今回頂いた質問

実習で、在宅酸素療法を行っているCOPDの患者さんのお宅にうかがいました。趣味は読書と料理とのことで、酸素吸入は大変だけど自宅で暮らしていて楽しいとお話しされていました。この療法における看護の注意点を教えてください。

1日15時間以上酸素を吸入する長時間在宅酸素療法はhome oxygen therapy(HOT:ホット)と呼ばれます。慢性呼吸不全でみられる低酸素症を伴うCOPDの患者さんの生活を支える療法です。携帯用酸素ボンベを使用すれば外出もでき、また、延長チューブを使って食事・入浴も自由に行うことができます。
在宅での療法ですので、下記のような注意点が必要となってきます。

日常生活での注意点

■症状悪化(意識低下)、器具故障、災害時・停電時など緊急時の連絡方法の確認
■酸素吸入量と吸入時間を守る(医師の指示の確認)
■調理時の火気注意
■便秘対策・入浴方法の考慮
■禁煙・上気道感染の予防、呼吸法、排痰法の指導
■外出時のボンベの酸素残量の確認
■公共乗物への酸素ボンベ持ち込み手続き<禁煙車・禁煙席使用。航空機は申請が必要>

呼吸は自律神経に支配されており、心理的な影響も受けやすいものです。そのため、酸素吸入に依存した生活では心理的緊張を伴い、緊張は交感神経を興奮させ、酸素消費量の増加により呼吸困難を引き起こしてしまいます。逆に言えば、呼吸をきちんと整えていれば、心身の調和を図ることも可能なので、呼吸訓練法や禁煙を指導し、筋力低下防止やストレス発散のために適度な運動も取り入れるとよいでしょう。さらにバランスのよい食事で抵抗力をつけるための指導も必要となるでしょう。
酸素療法では、機器の周囲2~3メートルは火気厳禁ですので、ご質問の療養者さんのように料理が趣味の方の場合は、ボンベなどを火に近づけないように指導することが必要です。さらにチューブの体へのかけ方の工夫や、電磁調理器などの使用を勧めるとよいでしょう。

では、国家試験で出題された在宅酸素療法に関する問題を解いてみましょう。

問題

第100回 看護師国家試験 午後問題50

在宅酸素療法をしている1人暮らしの高齢者に対して、訪問看護師が行う支援はどれか。

1.なるべく安静に過ごすよう指導する。
2.酸素供給機器の取り扱いは訪問看護師が行う。
3.家屋の構造に応じて延長チューブを使うよう指導する。
4.電磁調理器使用時は鼻カニューラを外すよう指導する。

1.×  それほど安静に過ごすことはない。適度な運動や外出の機会を増やすために、在宅酸素療法が選択される。
2.×  療養者本人が行えるよう退院時に指導し、訪問時に取り扱いができているかどうかの確認を行う。
3.○  食事・料理・トイレ・入浴などの日常生活と家屋の構造に合わせて延長チューブをどう使用していくのかを訪問看護師が一緒に考え、指導していく。
4.×  火気厳禁なので、ガスコンロよりも電磁調理器を使用するほうがよいが、料理では酸素消費量も増えるので、酸素吸入は必要であり、鼻カニューラは外さず、耳にかけるなどして、かけ方を工夫するよう指導する。

答え…3

編集部より

街中で酸素ボンベを後ろ手にころがしながら、歩いている人をみかけることがあります。酸素ボンベですから、火の気などの心配もあると思いますし、外出は精神的にも緊張するので安静時よりは酸素消費量も多くなるでしょう。鼻にカニューラを入れて歩く姿も最初は抵抗があったかもしれません。ペースメーカーを入れて外出、皮下埋め込み式カテーテルを利用しながらの日常生活。どれも多少のリスクを覚悟しつつも、自らのQOLを向上させていこう、人生を楽しもうと積極的にがんばっている方々ばかり。その姿勢に学ぶべきことがたくさんありますね。