今回頂いた質問

せん妄の症状が出ている患者さんの家族から、認知症との違いについて質問されたのですがうまく答えられませんでした。要因や特徴など鑑別方法を教えてください。

せん妄は、一時的な脳の機能低下によりバランスを崩した状態をさします。呼吸器系、循環器系、脳血管系の疾患が脳機能に影響を及ぼす身体的要因、不安や緊張感などの心理的要因によっても誘発されますが、入院・入所、外界からの感覚遮断、音や光の刺激過多といった環境の変化もリスクとなります。症状としては、交感神経興奮状態による頻脈や発汗、見当識障害、幻覚・妄想がみられます。

せん妄は、急激な発症、日内変動、可逆的、短期間という特徴があります。しかし、原因や基礎疾患が取り除かれれば症状は回復します。ご質問にあるように、高齢者のせん妄は認知症と間違われやすいので鑑別が重要です。発症様式や症状経過の特徴といった具体的な違いをおさえておきましょう。

せん妄と認知症の違い

せん妄と認知症の違い

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第103回看護師国家試験 午後問題56

Aさん(80歳、男性)は、肺炎と高血圧症で入院している。入院日の夜からAさんにはせん妄の症状がみられる。Aさんの家族は「しっかりした人だったのに急におかしくなってしまった」と動揺している。
せん妄についてAさんの家族への説明で正しいのはどれか。

1. 「認知症の一種です」
2. 「昼間に起こりやすいです」
3. 「一度起こると治りません」
4. 「環境の変化で起こることがあります」

1.× せん妄は、一過性の軽い意識障害に分類される。認知症とは異なる。
2.× 症状は夜間にあらわれやすい。生活リズムを整えることが、せん妄の予防に効果的である。
3.× せん妄の症状は、原因が取り除かれれば回復する。
4.○ 環境の変化は、せん妄の誘因となる。

正解…4

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編集部より

突然のせん妄症状を目にすると、患者さんの家族は大きく動揺する可能性があります。家族が安心して患者さんに接することができるよう、十分な説明と気配りが求められますね。