今回頂いた質問

交感神経は戦いの神経、副交感神経はリラックスの神経と聞いたことがあります。交感神経が亢進すると、消化力がダウンするというのはその法則に反するように思うのですが、どうなのでしょうか。

ご質問ありがとうございます。確かに、食べ物を消化してエネルギーを得るのですから、交感神経には、食べ物をじゃんじゃん消化して、力もりもりというイメージがあるかもしれませんね。
ただ、こう考えてみてください。食べ物が消化されてエネルギーになり、体内に蓄積されるまでにはある程度の時間を要します。そちらに神経が行き、エネルギーも使われることになります。けれど、戦うモード(交感神経アップモード)の時は、戦いに集中し、力を最大限に使わなければなりません。消化に力をつかっている場合ではないのです。なので、バランス的に交感神経が勝ってしまうと、体はいったん、消化に使うエネルギーを止めて、戦いに集中する。そのために消化管の蠕動運動はピタリと止まってしまうわけなんですね。

自律神経における交感神経と副交感神経

自律神経は、交感神経と副交感神経に分けられ、消化・吸収・呼吸・循環・生殖・内分泌など植物性器官に分布しています。交感神経と副交感神経は拮抗的に働くのが特徴です。交感神経はストレスや緊張時に、体を興奮させ、活発に活動させる態勢を整えます。逆に副交感神経は、眠っているときやリラックスしたときに、人間の活力を蓄えるように働きます。二つの神経はほぼ拮抗的(正反対の作用)に働くので、どちらかを覚えるようにして、そこに例外を付け加えるという覚え方が有効だと思います。

交感神経と副交感神経の働き

交感神経と副交感神経の働き

自律神経は中枢から末梢への経過中に多くの神経節をもち、中枢神経や意志の支配を受けずに、無意識的、反射的に働きます。また、自律神経系の興奮の伝達は、神経伝達物質の放出によって行われます。交感神経系では、標的器官に対しておもにノルアドレナリンが、副交感神経系ではアセチルコリンが放出されます。

交感神経と副交感神経のバランスが崩れることによって起こる不定愁訴を、一般的に「自律神経失調症」と呼んでいますが、確立された定義や診断の基準があるわけではありません。原因や症状も人によって様々といわれています。まずは、生活リズムを整えたり、食事、睡眠、運動などライフスタイルを見直してみることが大切ですね。

回答は以上になります。
では、国家試験の問題を実際に解いてみましょう。

問題

第102回 看護師国家試験 午後問題81

副交感神経の作用はどれか。2つ選べ。

1. 瞳孔の散大
2. 発汗の促進
3. 心拍数の低下
4. 気管支の拡張
5. 消化液の分泌亢進

1. × 瞳孔は縮小する。
2. × 汗腺には副交感神経は分布しておらず、交感神経の単独支配である。
3. ○ 心拍数は低下する。
4. × 気管支は収縮する。
5. ○ 消化管運動と消化液の分泌は促進する。

正解…3・5

●「人体の構造と機能」の理解を深めるには
科目別強化トレーニング「人体の構造と機能」

編集部より

暑くなってくると、外の気温と室内の冷房の温度差で体調を崩しがち。いわゆる夏バテは、自律神経の乱れも原因のひとつです。体温調整の機能が低下することのないよう、冷房は適度に使用するようにしましょう。