今回頂いた質問

難聴を持つ高齢の患者さんとのコミュニケーションについて、どのようなことを注意すればよいか教えてください。

老人性難聴は、加齢に伴う内耳の障害(感覚細胞や聴神経の機能低下、聴覚中枢の機能低下)が原因の感音性難聴が主体です。特に高音域を含む音が聞き取りにくくなるのが特徴で、聴力レベルが30デシベルを超えると日常会話に支障が出てきます。
また、感音性難聴に、伝音性難聴(音の通り道が中耳炎、耳垢の蓄積などで塞がれ、聴力障害が出現する)を合併している場合もあるため、注意が必要になります。

老人性難聴に対処する方法として補聴器があります。最近では、デジタル式が主流になり、従来のアナログ式に比べ、きめ細かな分析や処理がなされるようになってきました。しかし、補聴器をつけただけで、すべての問題が改善されるわけではありません。補聴器で音を増幅されることにより、音がゆがんで聞こえたり、聞き誤りが生じることもあります。
補聴器の種類には、1)箱型(ポケット型)、2)耳掛け型、3)挿耳型(耳穴型)があり、この順番でサイズが小さくなります。目立たない小型のものが好まれがちですが、スイッチなども小さくなるため、手指の巧緻性の低下や視力の低下がある高齢者は、自分で調整することが難しくなってしまいます。

さて、ご質問をいただいた難聴を持つ高齢者とのコミュニケーションについてですが、留意点としては、
・耳垢栓塞などが原因となっていないか確認する。
・声をかけて注意を向けてもらってから話し始める。
・騒音の少ない静かな環境でゆっくり話す。
・耳もとよりも正面で口の形や表情を見せながら話す。

といったことが挙げられます。語尾を強めたり、大声で話すと、叱られたように感じて不快になるため、普通の声の大きさで、ゆっくりと明瞭に話すことがポイントになります。
難聴になると、聞き間違いが多くなり、コミュニケーションがとりにくくなることで、患者さんの意思表示も消極的になってしまうかもしれません。少しでも安心感を得てもらえるよう心がけましょう。

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第101回 看護師国家試験 午前問題60

老人性難聴の特徴はどれか。

1. 耳鳴を伴う。
2. 伝音性の難聴である。
3. 低音域が障害される。
4. 語音の分別能力が低下する。

1.× 耳鳴は感音性難聴でもおこるが要因は様々である。老人性難聴の特徴を問われた場合にはあてはまらない。
2.× 加齢に伴い内耳の生理的機能低下によっておこる感音性の難聴である。
3.× 老人性難聴では高音域が聞き取りにくくなる。
4.○ 高音域の聞き取りの低下とともに、「聞こえてはいるが何を言っているかわからない」という現象(語音弁別能の低下)も特徴である。

正解…4

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編集部より

昨年の国試で、「手指の巧緻性が低下している高齢者が操作しやすい補聴器の種類はどれか」(第104回午前問題58)という出題がありました。高齢者のなかには、補聴器を持っていても、扱いにくさや機種選定の誤り、購入後の調整不足により、使用に対して消極的な患者さんも見受けられます。障害を持ちながらも充実した生活を送れるようなケアプランを作成することも大切ですね。