よくできるのに、話すことがうまくできず、ぎこちない話し方になる症状である。リハビリによる回復程度は様々であるため、話せるようになると言い切ることはできないが、言葉の発声、会話の受け止め方にコツがあるので、看護師など専門知識がある者が同席して、妻の手本となりながら指導すると効果的であり、お互いに戸惑っている夫婦間に介入することによって、気持ちのケアにもなる。
脳卒中の言語リハビリテーション – 家庭で効果を上げるには -(循環器病情報サービス)

いかがだったでしょう。やはり「看護の統合と実践」の状況設定問題は場面がどんどん変わっていくこともあって、○×学習法もなかなかのボリュームになりますね。言い換えれば1題の中にほぼ全ての科目要素が入っているわけです(「統合」ですから)ので、1題をしっかり学習しておくと、同時に何科目もの勉強ができてしまうともいえますね。

次回は「国試前にもう一度見直す必修問題」をお届けします。

(イラスト:中村まーぶる)